日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[O-01] ブラタモリの探究-「つたわる科学」のつくりかた

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (2F)

コンビーナ:萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)、座長:尾方 隆幸

14:30 〜 14:45

[O01-04] ブラタモリが可視化する歴史

★招待講演

*松田 法子1 (1.京都府立大学)

キーワード:ブラタモリ、アウトリーチ、都市史、テレビ番組、案内者

講演者は都市史・建築史を専門とする。まちの成り立ちやその展開の歴史を、地理的、建築的、社会的、文化的に検討し、わたしたちの居住地や、他の様々な土地が、いったいどのような背景や経緯によって現在に至っているのかを探っている。またそこから、土地と人とが取り結んできた本質的な関係とその意義を考えようとしている。
さて、「ブラタモリ」では、番組の冒頭近くで、その土地に対するある「お題」(設問)が示される。それは一見平易な内容で、出演者や視聴者は、その設問に納得したり、そんなことはもうわかっているよ、と思ったり、あるいはまた少々戸惑ったりしながら、番組の道のりを楽しく想像する。
しかし問いに的確に答えていくことは、専門家をもってしても実はかなり難しい。それは既に、多岐にわたる学術分野の知見を制作チームが吸収したうえで、かつ誰もがその土地のイメージとして理解できるようなフレーズとする、という絶妙なバランスによって練られたテーマだからだ。
その後に続くまち(土地)歩きは、そのお題を軸に組み立てられていく。複数分野の専門家がリレー式にバトンをつなぎながら土地の解読に付き添うスタイルは、土地を見る視点の複数性と幅広さを担保する。そして、歩きながら答えを見つけていくこのやり方は、都市や山岳、巨大土木構築物などスケールの大きな対象や長い時間の流れを、手元や足元といった身体的で小さなスケールから体感的に理解していくという、フィールドサーヴェイの醍醐味も具現化している。
そうした一方で、TVプログラムであるという媒体の特性上、問いの答え探しの道のりやそのストーリー立ては、視覚的に認識しやすい資史料や場所がつながれやすいという側面ももっている。歴史分野で言えば、絵図や古文書、古写真、現場の遺構などは大いに力を発揮するが、目で見てわかりにくい事物や、土地の歴史を語る上では重要であるものの、前提として込み入った解説が必要な事項は通過されがちになるだろう。以上について、講演者の知る範囲に限り若干の話題提供を行う予定である。