13:45 〜 15:15
[O03-P45] 火山灰を含む地層の花粉分析に基づく植生変遷及び噴火年代の研究
キーワード:火山灰、花粉
Ⅰ 研究概要
伊豆半島の古環境復元に繋がる研究は多いが、我々は地層中に多く含まれる火山灰に注目した。
伊豆半島の地層は、ローム層などの層とさまざま火山灰層で構成されている。火山灰層は年代既知であるため、隣接するローム層の年代を把握することができる。ローム層には当時生息していた植物の花粉が存在しており、種別の花粉存在割合は当時の植生を反映しているといえる。したがって、花粉調査によって当時の植生を推定することができる。年代と植生のデータを組み合わせることにより、当時の植生変遷や気候変動の推測や、地層に火山灰を積もらせた火山の噴火年代の妥当性の検討をすることが可能である。
Ⅱ 研究方法
1つの地層から深度別に非火山灰層をサンプリングし、近隣の火山灰層から年代を推定。花粉抽出法を用いて各サンプルから花粉を抽出。抽出した花粉の種を同定して種別にカウントして割合を計算し、当時の植生のデータとする。そのデータを基に、当時の植生変遷や気候変動、噴火年代の妥当性についての考察をする。
Ⅲ 調査地点1 鉢窪山での調査
鉢窪山は浄蓮の滝付近に位置する火山で、山頂のすり鉢状の火口、その中に存在する湿地、表面の泥炭層の存在から、他の山の火山灰や飛んできた花粉が堆積しやすい点でサンプリングにおいて都合が良いと考えたため、鉢窪山の山頂から地層サンプルを採取した。
サンプルを花粉抽出法(参考:大分県立日田高等学校科学部の研究)で処理し観察したが花粉は少ししか観察されなかった。その後の採集で地層から人工物が発見されたため、人の手による地層撹乱の可能性が浮上し、研究の正確性を考え鉢窪山での調査を断念した。
Ⅳ 調査地点2 伊豆の国市大仁田原野の崖での調査と分析方法の改良
次の調査先として、伊豆の国市大仁の田原野にある崖を選んだ。時代範囲が広いので明確な植生変遷の期待が高いこと、火山灰層以外の層は日本で一般的なローム層であり花粉数の期待は鉢窪山山頂よりは低いがここからの花粉抽出に成功すれば調査可能な範囲が広がる事が利点である。ローム層を10 cm 毎に計18 区画をサンプリングした。不純物を取り除き、より多くの花 粉を観察するため、独自に改良した花粉抽出法を用いた。主な改良点は、遠心分離での回転速度と回転時間を増やしたことと、危険なフェノールの使用をやめて作業の安全性を向上させたことである。鉢窪山の時に比べ非常に見やすく花粉量も十分であるプレパラートの作成に成功した。この抽出法で鉢窪山泥炭層を処理したところ大量の花粉が観察されたので改良の正当性が示された。同定には日本産花粉図鑑に加え、花粉分類名検索(http://pollen-5.sakura.ne.jp/bunruimeikensaku.html)の情報も用いた。
Ⅴ 結果
主に観察された花粉はスダジイ、ネコヤナギ、イチョウであった。
スダジイは新潟福島以南に分布している。12.5万年前の噴火以降消滅したが、10.3万年前の噴火以降に復活した。ネコヤナギは北海道~九州に分布している。全区画で生息が確認された。
イチョウは年平均気温0~20 ℃の範囲に生息している。最初は生息していなかったが、12.4万年前から現れて割合を増やした。
Ⅵ 考察
割合変動から、「12.5万年前の噴火以降、現在の東北北部~北海道南部並に気温が下がり、10.3万年前の噴火あたりで気温が上がった。」と考察できた。南極の氷床解析から導き出された気温変動データと比較したところ、この考察は一致していた。
詳しく気温変動を見ていくため、全区画の分析を行っている。その際、同定における判断の個人差を小さくするため判断基準の一致を徹底した。
伊豆半島の古環境復元に繋がる研究は多いが、我々は地層中に多く含まれる火山灰に注目した。
伊豆半島の地層は、ローム層などの層とさまざま火山灰層で構成されている。火山灰層は年代既知であるため、隣接するローム層の年代を把握することができる。ローム層には当時生息していた植物の花粉が存在しており、種別の花粉存在割合は当時の植生を反映しているといえる。したがって、花粉調査によって当時の植生を推定することができる。年代と植生のデータを組み合わせることにより、当時の植生変遷や気候変動の推測や、地層に火山灰を積もらせた火山の噴火年代の妥当性の検討をすることが可能である。
Ⅱ 研究方法
1つの地層から深度別に非火山灰層をサンプリングし、近隣の火山灰層から年代を推定。花粉抽出法を用いて各サンプルから花粉を抽出。抽出した花粉の種を同定して種別にカウントして割合を計算し、当時の植生のデータとする。そのデータを基に、当時の植生変遷や気候変動、噴火年代の妥当性についての考察をする。
Ⅲ 調査地点1 鉢窪山での調査
鉢窪山は浄蓮の滝付近に位置する火山で、山頂のすり鉢状の火口、その中に存在する湿地、表面の泥炭層の存在から、他の山の火山灰や飛んできた花粉が堆積しやすい点でサンプリングにおいて都合が良いと考えたため、鉢窪山の山頂から地層サンプルを採取した。
サンプルを花粉抽出法(参考:大分県立日田高等学校科学部の研究)で処理し観察したが花粉は少ししか観察されなかった。その後の採集で地層から人工物が発見されたため、人の手による地層撹乱の可能性が浮上し、研究の正確性を考え鉢窪山での調査を断念した。
Ⅳ 調査地点2 伊豆の国市大仁田原野の崖での調査と分析方法の改良
次の調査先として、伊豆の国市大仁の田原野にある崖を選んだ。時代範囲が広いので明確な植生変遷の期待が高いこと、火山灰層以外の層は日本で一般的なローム層であり花粉数の期待は鉢窪山山頂よりは低いがここからの花粉抽出に成功すれば調査可能な範囲が広がる事が利点である。ローム層を10 cm 毎に計18 区画をサンプリングした。不純物を取り除き、より多くの花 粉を観察するため、独自に改良した花粉抽出法を用いた。主な改良点は、遠心分離での回転速度と回転時間を増やしたことと、危険なフェノールの使用をやめて作業の安全性を向上させたことである。鉢窪山の時に比べ非常に見やすく花粉量も十分であるプレパラートの作成に成功した。この抽出法で鉢窪山泥炭層を処理したところ大量の花粉が観察されたので改良の正当性が示された。同定には日本産花粉図鑑に加え、花粉分類名検索(http://pollen-5.sakura.ne.jp/bunruimeikensaku.html)の情報も用いた。
Ⅴ 結果
主に観察された花粉はスダジイ、ネコヤナギ、イチョウであった。
スダジイは新潟福島以南に分布している。12.5万年前の噴火以降消滅したが、10.3万年前の噴火以降に復活した。ネコヤナギは北海道~九州に分布している。全区画で生息が確認された。
イチョウは年平均気温0~20 ℃の範囲に生息している。最初は生息していなかったが、12.4万年前から現れて割合を増やした。
Ⅵ 考察
割合変動から、「12.5万年前の噴火以降、現在の東北北部~北海道南部並に気温が下がり、10.3万年前の噴火あたりで気温が上がった。」と考察できた。南極の氷床解析から導き出された気温変動データと比較したところ、この考察は一致していた。
詳しく気温変動を見ていくため、全区画の分析を行っている。その際、同定における判断の個人差を小さくするため判断基準の一致を徹底した。