日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:黒崎 健二(名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻)、仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)

[PPS06-P02] 冥王星表面の氷の昇華と凝結による反射率の進化

*松井 弥志1木村 淳1 (1.大阪大学)

キーワード:冥王星、反射率

2015年、冥王星に接近した探査機ニューホライズンズの観測によって、冥王星表面にH2O, N2, CH4, COの氷が共存することや、その表面に氷の量の違いによる強い明暗のコントラストがあることが明らかになった。しかし、その明暗分布の起源については、いまだ明らかになっていない。
 木星や土星の衛星における反射率変化を扱った先行研究では、日射による氷の昇華が氷天体表面の反射率変化に影響することが示されている。さらに冥王星はを主成分とする大気を持つことから、大気からの凝結も反射率に影響すると思われる。
 このように、昇華や凝結などの氷の振る舞いが、冥王星表面の反射率変化に大きく影響している可能性がある。しかしこれまでのところ、その定量的な考察は行われていない。
 そこで本研究では、冥王星表面の明暗分布の起源を探ることを目的として、様々な氷の昇華・凝結といった振る舞いと、表面の反射率の変化の関係を数値シミュレーションを用いて調べた。
 モデルでは、明るい氷と暗い非氷物質が均一に混ざって存在し、その体積比に従った反射率を持つ表面状態を仮定した。続いて緯度ごとの日射量の変化と熱慣性を用いて表面温度を計算し、その温度における蒸気圧と大気圧の差から氷の昇華量を見積もった。昇華した氷は大気として存在し、表面温度が凝固点を下回った時には、大気から再凝結し表面に沈着する効果も考慮した。その上で、微小隕石衝突などによって表面が継続的に混合されると考えられる深さまでに含まれる氷と非氷物質の体積比から、次の時間ステップの表面の反射率を計算した。この過程を繰り返し計算することで、冥王星表面の反射率の時間変化を調べた。
 その結果、巨大衝突のような特定のイベントを考えなくても、自転軸の大きな傾きから生じる緯度ごとの日射量の違いによって、現在の冥王星表面に見られる反射率分布の傾向を説明できる可能性があることが分かった。