日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、中村 匡(福井県立大学)、座長:中村 匡(福井県立大学)、成行 泰裕

16:15 〜 16:30

[PEM17-10] ピッチ角異方性を伴った衝撃波遷移層における統計的ドリフト加速のモデリング

*加藤 拓馬1天野 孝伸1 (1.東京大学)

キーワード:粒子加速、地球、衝撃波

非熱的電子の加速機構の解明は宇宙空間物理における重要な課題の一つである。地球バウ・ショックにおいて非熱的な電子が、稀ではあるが人工衛星によって観測されている(e.g., Gostling et al. 1989)。これらの電子は、およそ1keV から100keV までのエネルギーを持ち、その分布はベキ型であることがわかっている。しかし、この分布を自然に説明するような加速モデルは未だに提唱されていない。また最近の衛星観測によると、非熱的電子が観測されるイベントにおいて、衝撃波遷移層における電子とホイッスラー波の共鳴が検出されている(Oka et.al. 2017)。これは、地球バウ・ショックにおける電子加速にこの共鳴が重要な役割を果たしている可能性を示唆している。
これらの結果を説明するために、我々は新しい電子加速モデルである統計的電子加速を提唱した。統計的衝撃波ドリフト加速は、既存の加速モデルである衝撃波ドリフト加速(Wu 1984, Leroy and Mangeney 1984)にピッチ角散乱を取り入れたモデルであり、散乱の導入によって電子の加速効率を向上させることができる。このモデルに関する理論的な解析の結果、電子のエネルギースペクトルは、散乱が強く電子分布が等方的とみなせる場合には観測と整合するベキ型になるという結果が得られた。また統計的ドリフト加速による電子の最大エネルギーが、ピッチ角散乱の強度を表すピッチ角散乱係数に比例することが示された。これまでの研究では、有効的な衝撃波速度u/cosθ (uは衝撃波速度、θは衝撃波角)が非相対論的であり、電子のピッチ角分布を等方であることを仮定していた。しかしパラメーターの制約が強い粒子シミュレーションにおいては、この有効的な衝撃波速度が容易に相対論的になってしまう。有効的な衝撃波速度が光速に近づくと、ピッチ角分布の等方性が崩れることが知られていて、そのため粒子シミュレーションと従来の理論との間で比較を行うことができなかった。そこで我々はこれまで構築した統計的ドリフト加速の理論を、電子のピッチ角異方性を考慮し、有効的な衝撃波速度が相対論的な場合にも適用できる形に拡張する。本発表では、拡張した理論とPICシミュレーションの結果を比較し、その整合性を議論する。