日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-02] 地球・惑星科学トップセミナー

2019年5月26日(日) 10:15 〜 11:25 国際会議室 (2F)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻地質・地球生物学講座岩石鉱物学研究室)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、座長:山田 耕

10:50 〜 11:25

[O02-02] 超高圧実験で見る地球中心核(コア)

★招待講演

*廣瀬 敬1,2 (1.東京工業大学大学 地球生命研究所、2.東京大学 理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:コア、高圧、地球深部

地球の内部は高圧と高温の世界である。地球中心は364万気圧と5000ケルビン程度もの超高圧・超高温下にあるとされる。このような極限環境も、ダイヤモンド・アンビル・セル(DAC)と呼ばれる装置を使えば、実験室で実現することが可能である。つまり、地球内部にあるすべての物質は合成可能である。

DACでは、単結晶のダイヤモンドを使って試料を加圧したのち、多くの場合、近赤外線レーザーを照射することによって、試料を高圧と高温状態にする。衝撃圧縮法を用いたダイナミックな実験と異なり、これは静的な圧縮実験である。例えば地球中心核(コア)とマントルの境界に相当する136万気圧・4000ケルビンの場合、超高圧・高温の発生領域は直径10ミクロン・厚み5ミクロン程度にすぎない。合成される高圧鉱物の粒径は通常100ナノ以下である。しかしながら、近年の放射光X線や電子顕微鏡の利用技術の進展により、微細試料の観察や分析は問題にはならなくなりつつある。

このような超高圧実験によって、地球コアの現在の姿のみならず、その形成から進化に関する理解が急速に進みつつある。金属コアの形成、つまりシリケイトからの分離は、地球がマグマオーシャンに覆われていた時代のこととされる。つまり、コアはもっとも古い地質記録と言えよう。その記録を調べることで、マグマオーシャンの状態・コア形成のメカニズム・地球全体の水や揮発性成分の量・それらが地球へ運ばれて来たタイミングなどをひも解くことができる。

また、現在の地球の深部(下部マントルやコア)には、その成因が解明されていない「異常」がいくつも観測される。現在も働いているメカニズム、例えばプレートの沈み込みでは、異常が必ずしもうまく説明できない場合が多い。代わりに、これらの異常はジャイアントインパクト・マグマオーシャン・コア分離など、地球初期の一連の大イベントに関連して形成されたのかもしれない。最近の私たちの実験結果によれば、液体コア(外核)は、冷却に伴って固体SiO2やシリケイトメルトを析出し、その化学組成を大きく変化させてきたらしい。同時に、これらコアの化学進化の副産物は、コア最上部やマントルにさまざまな「異常」をもたらした可能性がある。プルームマグマ中に観測される同位体比異常もコアに由来しているのかもしれない。

当日は、超高圧実験のイロハから、地球深部の研究の最先端まで、わかりやすく紹介します。