10:15 〜 10:30
[MIS20-06] 梓川上流,上高地谷の徳沢-明神間における10年間の河道地形変化と植生変動
★招待講演
キーワード:河床、地形変化、植生変動、網状河道、梓川、日本アルプス
槍ヶ岳を源流に持つ梓川の上流,上高地谷は山岳地域にもかかわらず幅の広い谷底平野が形成されている.梓川は複列砂礫堆を持つ礫床網状河川となっている.河道内にはケショウヤナギやエゾヤナギのパッチ状群落が立地している.上高地自然史研究会では人工的な地形変化や攪乱の少ない徳沢-明神間の梓川河道に継続観察地を設定し,25年以上にわたって地形変化と植生変動を記録してきた.本発表では,発表者が測量を行った最近10年間について,河道地形変化とヤナギ群落の消長の関係についての検討結果を報告する.
2008年以降,2009年,2010年,2011年,2013年,2017年,2018年に河道内の流路の位置が変化した.2009年を除くこれらの年には梅雨期間内に日降水量110mmを超える大雨が観測され,2009年には連続降雨の中,3日間降水量が170mmを超える降雨が続いた.インターバル撮影カメラを用いた観察によると,梅雨時期には降雨開始から2時間以内に急激に水位が上昇することがわかっている.また,梅雨期以外の大雨では同程度の降水量でも増水の規模がかなり小さいこともわかっている.
地形変化後の流路の横断形状,砂礫堆上の植生の観察から,流路は横方向に徐々に移動するのではなく,それ以前の流路の埋積と新たな流路の掘削が生じていると考えられる.このため,砂礫堆上の植生は,多少の埋没は起こるとしても,新たな流路の形成がない限り生き残り,生長を続ける.一方,流路の側方侵食がわずかに起こるため,パッチ状群落の一部が侵食されることもある.この10年間には溝状地形の中で発芽したケショウヤナギ群落が,現在3mを超す高さにまで生長を続けている.また,上高地自然史研究会が調査を始めた1998年頃に一度破壊された群落跡に発芽し,生長したパッチ状群落は,側方侵食によって徐々に幅が縮小しているが,樹高20mに達する群落となっている.河道中央部に立つ数本の大径木からなる群落で最初の測量である1994年から現在まで残存しているものもある一方で,2017年,2018年の増水時の地形変化により流失したものもある.
このように,上高地梓川の河道では数年に1回の梅雨時期の豪雨にともなう増水によって,流路の埋積と新たな流路の掘削が起こり,大きく地形変化が起こるが,そのなかで先駆植物であるケショウヤナギの新たな群落が形成され,侵食で部分的には失われながらも,大径木となるまで残存して,独特の山岳河川景観をつくり出してきた.
2008年以降,2009年,2010年,2011年,2013年,2017年,2018年に河道内の流路の位置が変化した.2009年を除くこれらの年には梅雨期間内に日降水量110mmを超える大雨が観測され,2009年には連続降雨の中,3日間降水量が170mmを超える降雨が続いた.インターバル撮影カメラを用いた観察によると,梅雨時期には降雨開始から2時間以内に急激に水位が上昇することがわかっている.また,梅雨期以外の大雨では同程度の降水量でも増水の規模がかなり小さいこともわかっている.
地形変化後の流路の横断形状,砂礫堆上の植生の観察から,流路は横方向に徐々に移動するのではなく,それ以前の流路の埋積と新たな流路の掘削が生じていると考えられる.このため,砂礫堆上の植生は,多少の埋没は起こるとしても,新たな流路の形成がない限り生き残り,生長を続ける.一方,流路の側方侵食がわずかに起こるため,パッチ状群落の一部が侵食されることもある.この10年間には溝状地形の中で発芽したケショウヤナギ群落が,現在3mを超す高さにまで生長を続けている.また,上高地自然史研究会が調査を始めた1998年頃に一度破壊された群落跡に発芽し,生長したパッチ状群落は,側方侵食によって徐々に幅が縮小しているが,樹高20mに達する群落となっている.河道中央部に立つ数本の大径木からなる群落で最初の測量である1994年から現在まで残存しているものもある一方で,2017年,2018年の増水時の地形変化により流失したものもある.
このように,上高地梓川の河道では数年に1回の梅雨時期の豪雨にともなう増水によって,流路の埋積と新たな流路の掘削が起こり,大きく地形変化が起こるが,そのなかで先駆植物であるケショウヤナギの新たな群落が形成され,侵食で部分的には失われながらも,大径木となるまで残存して,独特の山岳河川景観をつくり出してきた.