日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 強震動・地震災害

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)、染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)

[SSS13-P25] MeSO-net観測点における地表地震記録の推定

*先名 重樹1若井 淳1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:地震観測、微動、速度構造モデル

1.はじめに
 本研究では、MeSO-netの深さ20mに設置してある地中設置型地震計のデータから地表の揺れの様子を高精度に予測するために、各観測点での微動観測や地表における臨時観測を行うことにより、地盤増幅特性の評価や地盤のS波速度構造の推定を行う。そのための研究開発項目として、1.MeSO-net観測点における地表地震記録の取得と増幅特性の推定、2.微動アレイ観測とS波速度構造等の地盤物性値の推定、3.既往地盤情報等によるS波速度構造の精度検証と地表地震記録の推定、の3つの項目を実施することにより、MeSO-net観測地点の詳細な地盤増幅構造を、「マルチインテグレーションシステム」へ実装することを目的としている。以下に項目毎の取組みを紹介する。

2. MeSO-net観測点における地表地震記録の取得と増幅特性の推定
 本項目では、MeSo-net観測点の地表における臨時地震観測による、観測点ごとの地中・地表間のスペクトル増幅率の推定を行うため、MeSO-net全観測点(297地点)で実施している。観測期間は1地点あたり2~3ヶ月とし、現時点(H30.12.9)で、60地点で観測を終了している。対象観測点ごとに、MeSO-net地震計と同じセンサを持つ地震計(白山工業社製JU310およびJU410)1台を使用した。地震計は固定板および防水容器に格納し、防水処理された電源ケーブルで接続した。それら全体をブルーシートで養生しロープで固定した。これを観測井近傍に設置してポールとチェーンで囲った。また、データ収録時のサンプリング周波数を200Hz、レンジをJU410については、±4.0G(JU310については±1.0G)とした。平成29~30年度に実施した地震観測地点において地表および地中で記録が得られた地震nにおいて、各地震観測地点における地中~地表の増幅特性を計算した。増幅特性は各観測地点における地中および地表で得られた地震波形からフーリエスペクトルを成分ごとに計算し、0.1~10Hzのバンドパスフィルターをかけ、対数ウィンドウで平滑化した上で、地中に対する地表の比をとった。結果として,比較的固いローム台地と軟弱な後背湿地や自然堤防の増幅特性の特徴の違いが明瞭となっている。特に、ローム台地の観測点については5~10Hzの短周期で増幅度が大きくなっており、MeSO-net地震計の深さ20mよりも浅い場所で地盤構造に変化があるものと考えられる。一方、後背湿地・自然堤防等の軟弱な地盤とされる地形では、1~2Hz付近で顕著な増幅を示す。

3. 微動アレイ観測とS波速度構造等の地盤物性値の推定
 前節の地盤増幅特性を検証し、強震動時でも揺れを想定出来るようにするため、地下50m程度のS波速度構造を求めるための微動アレイ観測を実施した。微動観測は、MeSO-net 地震計と同じセンサ特性を持つ3 成分地震計兼微動観測機器(JU410)を購入した。それらを用いて、対象となるMeSO-net観測点296地点の直上にて、微動アレイ観測を実施している。微動アレイは、アレイ半径60cmの4点極小アレイと1辺5~15m程度の3点不規則アレイを展開し、同時に15分間程度の観測を行った。データ収録時のサンプリング周波数は200Hz、レンジは±0.1Gとした。微動アレイ観測結果に対し、SPAC法およびCCA法を用いて位相速度解析を実施した。その上で、AVS30等の増幅特性の抽出(C40)、分散曲線の直接深度変換法(SPM)、逆解析等の逆解析手法を用いてS波速度構造等の地盤物性値を推定した。前節同様、比較的固いローム台地と軟弱な後背湿地の特徴の違いが明確になっている。

4. まとめ
 前節までに実施している地震観測と微動観測に基づき、今後、周期を考慮した地盤増幅率を検討するが、関東地域全域作成されている既往の地盤モデル(戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のリアルタイム地震被害推定で実施している関東地域の浅部・深部統合地下構造モデル)や地質調査データを用いたS波速度構造モデルのさらなる高度化を行い、250mメッシュ間隔の精度の高い地震動の推定を行うことを目標とする。

<参考文献>
Aki, K.: Space and time spectra of stationary stochastic waves, with special reference to microtremors, Bull. Earth. Res. Inst. Univ. Tokyo, 35, pp.415-457, 1957.
Cho, I., S. Senna, and H. Fujiwara: Miniature array analysis of microtremors, Geophysics, 78, KS13–KS23, doi:10.1190/geo2012-0248.1, 2013.
Arai, H., and K. Tokimatsu: S-Wave velocity profiling by inversion of microtremor H/V Spectrum, Bull. Seismol. Soc. Am., 94, pp.53-63, 2004.
Senna, S, Maeda T, Inagaki Y, Suzuki H, Matsuyama N, Fujiwara H. (2013). Modeling of the subsurface structure from the seismic bedrock to the ground surface for a broadband strong motion evaluation, Journal of Disaster research., Vol.8, No.5, pp.889-903.