日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 水惑星学

2019年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、座長:関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、臼井 寛裕

09:15 〜 09:30

[MIS11-14] 炭酸塩コンクリーションにおける形成メカニズムと形態条件の推定

*井原 貴之1城野 信一1 (1.名古屋大学)

キーワード:球状炭酸塩コンクリーション

地層中において特定の物質が沈殿し、それが濃集した団塊をコンクリーションという。火星探査機オポチュニティによりメリディアニ平原でコンクリーションが発見された。火星で発見されたコンクリーションはブルーベリーと呼ばれ、球状で組成は酸化鉄が主体となっている。それによく似たコンクリーションがアメリカのユタ州ナバホ砂岩層、モンゴルのゴビ砂漠で発見されている。それらは鉄コンクリーションと呼ばれている。鉄コンクリーションとブルーベリーはともに酸化鉄の球殻の構造を持っており、非常に似ている。[1]はユタとゴビの鉄コンクリーションの形成メカニズムを調べるためにフィールドワークおよび元素マップの解析を行った。その結果、次のような球状鉄コンクリーションの形成メカニズムを[1]は示した。まず先駆物質として地層中に球状炭酸塩コンクリーションが何らかのメカニズムで形成される。次に鉄イオンが含まれている酸性地下水がそこに流れ込んで、炭酸カルシウムと反応し、球殻状に鉄が沈殿する。さらに火星の鉄コンクリーションも同様のメカニズムではないかと[1]は示した。しかし先駆物質となる球状炭酸塩コンクリーションの形成メカニズムは分かっていない。その形成メカニズムを明らかにすることが出来れば地球と火星の古環境に制約を与えることができる。

 球状炭酸塩コンクリーションは風成層で形成される。風成層の炭酸塩コンクリーションは球状、板状、魚卵状(球状が集まったような状態)といった3つの形態で産出される。その形成メカニズムおよび形成条件を室内実験で明らかにすることを目的とする。今回は現状の実験および解析報告をする。ユタ州で採集した砂に炭酸カルシウムを蒸発により析出させる。その際、炭酸カルシウム水溶液の溶解度を大きくするため、溶媒にCO2を吹き込む。そうすることで溶媒中にCa(HCO3)2を作る。それを蒸発させることで砂の層中にCaCO3を析出させコンクリーションを生成する。砂の平均粒径は150μmである(Kawakami 2015)。 地球で発見されているコンクリーションの最小の大きさは直径数mmであり[2]、その大きさの作成を目標に実験を行っている。 パラメーターとしてCaCO3濃度と蒸発速度を変化させている。実験でできた層中の炭酸カルシウムを解析するためにX線CTを用いる。X線CT画像で炭酸カルシウムと砂を判別できるか調べるために砂層中に炭酸カルシウムが沈殿した場合の模擬実験を行った。ユタ州ナバホ砂岩層の砂岩を乳鉢で砂の状態にしたもの数gと炭酸カルシウム数mgの塊を混ぜ、模擬試料を作成した。X線CT実験の結果、解像度0.019mm/pixelで大きさ0.50mmの炭酸カルシウム塊が判別可能である事を確認した。炭酸カルシウムと砂は密度が近い値なので、炭酸カルシウムが砂の平均粒径150μmより十分な大きさでないと判別出来ない事も分かった。

 今後は、実験で作成した試料を解析するとともに、実験のパラメーターをCaCO3濃度、蒸発速度だけでなく砂の充填率を加え様々な条件で実験を行おうと考えている。そうすることで、風成層における炭酸塩カルシウムコンクリーションの形成メカニズムと形態条件を推定できる。


[1] Yoshida et al.(2018) Science Advances Vol.4, no.12;[2]Sally Latham Potter.2009 Chracteization of navajo sandstone hydrous ferric oxide concretions