[HQR05-P18] 火山ガラスの微量元素組成に基づくKs5と類似するテフラの識別
キーワード:LA-ICP-MS、U-Pb年代、テフラ
中期更新世のガラス質細粒テフラには,異なる層位で火山ガラスの主成分組成などが類似し,識別困難なものがある.本研究では火山ガラスの微量成分組成からこれらを識別する指標を検討した.
七山・中里(2018)は,MIS11の上位にある近畿地方のBT72相当層(埼玉県深谷コア,茨城県大古山テフラ;中里ほか,2005)と,下位にある上総層群Ks5とKs5に対比される男鹿半島脇本テフラ(鈴木,1999)を取り上げ,これらのテフラの給源とされる南九州の小田火砕流堆積物(以下pfd)(水野,1994)と辺川pfd(Nishizawa and Suzuki,2017)との対比を検討した.その結果,BT72,Ks5,脇本のガラスの微量成分組成に違いを認め,Ks5類似テフラがMIS11上位,MIS12の低海面層準,その下位層準の3層準にあることを示した.そして小田pfdは脇本に,辺川pfdはKs5に類似することを示した.辺川pfdのジルコンについては0.51±0.1MaのU-Pb年代が得られた(中里ほか,2018).
本研究では上下関係が明かなKs5類似テフラである東灘コア(吉川ほか,2000)のK1-175とK1-223テフラの分析を加え,微量成分の分析平均値の差の有意性(5%水準)をTukey-Kramer法により評価し(Maruyama et al.,2017),これらのテフラの対比について再検討した.火山ガラスのLA-ICP-MSは古澤ほか(2018)の手順によってSc~Uの34元素を定量し,ばらつきの大きいCr,Niを除く32元素について検討した.
Ks5に対するBT72と脇本の有意な差の無い元素数割合はいずれも53%であり,BT72に対する脇本では56%であり,これらのテフラの識別指標になると考えられる.一方,有意な差の無い元素数割合が75%以上となる組み合わせは,Ks5に対して辺川pfd,大古山テフラ,K1-223,脇本に対しては小田pfd,BT72に対してはK1-175の結果が得られ,これらのテフラは類似度が高いと考えられる.
K1-223は大阪層群の海成粘土間の低海面層準に挟在し,脇本との対比が予想されたが,ここではKs5に対比された.今後も分析事例を蓄積し,BT72の給源火砕流の検討などを進める必要がある.
文献:古澤ほか(2018)地雑124(6);Maruyama et al.(2017)Quaternary International,456;水野(1997)地球惑星科学関連学会合同大会予稿集;中里ほか(2005)日本第四紀学会講演要旨集,35;中里ほか(2018)JpGU2018;七山・中里(2018)地学雑誌,127(6);Nishizawa and Suzuki(2017)JpGU-AGU2017;鈴木(1999)日本地質学会第106年学術大会講演要旨;吉川ほか(2000)第四紀研究39(6)
七山・中里(2018)は,MIS11の上位にある近畿地方のBT72相当層(埼玉県深谷コア,茨城県大古山テフラ;中里ほか,2005)と,下位にある上総層群Ks5とKs5に対比される男鹿半島脇本テフラ(鈴木,1999)を取り上げ,これらのテフラの給源とされる南九州の小田火砕流堆積物(以下pfd)(水野,1994)と辺川pfd(Nishizawa and Suzuki,2017)との対比を検討した.その結果,BT72,Ks5,脇本のガラスの微量成分組成に違いを認め,Ks5類似テフラがMIS11上位,MIS12の低海面層準,その下位層準の3層準にあることを示した.そして小田pfdは脇本に,辺川pfdはKs5に類似することを示した.辺川pfdのジルコンについては0.51±0.1MaのU-Pb年代が得られた(中里ほか,2018).
本研究では上下関係が明かなKs5類似テフラである東灘コア(吉川ほか,2000)のK1-175とK1-223テフラの分析を加え,微量成分の分析平均値の差の有意性(5%水準)をTukey-Kramer法により評価し(Maruyama et al.,2017),これらのテフラの対比について再検討した.火山ガラスのLA-ICP-MSは古澤ほか(2018)の手順によってSc~Uの34元素を定量し,ばらつきの大きいCr,Niを除く32元素について検討した.
Ks5に対するBT72と脇本の有意な差の無い元素数割合はいずれも53%であり,BT72に対する脇本では56%であり,これらのテフラの識別指標になると考えられる.一方,有意な差の無い元素数割合が75%以上となる組み合わせは,Ks5に対して辺川pfd,大古山テフラ,K1-223,脇本に対しては小田pfd,BT72に対してはK1-175の結果が得られ,これらのテフラは類似度が高いと考えられる.
K1-223は大阪層群の海成粘土間の低海面層準に挟在し,脇本との対比が予想されたが,ここではKs5に対比された.今後も分析事例を蓄積し,BT72の給源火砕流の検討などを進める必要がある.
文献:古澤ほか(2018)地雑124(6);Maruyama et al.(2017)Quaternary International,456;水野(1997)地球惑星科学関連学会合同大会予稿集;中里ほか(2005)日本第四紀学会講演要旨集,35;中里ほか(2018)JpGU2018;七山・中里(2018)地学雑誌,127(6);Nishizawa and Suzuki(2017)JpGU-AGU2017;鈴木(1999)日本地質学会第106年学術大会講演要旨;吉川ほか(2000)第四紀研究39(6)