[S-SS10] 地震活動とその物理

[SSS10-P06] 房総沖太平洋プレート内二重深発地震の発震機構：2011年東北地震後の時間変化

*陳 冠宇¹、佐藤 利典²、佐藤 智治¹、寺田 麻美、篠原 雅尚³、望月 公廣³、山田 知朗³、植平 賢司⁴、眞保 敬⁵、小平 秀一⁵、町田 祐弥⁵、日野 亮太⁶、東 龍介⁶、村井 芳夫⁷、伊藤 喜宏⁸、八木原 寛⁹、平田 賢治⁴、橋間 昭徳³、Andrew Freed¹⁰ (1.千葉大学理学部地球科学科、2.千葉大学大学院理学研究院、3.東京大学地震研究所、4.防災科学技術研究所、5.海洋研究開発機構、6.東北大学大学院理学研究科、7.北海道大学大学院理学研究院、8.京都大学防災研究所、9.鹿児島大学・南西島弧地震火山観測所、10.Purdue University)

キーワード：二重深発地震面、発震機構の時間変化、太平洋プレート、房総沖、2011年東北地方太平洋沖地震

1.はじめに
房総沖では、太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込み、太平洋プレート内に二重深発地震面が明瞭にみられる（例えば寺田・他、JpGU2016）。佐藤・他（JpGU, 2018）は陸上観測と海底地震計観測のデータを用いて、2011年東北地震前後での二重深発地震の発震機構を調べたところ、下面の発震機構が地震前は沈み込む方向に伸長が卓越していたが、地震後3か月は圧縮になっていたことを発見した。本研究は、下面の発震機構が東北地震後、時間とともにどう変化したかについて、地震後1年間のデータを用いて議論する。

2.データと解析方法
使用データは、Hi-netの波形データと東北地震後の海底地震計を用いた余震観測（2011/3/15-2012/3/31）である。寺田・他によって再決定された地震のうち、太平洋プレート内の二重深発地震面にある地震を抜き出し、P波の押し引きを検測した。寺田・他が決定した3次元地震波速度構造から射出方向、射出角を求め、グリッドサーチで最適な発震機構を求めた。

3.結果
東北地震後1年間では、二重深発地震面上面は沈み込む方向に圧縮が卓越する地震が多くみられた。これに対し下面では、7月までは圧縮が卓越する地震がほとんどであったが、9月以降は、沈み込む方向に伸長する地震が多数となった。これは、東北地震によって太平洋プレートが浅部で下方に動いたため、この二重深発地震面がある深さでは太平洋プレート内が地震後は圧縮になったが、その後、この応力が半年ほどで緩和したことを示している。


謝辞

本研究では、防災科学技術研究所のHi-netの波形データを使用させて頂きました。海域観測に関して、2011年東北地方太平洋沖地震余震観測での各航海における船長と乗組員の方々の協力を頂きました。ここに記して厚く御礼申し上げます。