日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS25] 近年の気象災害:要因とその大気水圏・人間圏への影響

2019年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 301A (3F)

コンビーナ:西井 和晃(三重大学大学院生物資源学研究科)、座長:西井 和晃(三重大学)

10:45 〜 11:00

[MIS25-01] 2018年12月8-9日ベトナム中部での豪雨とベトナム水文気象局でのQPE/QPF

★招待講演

*斉藤 和雄1,2,3Le Duc4,3Du Duc Tien5Mai Khanh Hung5 (1.気象業務支援センター、2.東京大学大気海洋研究所、3.気象研究所、4.海洋研究開発機構、5.ベトナム水文気象局水文気象予測センター)

キーワード:豪雨、JICAプロジェクト、QPE/QPF、数値予報、ベトナム

ベトナムでは、毎年のように大きな気象災害が発生しており、その軽減は重要な課題となっている。国際協力機構(JICA)の無償資金協力の一環として、ベトナム北部のハイフォン(フーリエン)及びヴィンの両市にSバンド気象ドップラーレーダーが設置され2017年11月から稼働している。同レーダーの活用を中心として包括的な気象サービスの能力向上を目指して、2018年からJICA有償勘定技術支援「ベトナム国気象予測及び洪水早期警報システム運営能力強化プロジェクト」が始まっており、一般財団法人気象業務支援センターなどが参加している。この業務では、日本の気象庁とも連携して同国における①気象観測機材の保守点検及び校正、②気象観測レーダーデータの解析及び品質管理、③大雨・台風に関する監視・予報業務、④情報伝達、の各能力の向上を目指している。③の活動内容の一つとして、ナウキャスト・短期降水予報について、水文気象セクター開発戦略の実施上の課題の特定及び将来の開発計画についての提言を行うことが挙げられており、同国における降雨ナウキャストおよび数値予報、降水ガイダンスを含む降水予報業務の現状と問題点の把握を始めたところである。
ベトナム水文気象局では国内176ヶ所の有人気象観測所が1日4回(1時、7時、13時、19時)通報する前6時間積算雨量を5km格子に内挿した積算雨量図を作成しているほか、2018年8月からは国内約1000箇所のAWSによる毎時地上降水、上述のSバンドレーダーを含む12か所の気象レーダー、衛星(ひまわり)データからの推定降水量のデータに基づき、前3時間解析雨量の作成を開始している。平均雨量と最大雨量の二種類の解析を行っており、平均雨量では解析格子(5km解像度)内にAWSの観測がある場合はその観測値(複数ある場合はその平均値)を用い、無い場合はレーダー反射率から求めた雨量を用い、レーダーデータが無い場合は衛星(ひまわり8号)のデータから推定した雨量を用いる。最大雨量では、上記3つのデータの内の最大値を用いている。
2018年12月、ベトナム中部ではダナン市で8日午後7時からの24時間に635mmと1975年に統計を取り始めてから最大の雨量が計測される記録的豪雨があった。当日は、解析雨量作成方法の詳細や課題、気象庁全球モデルを含む数値予報の現状と課題などについてポスター発表する。