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[ACC26-11] 完新世初期の軌道要素に対する全球非静力学大気モデルの感度実験
キーワード:古気候、気候モデル、完新世
様々な種類の広域的な地質データが、完新世初期から中期にかけてアジアとアフリカで夏季の温暖化および湿潤化の整合的なパターンを示している。この時期の軌道要素に対する気候モデルの応答を調べた過去の多くの実験は、共通してアジアおよびアフリカモンスーンの強化を示しており、これらのデータの定性的な解釈に成功してきた。本研究は、近年、気候研究にも利用可能になりつつある全球非静力学モデルを用いることで、この時期の気候の議論に新しい光を当てることを目指している。本研究で用いるモデルは、日本の気象学グループによって開発されたNICAM(Nonhydrostatic ICosahedoral Atmospheric Model)である。このモデルは、積雲パラメタリゼーションを使用せず、適切な解像度のもとでは積雲を直接解像することに特徴がある。本研究ではコンピューター資源の都合により、NICAMを水平解像度56kmで使用する。この解像度ではモデルは積雲を解像しないが、先行研究により、このような解像度でも、より高い解像度によるシミュレーション結果と似た振る舞いをし、現実的な平均場と変動を得ることができることが確認されている。実験は海洋混合層モデルと結合して行われ、軌道要素は9000年前の値を用いた。積分は5年間行っている。現在気候実験における季節平均の降水量は大きく過大評価されているが、ITCZの位置や降水のピークの位置は観測と非常によく合っている。とりわけ、チベット高原の急峻な地形を表現するのに十分な水平解像度を有することから、チベット高原南端に沿った東西に延びる細い降水帯をよく再現している。9000年前の実験においては、先行研究と同様に、アフリカのITCZの北上が見られる。アジアにおいては、チベット高原南端に沿った降水が顕著に増加している。またインド洋でも降水が増加している。チベット高原とインド洋の間の緯度帯では、インドとインドシナ半島の領域で帯状に降水が弱化する地域が見られる。本研究で用いた全球非静力学モデルは、積雲を直接解像するには十分ではないが、これまでの全球モデルでは十分に表現されていなかった地形の構造をよく表現し、それが降水にもたらす影響を評価でき、地域スケールの地質学的データの空間分布を議論するのに有用であると期待される。