11:30 〜 11:45
[PPS03-04] サイズ分布をもつガラスビーズ層へのクレーター形成実験:小惑星Ryuguのクレーター形成過程の解明
キーワード:クレーター形成過程、小惑星、岩塊、サイズ頻度分布、クレータースケール則
探査機はやぶさ2によって,小惑星Ryugu上には直径100mオーダーの巨大衝突クレーターは観察されているが,数m以下の衝突クレーターが非常に少ないことがわかっている.この原因の1つに,小さなクレーターが形成されない表面環境をRyuguが持っているということが挙げられる.Ryuguの表面は,ほぼ全ての領域において,岩石物質の衝突破壊実験で得られる衝突破片に似たベキ乗のサイズ頻度分布を持つ岩塊で覆われている[1] このような表層に衝突が起こった場合,衝突体である小天体がそれよりも大きなサイズの岩塊に衝突すると,その岩塊が破壊され,クレーターが形成されにくくなることが考えられる.弾丸より大きなサイズの標的粒子を用いた先行研究はいくつかあり,弾丸と標的粒子のサイズ比が大きくなるほど,クレーターサイズが小さくなることが報告されている[e.g., 2].しかし,Ryuguを始めとした小惑星上の岩塊サイズ頻度分布を持つ標的を用いたクレーター実験の例はない.そこで本研究では,サイズ頻度分布をもつ粒子層に対するクレーター形成実験を行い,粒子層のサイズ頻度分布とクレーターサイズの関係を調べ,クレーター形成効率が低下する条件を明らかにした.
実験は,神戸大学に設置された縦型一段式軽ガス銃と,宇宙科学研究所に設置された縦型二段式軽ガス銃を用いた.標的には直径0.1, 1, 3, 10 mmのガラスビーズを用いて,2種類の単一ビーズ層(0.1 mmと3 mm)と2種類の混合ビーズ層(0.1-10 mmの4種混合と1-10 mmの3種混合)を用意した.宇宙科学研究所で行った実験は4種混合のみ用いた.混合ビーズ層の各ビーズの質量は等量である.神戸大学では直径2 mmまたは3 mmの鉄球を弾丸とし,衝突速度は53〜181 m/sとした.宇宙科学研究所では直径1 mmのアルミ球を弾丸とし,衝突速度は1.2〜4.4 km/sとした.衝突の様子は高速カメラで撮影し,弾丸の跳ね返りやビーズが飛散する様子を観察した.
衝突の様子を調べたところ,単一ビーズ層では弾丸が標的ビーズより大きい場合(0.1 mm)は,円錐形に放射状のエジェクタカーテンが確認された.弾丸が標的ビーズより小さい場合(3mm)は,無傷のビーズがより低速で噴出する様子が確認された.混合ビーズ層では,4種混合の場合は0.1 mmビーズが他のビーズの隙間を通って,靄状に噴出する様子が確認された.また,両混合層ともにほとんどの場合において,弾丸が跳ね返る様子が確認された.さらに,10 mmビーズに弾丸が衝突した場合,エジェクタの量が極端に少なくなることがわかった.形成されたクレーターを観察したところ,単一ビーズ層は逆円錐形のクレーターが形成され,非常に浅いことがわかった.一方,混合ビーズ層はリムがはっきりと確認できず,クレーター内部には10 mmビーズが多数埋もれているのが確認できた.
このクレーターサイズをノギスで計測し,クレータースケール則に適応した.クレータースケール則は規格化クレーター半径πR(=R(ρ/m)1/3でRはクレーター半径,ρは標的密度,mは弾丸質量)と規格化重力π2(=ga/U2でgは重力加速度,aは弾丸半径,Uは衝突速度)を用いて,πR=a・π2-bと表される.実験の結果,単一0.1 mmビーズ層が最も規格化半径が大きくなり,単一3 mmビーズ層と混合ビーズ層(10 mmビーズに衝突しない場合)が0.1 mmビーズ層に比べて約0.9倍になることがわかった.さらに,混合ビーズ層で弾丸が10 mmビーズに衝突した場合は,約0.7倍になることがわかった.
今回の実験では,単一0.1 mmビーズ層のスケール則(a=0.58, b=0.21)を用いて,他の標的のスケール則を説明する改良型スケール則を構築することができた.今回,弾丸が跳ね返る様子が確認されたことから,弾丸が3 mmビーズまたは10 mmビーズに衝突して運動量が輸送され,3 mmビーズまたは10 mmビーズがより低速で標的に潜り込み,クレーター孔を形成するという仮定を用いて,弾丸の反発係数と運動量保存則を用いたクレーター則を構築した.その結果,3 mmビーズ,10 mmビーズのどちらのビーズに衝突したと仮定した場合でも,反発係数が0.5-1の範囲に本研究の結果が分布することがわかった.
[1] 坂谷他,第2回水惑星学全体会議,神戸大学,2018年12月.[2] Tatsumi & Sugita,Icarus 300, 227-248, 2018.
実験は,神戸大学に設置された縦型一段式軽ガス銃と,宇宙科学研究所に設置された縦型二段式軽ガス銃を用いた.標的には直径0.1, 1, 3, 10 mmのガラスビーズを用いて,2種類の単一ビーズ層(0.1 mmと3 mm)と2種類の混合ビーズ層(0.1-10 mmの4種混合と1-10 mmの3種混合)を用意した.宇宙科学研究所で行った実験は4種混合のみ用いた.混合ビーズ層の各ビーズの質量は等量である.神戸大学では直径2 mmまたは3 mmの鉄球を弾丸とし,衝突速度は53〜181 m/sとした.宇宙科学研究所では直径1 mmのアルミ球を弾丸とし,衝突速度は1.2〜4.4 km/sとした.衝突の様子は高速カメラで撮影し,弾丸の跳ね返りやビーズが飛散する様子を観察した.
衝突の様子を調べたところ,単一ビーズ層では弾丸が標的ビーズより大きい場合(0.1 mm)は,円錐形に放射状のエジェクタカーテンが確認された.弾丸が標的ビーズより小さい場合(3mm)は,無傷のビーズがより低速で噴出する様子が確認された.混合ビーズ層では,4種混合の場合は0.1 mmビーズが他のビーズの隙間を通って,靄状に噴出する様子が確認された.また,両混合層ともにほとんどの場合において,弾丸が跳ね返る様子が確認された.さらに,10 mmビーズに弾丸が衝突した場合,エジェクタの量が極端に少なくなることがわかった.形成されたクレーターを観察したところ,単一ビーズ層は逆円錐形のクレーターが形成され,非常に浅いことがわかった.一方,混合ビーズ層はリムがはっきりと確認できず,クレーター内部には10 mmビーズが多数埋もれているのが確認できた.
このクレーターサイズをノギスで計測し,クレータースケール則に適応した.クレータースケール則は規格化クレーター半径πR(=R(ρ/m)1/3でRはクレーター半径,ρは標的密度,mは弾丸質量)と規格化重力π2(=ga/U2でgは重力加速度,aは弾丸半径,Uは衝突速度)を用いて,πR=a・π2-bと表される.実験の結果,単一0.1 mmビーズ層が最も規格化半径が大きくなり,単一3 mmビーズ層と混合ビーズ層(10 mmビーズに衝突しない場合)が0.1 mmビーズ層に比べて約0.9倍になることがわかった.さらに,混合ビーズ層で弾丸が10 mmビーズに衝突した場合は,約0.7倍になることがわかった.
今回の実験では,単一0.1 mmビーズ層のスケール則(a=0.58, b=0.21)を用いて,他の標的のスケール則を説明する改良型スケール則を構築することができた.今回,弾丸が跳ね返る様子が確認されたことから,弾丸が3 mmビーズまたは10 mmビーズに衝突して運動量が輸送され,3 mmビーズまたは10 mmビーズがより低速で標的に潜り込み,クレーター孔を形成するという仮定を用いて,弾丸の反発係数と運動量保存則を用いたクレーター則を構築した.その結果,3 mmビーズ,10 mmビーズのどちらのビーズに衝突したと仮定した場合でも,反発係数が0.5-1の範囲に本研究の結果が分布することがわかった.
[1] 坂谷他,第2回水惑星学全体会議,神戸大学,2018年12月.[2] Tatsumi & Sugita,Icarus 300, 227-248, 2018.