日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM15] 太陽地球系結合過程の研究基盤形成

2019年5月30日(木) 10:45 〜 12:15 A01 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:山本 衛(京都大学生存圏研究所)、小川 泰信(国立極地研究所)、野澤 悟徳(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、吉川 顕正(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:野澤 悟徳

12:00 〜 12:15

[PEM15-11] 南極昭和基地大型大気レーダー(39.6°E, 69.0°S)による適応的信号処理を用いた電離圏非干渉性散乱と沿磁力線不均一の同時観測

*橋本 大志1齊藤 昭則2西村 耕司3堤 雅基3佐藤 薫4佐藤 亨1 (1.京都大学大学院情報学研究科、2.京都大学大学院理学研究科、3.国立極地研究所、4.東京大学大学院理学研究科)

キーワード:PANSY、電離圏非干渉性散乱、適当的信号処理、沿磁力線不均一、南極昭和基地、ISレーダー

PANSYレーダーは南極昭和基地に設置された大型のVHF帯大気レーダーである。本レーダーは対流圏・成層圏・中間圏の観測を行うMSTレーダーとしての機能に加え、電離圏非干渉性散乱(IS)を用いて地表100㎞から500㎞にかけてのプラズマ物理量を観測することが可能であり、2015年に南極では初となる電離圏IS観測に成功した。

PANSYレーダーの電離圏観測が既存のより高い周波数を用いるISレーダーとは異なる点として、E層の沿磁力線不均一(FAI)エコーによる干渉が挙げられる。すなわち極域でVHF帯を用いる場合、地磁気の磁力線と電波の進行方向が直交条件を満たす高度は地表100㎞付近となるが、レーダーからの直線距離はF層においてISエコーが観測される高度と等しくなるため、強くコヒーレントなFAIエコーによる干渉が発生する。

このFAIエコーの混入によるPANSYレーダーのIS観測への影響に対処するため、我々は適応的ビーム形成技術を用いた信号処理法を開発した[1]。PANSYレーダーには三素子八木アンテナを12本ずつ直線状に配置したアレイアンテナが2組あり、方向拘束付き出力電力最小化法に基づく手法を用いて異なる角度からの信号を分離できる。すなわち、提案手法により背景の電子密度を精度良く観測できるだけでなく、FAIの構造や運動を同時に観測することが可能となる。

この発表では、PANSYレーダーの電離圏観測における信号処理法について概観する。また、ISとFAIの同時観測について、適応的信号処理によるFAIのイメージングなどを含む最新の成果を報告する。

[1] Hashimoto et al., 2018: “First incoherent scatter measurements and adaptive suppression of field-aligned irregularities by the PANSY radar at Syowa Station, Antarctic”, J. Atmos. Oceanic Technol., conditional acceptance.