[MIS19-P09] 新しい古海洋プロキシの開発に向けた海綿骨針酸素同位体比分析
キーワード:海綿骨針、底生有孔虫、酸素同位体比、温度依存性
有孔虫殻の酸素同位体比は海水と炭酸塩間の同位体分別により主に水温に依存し値が変化するという特徴から、古水温の推定や氷期-間氷期サイクルの認定など、古海洋学においては重要な古環境指標として利用されている。しかし、有孔虫殻は炭酸塩保障深度より下位の深度帯では化石として保存されないため、炭酸塩補償深度以深の水塊の酸素同位体比データを得ることが不可能であった。そこで我々はこの問題を克服するために海綿骨針に着目した。海綿動物の中でもケイ酸塩の骨針を持つガラス海綿類の骨針は海洋堆積物中に化石として豊富に産出する。様々な水塊に応じた海綿骨子の酸素同位体比データを集約することで深海の古海洋プロキシとして応用できると期待される。本研究は、天然の海綿骨針の酸素同位体比が温度依存性を有するかどうかを明らかにすることを目的としている。
本研究では産業技術総合研究所が2008年にGH08航海で採取した沖縄海域の表層堆積物サンプルを使用した。GH08では浅海域から深海域 (水深216 mから2679 m)までの炭酸塩補償深度以浅の連続的な水深で多くの表層堆積物が得られているだけでなく、それぞれの採泥地点で海水も採取しているため、海水と底生有孔虫、そして海水と海綿骨針の酸素同位体分別をそれぞれ評価し比較することができると考えられる。試料は海底表層堆積物サンプルの表層0-2cmを分取し、250メッシュの篩上で洗浄した後、40℃の恒温乾燥機で乾燥させた。このサンプルから、底生有孔虫はCibicidoides sp. と Cibicidoides wuelluerstorfiの2種を拾い出し、IsoPrimeを用いてリン酸分解法で酸素同位体比を分析した。海水の酸素同位体比はLiquid Water Isotope Analyzer (LWIA)によりレーザー分光法で分析を行った。また、海綿骨針は顕微鏡下で拾い出し、骨針表面の有機物や微細構造に入り込んだ炭酸塩粒子を取り除くために過酸化水素と塩酸で酸処理を行い、十分に洗浄した後に乾燥させた。海綿骨針はiHTR (inductive high-temperature carbon reduction: 誘導高温炭素還元) と CF-IRMS (continuous-flow isotope ratio mass spectrometry: 連続フロー型質量分析法)を組み合わせた高周波誘導加熱法 (Ijiri et al., 2014)により酸素同位体比分析を行った。
現在までの分析の結果、沖縄表層堆積物中の底生有孔虫の酸素同位体比は水温と負の相関があり、温度依存性があることがわかった。この結果は先行研究 (Marchitto et al., 2014)とも相違がなく、本研究地の底生有孔虫の酸素同位体比結果がリファレンスとして適当であることが確認できた。海綿骨針は、いくつかのサンプルにおいては底生有孔虫の酸素同位体比とのよい相関関係が見られ、珪藻骨格の酸素同位体比を測定した先行研究 (Brandriss et al., 1998, Moschen et al., 2005) と同調する結果が得られた。しかし、異常に重い値を示すサンプルも存在した。これらの値の妥当性を評価するため、酸処理過程の見直しを含む追加実験によって適切な分析手法を確立する課題が残った。
本研究では産業技術総合研究所が2008年にGH08航海で採取した沖縄海域の表層堆積物サンプルを使用した。GH08では浅海域から深海域 (水深216 mから2679 m)までの炭酸塩補償深度以浅の連続的な水深で多くの表層堆積物が得られているだけでなく、それぞれの採泥地点で海水も採取しているため、海水と底生有孔虫、そして海水と海綿骨針の酸素同位体分別をそれぞれ評価し比較することができると考えられる。試料は海底表層堆積物サンプルの表層0-2cmを分取し、250メッシュの篩上で洗浄した後、40℃の恒温乾燥機で乾燥させた。このサンプルから、底生有孔虫はCibicidoides sp. と Cibicidoides wuelluerstorfiの2種を拾い出し、IsoPrimeを用いてリン酸分解法で酸素同位体比を分析した。海水の酸素同位体比はLiquid Water Isotope Analyzer (LWIA)によりレーザー分光法で分析を行った。また、海綿骨針は顕微鏡下で拾い出し、骨針表面の有機物や微細構造に入り込んだ炭酸塩粒子を取り除くために過酸化水素と塩酸で酸処理を行い、十分に洗浄した後に乾燥させた。海綿骨針はiHTR (inductive high-temperature carbon reduction: 誘導高温炭素還元) と CF-IRMS (continuous-flow isotope ratio mass spectrometry: 連続フロー型質量分析法)を組み合わせた高周波誘導加熱法 (Ijiri et al., 2014)により酸素同位体比分析を行った。
現在までの分析の結果、沖縄表層堆積物中の底生有孔虫の酸素同位体比は水温と負の相関があり、温度依存性があることがわかった。この結果は先行研究 (Marchitto et al., 2014)とも相違がなく、本研究地の底生有孔虫の酸素同位体比結果がリファレンスとして適当であることが確認できた。海綿骨針は、いくつかのサンプルにおいては底生有孔虫の酸素同位体比とのよい相関関係が見られ、珪藻骨格の酸素同位体比を測定した先行研究 (Brandriss et al., 1998, Moschen et al., 2005) と同調する結果が得られた。しかし、異常に重い値を示すサンプルも存在した。これらの値の妥当性を評価するため、酸処理過程の見直しを含む追加実験によって適切な分析手法を確立する課題が残った。