09:30 〜 09:45
[MIS19-19] 二枚貝イタヤガイ殻のLi/Ca比と日輪解析から推定される植物プランクトンの季節変動
キーワード:Li/Ca、イタヤガイ、日輪、季節変動、プランクトンブルーム
化石イタヤガイ科二枚貝を古環境復元のためのモデル古生物として確立するため,土佐湾産現生イタヤガイPecten albicansの殻の微細成長特性と環境要因との関連を検討した.今回は,LA-ICP-MSによる現生イタヤガイ殻の元素プロファイル,特にLi/Ca比と殻成長との関連に注目し,それらと土佐湾での実測水温等のデータ(広田・市川,2012)との照合を行った.分析した標本は,2011年4月29日に土佐湾で採取されたイタヤガイ(KSG-th001)の左殻で,前年の2010年に成長した部分を中心として,日輪と考えられる微細共縁状ラメラの幅を計測し,Li等の微量元素プロファイルを得た.元素プロファイルは,日輪解析に基づき,時系列変動に転換し,さらに酸素同位体分析に基づき,季節変動を考察した.
その結果,分析個体のイタヤガイは2010年の春から夏にかけて水温の上昇期によく成長したが,9月から10月にかけての高水温期には殻成長は鈍化し,秋の高水温期から冬の低水温期にかけては成長が停滞したことが分かった.この成長停滞期は褐色を呈する左殻表面の年輪(白色バンド)と一致する.ただし,春の高成長期(50日間弱)と夏の高成長期(約20日間)の間にも明瞭な殻成長の停滞期が認められたが,これは同位体水温の低下期にあたる.この時期に推定される水温低下は,土佐湾亜表層における観測データと符合する.
このような殻の微細成長変動パタンはLi/Ca比の変動パタンと明らかな関連を示しており,クロロフィルaの変動とも調和することが分かった.Liは餌となる珪藻の細胞壁に多く含まれていることから,ヨーロッパに分布するPecten maximusのLi/Ca比はプランクトンブルームの時期および規模の指標となる可能性が指摘されている(Thébault & Chauvaud,2013).本研究の結果,日本周辺に分布するイタヤガイにおいても殻成長とLi/Ca比は強く関連しており,殻のLi/Ca比がプランクトンブルームの指標として有用であることが確かめられた.
本研究は高知大学海洋コア総合研究センター共同利用・共同研究(採択番号18B060)のもとで実施された.
その結果,分析個体のイタヤガイは2010年の春から夏にかけて水温の上昇期によく成長したが,9月から10月にかけての高水温期には殻成長は鈍化し,秋の高水温期から冬の低水温期にかけては成長が停滞したことが分かった.この成長停滞期は褐色を呈する左殻表面の年輪(白色バンド)と一致する.ただし,春の高成長期(50日間弱)と夏の高成長期(約20日間)の間にも明瞭な殻成長の停滞期が認められたが,これは同位体水温の低下期にあたる.この時期に推定される水温低下は,土佐湾亜表層における観測データと符合する.
このような殻の微細成長変動パタンはLi/Ca比の変動パタンと明らかな関連を示しており,クロロフィルaの変動とも調和することが分かった.Liは餌となる珪藻の細胞壁に多く含まれていることから,ヨーロッパに分布するPecten maximusのLi/Ca比はプランクトンブルームの時期および規模の指標となる可能性が指摘されている(Thébault & Chauvaud,2013).本研究の結果,日本周辺に分布するイタヤガイにおいても殻成長とLi/Ca比は強く関連しており,殻のLi/Ca比がプランクトンブルームの指標として有用であることが確かめられた.
本研究は高知大学海洋コア総合研究センター共同利用・共同研究(採択番号18B060)のもとで実施された.