日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] 惑星火山学

2019年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 106 (1F)

コンビーナ:野口 里奈(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、片岡 香子(新潟大学災害・復興科学研究所)、大槻 静香(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:野口 里奈(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、下司 信夫(産総研 活断層・火山研究部門)

09:00 〜 09:15

[MIS23-01] 隔絶された火山島,西之島の成長と進化

★招待講演

*前野 深1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:火山島、西之島、遠隔観測、上陸調査

海洋島が誕生し成長していく過程は,新たな陸地の創生,新たな陸上生命活動の場の創生という点で,地球科学的に興味深い現象である。西之島は,このような海洋島の誕生,形成,進化のプロセスを様々な研究分野の視点から追跡できる地球上でもまれな場所といえる。一方,浅海での噴火は海域ハザードの要因となるため,調査・観測手法やリスク評価手法の確立も重要な課題となる。西之島は,小笠原諸島父島から西に130 kmの絶海の孤島と呼ぶにふさわしい場所に存在する。2013年11月,海底噴火が起こり新たな島が誕生し,その後の活動でもとの島を飲み込み大きく成長していった。2013年から2018年の西之島の一連の噴火活動は,新たな火山島の誕生とその成長プロセスについて様々な貴重なデータを提供するととともに,離島火山の調査・観測の実践の場としても重要な舞台となった。西之島の噴火活動は,2013年11月−2015年12月(第1期),2017年4月−8月(第2期),2018年7月(第3期)に分けられるが,この間,西之島の活動を理解するためにさまざまな調査・観測が行われた。噴火開始直後は,遠隔からの観察データが唯一の情報源であり,高分解能人工衛星画像の解析や,上空からの直接観察をもとに,西之島の表面地形や形態の変化,面積・噴出量・噴出率の変化に注目して,その成長過程を追跡した。その後,2015年末の活動低下を受けて,2016年10月には火山活動と生物相の総合的調査が実施された。この調査では,新しい西之島への外来種持ち込みのリスクを最小限に抑えるために,地球科学と生態系の研究者が相互に協力して上陸調査が実施され,初めて島内から直接溶岩試料が採取され,地震計,空振計も設置された。西之島は2017年,2018年に活動が再び活発化しさらに成長を続けた後,2018年7月末にようやく活動を沈静化し,現在に至る。2016年以降の調査では,ドローンや無人ヘリを活用した遠隔からの調査が行われ,新しい溶岩流や火口地形の画像・映像の撮影,噴出物採取,生態系モニタリング用ロガーの設置・回収,空中磁気測量などが行われ,西之島の活動と進化の理解を進める成果が得られつつある。このようなアクセスが困難かつ原初生態系保護の視点も必要な,絶海の西之島での調査・観測には,他天体表層探査との共通項があるかもしれない。本発表では,惑星火山学との接点に注目しつつ,西之島の成長・進化,火山活動とこれまでに行われた調査の方法や成果について紹介する。