日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 地すべりおよび関連現象

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、王 功輝(京都大学防災研究所)、今泉 文寿(静岡大学農学部)

[HDS09-P06] 1586年天正地震に伴い発生した岐阜県郡上市の水沢上地すべり

*栗本 享宥1苅谷 愛彦2目代 邦康3山田 隆二4木村 誇4 (1.専修大学・学、2.専修大学文学部環境地理学科、3.日本ジオサービス、4.防災科学技術研究所)

キーワード:1586年天正地震、大規模地すべり、庄川断層帯、堰き止め湖沼

岐阜県郡上市明宝地区には,水沢上地すべり(以下,MLとする)と呼ばれる大規模地すべり地(V=2.2×10m3 )が存在する.MLは古文書や伝承に基づき荘川断層帯を震源断層とする1586年天正地震に伴って発生したとされているが,地形学・地質学的資料に根ざした議論はほとんどなかった.筆者らは現地踏査と地形判読を基礎として,MLの地形・地質特性や発生時期,誘因を検討した.
 滑落崖はやや不明瞭ながら,移動体は明確に識別できる.移動体上には凹凸の微・小地形が発達する.移動体は3つのブロックに細分でき,二次的滑動があったことを示唆する.地すべり堆積物は主に淘汰の悪い安山岩の角礫層からなり,礫にはジグソー・クラックの発達が特徴的に認められる.地すべり堆積物中には地すべり発生時に巻き込まれたクロボク状表土の破片が認められる.この破片に含まれる木片2点の較正年代幅(2σ)は cal AD1493~1645を示す.また地すべり堆積物に堰き止められた湖沼・氾濫原堆積物も確認される.この堆積物中の木片5点の較正年代幅(2σ)は cal AD1436~1650であった.以上より,MLは堰き止め湖沼・氾濫原を伴った大規模地すべりであったと結論づけられる.地すべりの規模からみて誘因としては強震動が想定され,各種試料の年代値との整合性からは1586年天正地震であった可能性が極めて高い.ただし10年後には1596年慶長伏見地震が京都地方で発生しているため,なお慎重に検討する必要がある.