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[HCG31-10] 新潟県を例にHLRW科学的特性マップの非科学性の検証と、処分場検討の進め方の基本課題
キーワード:高レベル放射性廃棄物、科学的特性マップ、新潟、基本問題、非科学的、公正な議論
●環境汚染と、微生物―鉱物相互作用例
原発事故で,放射能は人間が完全にコントロールしがたいことを国民は広範に知った.筆者(赤井)の専門の鉱物学に関わり, Cs-微生物相互作用例とCs再循環過程を示した.このような、地表過程事例から地下過程の検討課題もありうる.
●新潟県の例でみるマップの非科学性の具体的指摘
科学的特性マップのNUMOの説明会が新潟市でも説明会が開催され,その場でも発言したが新潟県の地質で二,三例指摘する。1)粟島も適地グリーンとされているが,その南に新潟地震の震央があり地震で西に傾き東岸で1.5m程隆起した.おそらく活褶曲か活断層が成長し,傾動したように思えるが適地と考え難い.2)かつての巻原発予定地(新潟市)が今も東北電力によって管理下にあるが,この周辺だけグリーンになっているのは地質の相違ではない等もある.3)五頭山塊がグリーンで,宝珠山で予備的ボーリング調査がなされたようであるが目的を聞いても回答なかったとの市民の声がある.地質では「五頭山体花崗岩は非常に裂罅が多く,断層粘土を伴うところも多々見られる.さらに津川層層当層が五頭山の中腹や山頂に点在,五頭山西方でのボーリングで地下2000mに津川層層当層と上位の西山層相当層の境が確認され,少なくも440万年前から現在までの間に3000m近く隆起.それらは,断層によって階段状に分布.さらに,五頭山地西縁と西の笹神丘陵には膨大な土石流堆積物が堆積,7層準が確認されそれらは五頭山地側と笹神丘陵を挟み古いほど急勾配であり,かなり新しい時期まで山地側隆起がわかる.以上から核のゴミ処分場としては不適切な場所であろう.」(笹神団研 2012;高橋明私信).4)柏崎刈羽原発敷地付近の問題もある。一般論で,イ)既存の詳細な地質図データを使っていない:地質図はその地域の地質特性を空間的にも時間的にも総合的に示す基本中の基本である.ロ)活断層の取り扱いが問題で,新たな活断層生成の可能性もあり予見は不可能である.2019年1月熊本での震度6弱,M5.1の地震は,活断層が知られない地であった.この一例で,活断層問題の危険性は決定的である.変動帯という本質は,そういう事であり,これを3.11大震災で国民は広く知った.処分場問題は,国民・社会がどう受け止めるか,ここを基本にするか、国民世論を無視するかの民主主義の問題でもある.ハ)地下水の影響が大きく,最大問題と言って良い.降水量の大きい日本で,地下水影響は多大で,地震,火山活動他の影響でどう裂罅が生成し地下水動態が変わるか,最大の問題である.水のあるところには地下微生物も作用する。以上から科学的特性マップは,極めて非科学的と結論づけうる.
●民主主義と科学者倫理の視点、学術会議の課題
日本学術会議は,学術と社会に関わる課題に重要な見解を学術界を代表して独立性を持って発出してきた:例えば,軍学共同問題の新声明など典型的.学術会議は,原子力委に対し2012年に回答し、後,フォローアップの委員会を設置し,社会的合意形成に関する分科会からは,国民目線に立った報告を2014年に出した.技術的検討の分科会報告も統合し,2015年に12の提言を回答した.しかしこの12提言は,2012年報告,2014年社会的合意分科会報告から逸脱,矛盾し,後退している.例えば,暫定保管は原則50年,最初の30年をめどに合意形成と適地選定としている.従来は30年を一つの期間としてその後の長期の政策選択となっていた. 2012年,2015年回答でも,専門家間の合意形成を重視するが,2015年提言では地層処分推進にほぼ方向づけ,適地のリスト化まで触れている.活断層を避けうると明言もしている.専門家で、日本列島に地層処分に適した場所はないとの断言,或いは強い疑念が多数ある中,専門家の議論・合意を無視し,地層処分推進に傾斜の回答を出したことは,文書内で矛盾しており問題で再検討すべきである.但しこれら文書には,専門家の合意,社会的合意の尊重,そのための委員会・会議の提案等貴重なものもある.この精神を踏襲した国民的議論に転換すべきである.
海外例で,2017年に米,露,リトアニアの専門家による意見交流があり,千年万年の長期保管技術は無理だが,100間年完全に安全な管理法はありうるとの結論になったという(Oleg Bodrov 私信).このような国際的議論と交流することも重要である.
●公正な議論を
電力会社からの拠出金と派遣職員に依存するNUMOは事実上,原発再稼働を支え,政府の施策を支持し、忖度する組織であり,国民目線からは、中立,公正ではあり得ない.これは,説明会でもわかった.公正中立な専門家内の議論の場を持たなければ,国民の信頼は得られない。
原発事故で,放射能は人間が完全にコントロールしがたいことを国民は広範に知った.筆者(赤井)の専門の鉱物学に関わり, Cs-微生物相互作用例とCs再循環過程を示した.このような、地表過程事例から地下過程の検討課題もありうる.
●新潟県の例でみるマップの非科学性の具体的指摘
科学的特性マップのNUMOの説明会が新潟市でも説明会が開催され,その場でも発言したが新潟県の地質で二,三例指摘する。1)粟島も適地グリーンとされているが,その南に新潟地震の震央があり地震で西に傾き東岸で1.5m程隆起した.おそらく活褶曲か活断層が成長し,傾動したように思えるが適地と考え難い.2)かつての巻原発予定地(新潟市)が今も東北電力によって管理下にあるが,この周辺だけグリーンになっているのは地質の相違ではない等もある.3)五頭山塊がグリーンで,宝珠山で予備的ボーリング調査がなされたようであるが目的を聞いても回答なかったとの市民の声がある.地質では「五頭山体花崗岩は非常に裂罅が多く,断層粘土を伴うところも多々見られる.さらに津川層層当層が五頭山の中腹や山頂に点在,五頭山西方でのボーリングで地下2000mに津川層層当層と上位の西山層相当層の境が確認され,少なくも440万年前から現在までの間に3000m近く隆起.それらは,断層によって階段状に分布.さらに,五頭山地西縁と西の笹神丘陵には膨大な土石流堆積物が堆積,7層準が確認されそれらは五頭山地側と笹神丘陵を挟み古いほど急勾配であり,かなり新しい時期まで山地側隆起がわかる.以上から核のゴミ処分場としては不適切な場所であろう.」(笹神団研 2012;高橋明私信).4)柏崎刈羽原発敷地付近の問題もある。一般論で,イ)既存の詳細な地質図データを使っていない:地質図はその地域の地質特性を空間的にも時間的にも総合的に示す基本中の基本である.ロ)活断層の取り扱いが問題で,新たな活断層生成の可能性もあり予見は不可能である.2019年1月熊本での震度6弱,M5.1の地震は,活断層が知られない地であった.この一例で,活断層問題の危険性は決定的である.変動帯という本質は,そういう事であり,これを3.11大震災で国民は広く知った.処分場問題は,国民・社会がどう受け止めるか,ここを基本にするか、国民世論を無視するかの民主主義の問題でもある.ハ)地下水の影響が大きく,最大問題と言って良い.降水量の大きい日本で,地下水影響は多大で,地震,火山活動他の影響でどう裂罅が生成し地下水動態が変わるか,最大の問題である.水のあるところには地下微生物も作用する。以上から科学的特性マップは,極めて非科学的と結論づけうる.
●民主主義と科学者倫理の視点、学術会議の課題
日本学術会議は,学術と社会に関わる課題に重要な見解を学術界を代表して独立性を持って発出してきた:例えば,軍学共同問題の新声明など典型的.学術会議は,原子力委に対し2012年に回答し、後,フォローアップの委員会を設置し,社会的合意形成に関する分科会からは,国民目線に立った報告を2014年に出した.技術的検討の分科会報告も統合し,2015年に12の提言を回答した.しかしこの12提言は,2012年報告,2014年社会的合意分科会報告から逸脱,矛盾し,後退している.例えば,暫定保管は原則50年,最初の30年をめどに合意形成と適地選定としている.従来は30年を一つの期間としてその後の長期の政策選択となっていた. 2012年,2015年回答でも,専門家間の合意形成を重視するが,2015年提言では地層処分推進にほぼ方向づけ,適地のリスト化まで触れている.活断層を避けうると明言もしている.専門家で、日本列島に地層処分に適した場所はないとの断言,或いは強い疑念が多数ある中,専門家の議論・合意を無視し,地層処分推進に傾斜の回答を出したことは,文書内で矛盾しており問題で再検討すべきである.但しこれら文書には,専門家の合意,社会的合意の尊重,そのための委員会・会議の提案等貴重なものもある.この精神を踏襲した国民的議論に転換すべきである.
海外例で,2017年に米,露,リトアニアの専門家による意見交流があり,千年万年の長期保管技術は無理だが,100間年完全に安全な管理法はありうるとの結論になったという(Oleg Bodrov 私信).このような国際的議論と交流することも重要である.
●公正な議論を
電力会社からの拠出金と派遣職員に依存するNUMOは事実上,原発再稼働を支え,政府の施策を支持し、忖度する組織であり,国民目線からは、中立,公正ではあり得ない.これは,説明会でもわかった.公正中立な専門家内の議論の場を持たなければ,国民の信頼は得られない。