日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 山の科学

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)

[MIS20-P12] 上高地における冷気湖形成の熱収支解析

*小山 紗莉1西村 基志2鈴木 啓助3 (1.信州大学大学院総合理工学研究科、2.信州大学大学院総合工学系研究科、3.信州大学理学部)

キーワード:冷気湖、熱収支

上高地(1490 m),岳沢(1600 m,1700 m,1800 m),西穂高岳(2355 m)において,気象観測および熱収支解析を行い,冷気湖の形成機構について明らかにした.観測対象期間は2016年12月6日~2017年5月4日と2017年11月17日~2018年4月16日の上高地の積雪期である.
本研究ではDorninger et al.(2011)を参考に,観測期間に発生した冷気湖を,静穏な発達,遅い形成,早期の解消,混合イベント,短時間の全層の気温上昇,上層の乱れ,下層の乱れ,短時間の冷気湖,の8種類の冷気湖イベントに分類した.
冷気湖イベントが2017年4月に28回,2018年3月に27回発生した.しかし混合イベント,短時間の全層の気温上昇,上層・下層の乱れは2016/17年,2017/18年ともにほとんど発生しなかった.これは上高地が,乱流が発生しにくい地形であるためと考えられる.
静穏な発達,遅い形成,早期の解消は,冷気湖が形成された時間と解消された時間が異なった.これらは冷気湖が形成されている間,顕熱・潜熱フラックスは0 W m-2であった.混合イベント,短時間の全層の気温上昇,上層の乱れは,冷気湖で発生した気温上昇の深さ,あるいはその気温の上昇量に差異があった.顕熱・潜熱フラックスについて混合イベントは5.0 W m-2以上,短時間の全層の気温上昇は0.5 W m-2以上,上層の乱れは0 W m-2であった.下層の乱れは,盆地の底部付近において短時間の気温上昇が発生したイベントである.形成時間が6時間以内の冷気湖は短時間の冷気湖に分類された.これら冷気湖イベントは雲の発生と風による乱流の発生が大きく関与し,雲や風の発生時刻と継続時間,乱流の強度が主な要因と考えられる.