[H-RE17] 再生可能エネルギー分野への活用に向けた地球科学データの可能性

[HRE17-02] 西大阪地域の地下水の利用と取り組みについて

*北田 奈緒子¹、伊藤 浩子¹、越後 智雄¹、藤原 照幸¹、西垣 誠² (1.一般財団法人地域地盤環境研究所、2.岡山大学)

キーワード：ボーリング　データベース、地下水、砂礫層

上町台地より西側の西大阪地域では、海水準変動の繰り返しに伴う複数の粘土層が層状に堆積し、粘土層間の砂礫層は豊富な地下水が賦存する被圧帯水層を形成している。しかしながら、1960年代の工場用水の大量汲み上げによって引き起こされた深刻な地盤沈下が原因となり、現在は揚水が厳しく規制されている。昨今、特に大阪市内においては、再生熱エネルギーとしての地下水利用プロジェクトが推進されるなど、地下水の有効利用についての検討が進められている。

本研究ではNEDO「再生可能エネルギー熱利用技術開発／再生可能エネルギー熱利用のポテンシャル評価技術の開発/都市域における，オープンループシステムによる地下水の大規模熱源利用のための技術開発」（研究代表者：北田奈緒子）の一環として、地下水の広域的な特性を把握することを目的に3年間の水質観測を実施するとともに、観測井構築時の採取試料から、各帯水層の特性の把握を行い、ボーリングデータベースを用いた帯水層分布の推定などを実施した。本研究の地下水観測には、「地下水地盤環境に関する研究協議会」が管理する観測井の一部を利用させていただいた。対象とした帯水層は、完新統の粘土層(Ma13)の下位に分布する砂礫層（第1被圧帯水層：Dg1)と、最上位更新統の粘土層(Ma12)の下位に分布する砂礫層（第2被圧帯水層：Dg2)である。水質については、2016～2018年の年4回、計12回採水した地下水について主成分組成の分析と水温測定を実施し、その特性を把握した。その結果、Dg1、Dg2共に還元的でNa-Cl型の水質組成を示し、特にDg1の方がより塩濃度が高いことが明らかとなった。また、採取試料による粒度試験とボーリングデータベースの検討からは，Dg2層は大阪の中心地域（大阪駅から中之島付近）において層厚が厚く分布することが明らかになった．