日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 結晶成長、溶解における界面・ナノ現象

2019年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 303 (3F)

コンビーナ:木村 勇気(北海道大学低温科学研究所)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、佐藤 久夫(三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)、塚本 勝男(大阪大学大学院工学研究科)、座長:佐藤 久夫

11:00 〜 11:15

[MIS10-07] ノルセサイトの溶液媒介相転移キネティクス

*麻川 明俊1畝田 廣志1越後 至1小松 隆一1 (1.山口大学大学院創成科学研究科)

キーワード:ノルセサイト、溶液媒介相転移

ノルセサイトBaMg(CO3)2は従来の圧電結晶や光学結晶より高い複屈折を示すため、音響光学素子や波長変換素子としての利用が期待できる。ノルセサイトを素子材料として検討するためには、数mmの結晶サイズが必要であるが、これまで誰も数mmサイズのノルセサイトを人工的に育成できていないのが現状である。その要因の一つとして、ノルセサイトは溶液媒介相転移により生成するため、結晶化の駆動力の制御が一つの結晶を育成する場合に比べ複雑であることが挙げられる。そこで、本研究では、偏光顕微鏡観察、X線回折測定 (XRD) 、pH計測によりノルセサイトや準安定結晶のウィッセライトBaCO3の誘導期を計測し、求めた核生成頻度と過飽和度の関係からノルセサイトの溶液媒介相転移キネティクスの特徴について調べた。
 誘導期の計測では、0.3M BaCl2・2H2O、0.3M MgCl2・6H2O、0.125M NaHCO3を順番に、50~90℃の純水200mLに混合し、沈殿物の経時変化をEx-situで偏光顕微鏡観察、XRD測定した。また、溶液内のCO32-濃度の変化を検出するため、pHを計測した。更に上澄み液のICP発光分光分析や全有機炭素測定 (TOC) を用い、Ba2+、Mg2+、CO32-を計測し、溶液内の過飽和度を求めた。
 溶液中に種々の試料を添加直後、針状のウィッセライトBaCO3が瞬間的に生成した。その後、ノルセサイトはウィッセライトの溶解を介して生成することを光学顕微鏡観察及びXRD測定により確認した。更に回折プロファイルの解析から、ノルセサイトの誘導期を計測した。ノルセサイトの誘導期は温度の増加と共に減少した。溶解度の結果と比較すると、これはノルセサイトとウィッセライトの溶解度差が温度の増加と共に増加していくことが要因の一つと分かった。また、得られた誘導期から核生成頻度を計算し、ノルセサイトの界面自由エネルギー等の物理量を求め、ウィッセライトの物理量と比較した。当日は解析の詳細について報告する。