[PEM16-P17] ISS-IMAP VISI による観測データを用いた中間圏 OH 温度の推定
キーワード:電離圏、大気光、中間圏、OH、ISS-IMAP、温度
一般に、衛星観測のデータは地上観測のデータと比較して波長分解能が劣るため解析が困難である。この研究では 2012 年から 2015 年にかけて ISS-IMAP ミッションで国際宇宙ステーションに搭載された観測装置である可視・近赤外分光撮像装置(VISI) による中間圏の大気光の発光のデータを解析し高度 85 km 付近の中間圏の OH 発光層の温度推定を試みる。従来の研究から、OH 分子がある振動準位間での遷移を行うときの回転レベルの相対存在分布はボルツマン分布に従い、この分布は OH 分子の回転温度によって決定づけられることが知られている。この性質を用いて OH の多波長データから温度の推定を試みる研究はこれまで地上観測のデータに対してのみ用いられてきた。本研究ではこの手法を宇宙空間からの観測のデータに対して適用し、これまでに得られたことのない空間的に大規模な温度分布図を得ることを目指す。解析には Calibration モードと Spectral モードの二種類のモードのデータを用いる。Calibration モードのデータは 500 ~ 900 nm の波長域で観測機器の受光部全体を用いて観測データを記録しており、Spectral モードのデータは 6 つの ROI (Region of interest) の波長域に絞って観測を行い、空間的な位置情報とともに観測データが記録されている。解析は Spectral モードのデータを中心に行う。828nm 付近の OH の多波長データに対して、宇宙線による Salt-and-pepper-noise の除去や random sample consensus アルゴリズムを用いた人工的なノイズの含まれるデータの除去を行い、得られたスペクトル図に対して波長分解能の低さを補うためにガウス関数によるフィッティングを行ったうえで温度の推定を試みた。