日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS13] 津波とその予測

2019年5月29日(水) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールB (2F)

コンビーナ:近貞 直孝(防災科学技術研究所)、対馬 弘晃(気象庁)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:今井 健太郎馬場 俊孝(徳島大学大学院理工学研究部)

12:00 〜 12:15

[HDS13-18] 1854年安政東海地震の津波高分布に関する再検討

*今井 健太郎1蝦名 裕一2都司 嘉宣3岩瀬 浩之4堀 高峰1高橋 成実1,5古村 孝志6 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.東北大学災害科学国際研究所、3.四万十市、4.株式会社エコー、5.国立研究開発法人防災科学技術研究所、6.東京大学地震研究所)

キーワード:南海トラフ巨大地震、1854年安政東海地震、津波痕跡高

南海トラフ巨大地震の周期性として、従来、一定のプレート運動速度に基づき,固有の地震断層面毎の再来発生間隔が受け入れられてきた.そして、昭和東南海地震が安政東海地震の震源域の一部で発生したと考えられてきた。一方,瀬野(2012)は,安政東海地震と昭和東南海地震の強震動生成領域が相補的であった可能性を指摘し、昭和東南海地震が安政東海地震の一部で起きたという従来の考えに疑問を呈している.津波波源域についても同様の観点から再解釈が必要である.そこで本研究では,安政東海地震の震源域に近い紀伊半島から伊豆半島に至る太平洋沿岸において,安政東海地震の津波に関する史料の再精査を行った.さらに,当該地震による津波高分布の特徴を明らかにするために史料に基づく津波痕跡高さの現地調査を行った.

史料精査の対象とした地震資料集として,『増訂大日本地震史料』,『新収日本地震史料』,『日本の歴史地震史料』などに掲載されている1854年安政東海地震および南海地震に関する史料を抽出した.これらにある801点の史料から,既往研究に未使用な新出史料について確認作業を行った.選別された史料の精査を行い,これらに基づいて津波痕跡調査を行い,その痕跡高をGNSSとレーザー距離計により評価した.津波痕跡分布の全体像を把握するために,既往研究(羽鳥,1977;都司・他,1991,行谷・都司,2005;都司・他,2013;都司・齋藤,2014;今井・他,2017)によるデータも一部利用した.

史料精査から明らかになった安政東海地震津波の津波痕跡高さ分布(図1)には2つのピークがあり,志摩半島東端の国崎で22 mに達していた.もう一つのピークは,伊豆半島南東の入間で,津波痕跡高さが15mを超えていた.これらの情報は安政東海地震の津波源を再検討するための非常に重要な手がかりとなる.そして,2つのピークを説明する安政東海地震の波源モデルとして局所的な大すべり域の存在が示唆される.本発表では,このような津波高分布を説明する波源について議論するとともに,安政東海地震と昭和東南海地震の関係性について再検討する.
謝辞:H25-32年度文部科学省「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」(研究代表者:海洋研究開発機構 金田義行)の成果の一部です.ここに記して感謝の意を表します.