[HRE16-P03] インドネシア・パプア州グラスベルグ斑岩銅-金鉱床における鉱化作用の特徴
キーワード:グラスベルグ鉱山、斑岩銅鉱床、鉱化作用
グラスベルグ-エルツベルグ地区は、インドネシア・パプア州に位置するスディルマン山脈の西側の高地に位置する。この地区は、グラスベルグ鉱山として世界屈指の斑岩銅-金鉱山が操業しており、鮮新世の貫入岩中に銅・金鉱物が賦存している。これらの貫入岩はグラスベルグ複合岩体(Grasberg Igneous Complex:GIC)と呼ばれており、カリ貫入岩(Kali Intrusion:KI)、メイングラスベルグ貫入岩(Main Grasberg Intrusion:MGI)およびダラム貫入岩(Dalam Intrusion:DI)に分けられる。本研究の目的は、特に主要な鉱化作用を有するグラスベルグ地区のMGIの中でも西側における斑岩銅-金鉱化作用に関連した鉱化流体と銅-金鉱化作用の特徴を明らかにすることである。
本研究で用いた、試料は全て試錐コアAM-30-08H-05より採取したものである。このコアはKIより掘進が行われ、MGIを貫きDIまで達している(東から西方向)。顕微鏡観察により、銅鉱化作用は3つの形態に分類できることが明らかになった。石英脈中に存在する含銅(鉄)硫化物脈、含銅(鉄)硫化物の細脈、および鉱染状の存在する含銅(鉄)硫化物である。鉱脈型および細脈型の主要な鉱石鉱物は黄銅鉱であった。これらの形態においては、斑銅鉱が黄銅鉱脈の内部および黄銅鉱の周縁部に多く分布しており、これは中間固溶体および斑銅鉱固溶体からの離溶によって説明できる。鉱染状型においては、黄銅鉱および斑銅鉱が主要な鉱石鉱物であり、産状から一次鉱物であると判明した。黄銅鉱および斑銅鉱はしばしば共存していることから、鉱染状型においても中間固溶体および斑銅鉱固溶体から離溶したものと考えられる。一方で、その他の含銅鉱物(輝銅鉱、銅藍および方輝銅鉱)は、部分的に葉状の組織を形成している。これは明らかに、これら含銅鉱物は斑銅鉱からの交代によって生成されたものとみられる。加えて、輝銅鉱、銅藍および方輝銅鉱が二次鉱物として斑銅鉱の周縁部を交代しており、これは一次鉱物の生成の後に地下水の関与があったことを示唆している。自然金は、石英脈中の黄銅鉱中および鉱染状に存在する黄銅鉱内部に分布していた。石英脈中の黄銅鉱中では、斑銅鉱およびメレンスキー鉱と共生していた。メレンスキー鉱は既にGIC北部および南部において報告されているが、本研究でGIC西部において初めて同定され、SEM-EDXにより組成はPd1.0Te2.0であった。メレンスキー鉱は、ブッシュフェルト複合岩体におけるメレンスキー層のように、白金族元素の鉱化に関連する超苦鉄質岩においては一般的であり、この地区におけるメレンスキー鉱の存在は、初生的な苦鉄質マグマの存在とその鉱化への寄与を示唆している。このメレンスキー鉱の存在がMGIにおいて広く確認されたことで、初生的な苦鉄質マグマの寄与がMGI全体に及ぶことが示唆される。本研究では石英脈に関連する切った-切られたの関係が明瞭には観察されなかったため、黄銅鉱脈を内部に持つ石英脈の結晶の成長の様子を見るため、カソードルミネッセンス観察を行った。コントラスト異常が石英脈の内部に観察され、石英脈が前期石英脈と黄銅鉱脈の形成に関与している後期石英脈という二種の石英脈により形成されていることが明らかとなった。前期石英脈に対し流体包有物の均質化温度測定および塩濃度の測定を実施したところ、前期石英脈における均質化温度は600℃を超え、また高い塩濃度(61.32 wt%)を持つことが明らかになった。この結果は、前期石英脈は鉱化作用が弱いか全くなく、後期石英脈が強い鉱化を引き起こしたことを示唆する先行研究を支持するものである。
本研究で用いた、試料は全て試錐コアAM-30-08H-05より採取したものである。このコアはKIより掘進が行われ、MGIを貫きDIまで達している(東から西方向)。顕微鏡観察により、銅鉱化作用は3つの形態に分類できることが明らかになった。石英脈中に存在する含銅(鉄)硫化物脈、含銅(鉄)硫化物の細脈、および鉱染状の存在する含銅(鉄)硫化物である。鉱脈型および細脈型の主要な鉱石鉱物は黄銅鉱であった。これらの形態においては、斑銅鉱が黄銅鉱脈の内部および黄銅鉱の周縁部に多く分布しており、これは中間固溶体および斑銅鉱固溶体からの離溶によって説明できる。鉱染状型においては、黄銅鉱および斑銅鉱が主要な鉱石鉱物であり、産状から一次鉱物であると判明した。黄銅鉱および斑銅鉱はしばしば共存していることから、鉱染状型においても中間固溶体および斑銅鉱固溶体から離溶したものと考えられる。一方で、その他の含銅鉱物(輝銅鉱、銅藍および方輝銅鉱)は、部分的に葉状の組織を形成している。これは明らかに、これら含銅鉱物は斑銅鉱からの交代によって生成されたものとみられる。加えて、輝銅鉱、銅藍および方輝銅鉱が二次鉱物として斑銅鉱の周縁部を交代しており、これは一次鉱物の生成の後に地下水の関与があったことを示唆している。自然金は、石英脈中の黄銅鉱中および鉱染状に存在する黄銅鉱内部に分布していた。石英脈中の黄銅鉱中では、斑銅鉱およびメレンスキー鉱と共生していた。メレンスキー鉱は既にGIC北部および南部において報告されているが、本研究でGIC西部において初めて同定され、SEM-EDXにより組成はPd1.0Te2.0であった。メレンスキー鉱は、ブッシュフェルト複合岩体におけるメレンスキー層のように、白金族元素の鉱化に関連する超苦鉄質岩においては一般的であり、この地区におけるメレンスキー鉱の存在は、初生的な苦鉄質マグマの存在とその鉱化への寄与を示唆している。このメレンスキー鉱の存在がMGIにおいて広く確認されたことで、初生的な苦鉄質マグマの寄与がMGI全体に及ぶことが示唆される。本研究では石英脈に関連する切った-切られたの関係が明瞭には観察されなかったため、黄銅鉱脈を内部に持つ石英脈の結晶の成長の様子を見るため、カソードルミネッセンス観察を行った。コントラスト異常が石英脈の内部に観察され、石英脈が前期石英脈と黄銅鉱脈の形成に関与している後期石英脈という二種の石英脈により形成されていることが明らかとなった。前期石英脈に対し流体包有物の均質化温度測定および塩濃度の測定を実施したところ、前期石英脈における均質化温度は600℃を超え、また高い塩濃度(61.32 wt%)を持つことが明らかになった。この結果は、前期石英脈は鉱化作用が弱いか全くなく、後期石英脈が強い鉱化を引き起こしたことを示唆する先行研究を支持するものである。