日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-AE 天文学・太陽系外天体

[P-AE20] 系外惑星

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:生駒 大洋(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、成田 憲保(東京大学)

[PAE20-P09] IRSF/SIRIUSによるTESS惑星候補のフォローアップ観測

*森 万由子1成田 憲保1,2de Leon Jerome1西海 拓3福井 暁彦1田村 元秀1,2日下部 展彦2森鼻 久美子4 (1.東京大学、2.アストロバイオロジーセンター、3.京都産業大学、4.名古屋大学)

キーワード:TESS、トランジット、測光、近赤外線、観測

トランジット系外惑星探索衛星(TESS) のフォローアッププログラム(TFOP) の一環として、南アフリカ共和国にある1.4m望遠鏡IRSFを使った惑星候補トランジットの赤外多色測光観測を行った。
TESSは惑星候補を数千個みつけると推測されているが、その中には、食連星等による偽検出が多数紛れ込む[1]。これらを見分けるために地上望遠鏡によるフォローアップ 観測が重要である。IRSFと、搭載された近赤外撮像カメラSIRIUSは、フォローアップ観測に適した装置である。
IRSF/SIRIUS を用いると、TESS に比べて高い空間分解能(0.453arcsec/pix) により、TESS の測光アパーチャー内に複数の星がある場合にそれぞれのライトカーブを描き、明るさの変化を起こしているターゲットを絞れる他、赤外領域のJ、H、Ks バンドで同時測光することにより、トランジットの深さの波長依存性から、食連星による偽検出を排除することに役立つ。しかし、本来IRSF/SIRIUS はトランジット用の装置ではないため、得られた観測データから、トランジット解析用のデータや図に変換するための測光解析パイプラインを作成する必要があった。
我々の作成したパイプラインでは、視野内の検出可能なすべての星に関して測光を実行し、バンドごとのライトカーブを短い手順で作ることができる。それぞれの星とターゲットとの視距離・等級差も出力し、これは食連星の排除の計算に役立つ。また、トランジットによる星の明るさの変化と、その他の装置的な要因による変化の相関を判定し、簡単な一次モデルでフィットできるようになっている。このパイプラインにより効率的に解析を行えるようになり、観測後数日のうちに、求められるデータや図をTFOP チームに送ることができるようになった。
観測は2018年10月から11月 にかけて行い、TESS の最初の観測領域であるセクター1, 2 で発見された35 個の惑星候補に対し、延べ45 回のトランジットを観測した。その結果、TOI 125, TOI 142, TOI 157, TOI 174, TOI 178, TOI 179, TOI 193, TOI 212 の計8個の惑星候補についてその観測結果をTFOPチームに報告し、食連星の排除と惑星の発見確認に貢献した。
この中でもTOI 125について、IRSF/SIRIUSでの観測が食連星の排除に大きな貢献を果たした。TFOPチームにより、K型星であるTOI 125のまわりには2つのsub-Neptuneサイズの惑星(2.76R_\oplus, 2.79R_\oplus)の存在が確認され、さらに3つ惑星候補が存在していることも分かった。この系は、惑星cとbの公転周期の比がわずかに2:1よりも小さいことが分かっており、力学的に興味深い系である。
ポスターでは、IRSF/SIRIUSでのTESSフォローアップ観測について、作成したパイプラインの詳細と、それにより得られた観測成果について紹介する。
[1] Sullivan et al.(2015), ApJ, 809, 77