日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS14] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)

[HDS14-P02] 阿蘇カルデラ北西部,後期更新世の蛇の尾火山における層序と約4000年前の斜面崩壊

*平田 康人1上田 圭一1宮脇 理一郎2家村 克敏2横山 俊高2宮脇 明子2 (1.一般財団法人電力中央研究所、2.阪神コンサルタンツ)

キーワード:阿蘇カルデラ、噴火活動、地すべり、ノンテクトニクス断層、トレンチ調査

活断層の評価を高精度化するためには,テクトニックな断層だけではなく,ノンテクトニックな断層群の実態解明が重要である.2016年熊本地震においては,阿蘇カルデラ西部に布田川・日奈久断層帯沿った地表地震断層の北東端が出現するとともに,数多くの斜面崩壊や大規模な地表変状が発生した.われわれは,地表地震断層北東端の延長部にあたる蛇の尾火山の南側斜面において,トレンチ調査およびボーリング調査,ならびに採取試料の全岩化学組成分析および放射性炭素年代分析を実施して,当該地域の蛇の尾火砕丘形成以後の火山層序を明らかにし,約4000年前の斜面崩壊に伴う変形構造を見出した.
 鍵層の暦年較正した噴出年代は,蛇の尾スコリア (15500年以前),ACP1軽石 (約4000年前),杵島岳溶岩・スコリア (約3700年前),往生岳スコリア (3500±100年前),そして米塚溶岩 (3000±100年前) である.
 8 m以深の細粒火山灰層と蛇の尾スコリア表層部は黄色に風化しており,斜面と平行な走向の正断層センスの小断層を伴っていた.それらの層を覆う火山灰土層は,高さ約1 mの塊状に分離して,地層の上下が逆転した状態で覆瓦状に配列していた.さらに,この再堆積層は厚さ2 mの流動した火山灰土層に覆われていた.上記すべてのテフラはACP1軽石層に整合的に覆われていた.これらの一連の堆積構造は,ACP1の噴出直前に,それまでに堆積した降下火山灰が次々と崩壊して,崩壊の発生場が火砕丘斜面を遡上したことを示唆している.また,すべり面の構成物や崩壊深度が2016年熊本地震によるものと類似することから,この斜面崩壊は地震動に誘発されたと考えられる.