15:45 〜 16:00
[PPS03-14] 小惑星162173リュウグウのクレーターと赤道バルジの地形
キーワード:はやぶさ2、クレーター、赤道バルジ、地形、リュウグウ
2018年10月30日に行われた高度6 kmでのスキャン観測により,小惑星リュウグウの赤道帯(北緯20度から南緯40度,東経170度から東経120度まで)の詳細な地形データが得られた.この詳細地形データにはウラシマ,コロボック,ブラボーの3つの大クレーターが含まれている.また赤道リッジの大部分をカバーしている.ウラシマ,コロボック,ブラボークレーターについては,7-9月に取得された高度20 kmからの高空間分解能の地形データもあるが,測線が東西方向のみであり,緯度範囲も限定的であったため,10月30日スキャン観測によって,はじめて2次元的な地形データを取得する事ができた.
ウラシマクレーターの中心を横切る測線は合計4回取得されており,いずれも東西断面の地形は非常に良く一致している.コロボック,ブラボークレーターについても同様に再現性が高く,レーザー高度計の測定精度の実力値は2〜3 mと評価される.クレーターの深さと直径の比率はウラシマが0.2,コロボックが0.14,ブラボーが0.155であり,様々なサイズの小惑星と同程度の比率を示す.一方で,同じラブルパイル天体でありサイズも似かよっている小惑星イトカワ,ベンヌの浅いクレーターとは明らかな違いがある.
クレーターの形状はボウル型というよりは円錐型に近い.ウラシマクレーターには中央に小さい窪みがあり,2段の凹地になっている.コロボックとブラボークレーターは中心部が平らになっている.また,クレーター斜面の傾度は岩塊を除けば一定で,ウラシマが16-20度,コロボックが7-15度,ブラボーが16-18度である.この傾斜は30-35度という一般的な安息角に比べて小さい.コロボックとブラボークレーターの平らな中央部と,緩やかな傾斜は一見,クレーターに地形緩和が進んでいる事を示唆しているように思われる.実際に,光学カメラ画像にはウラシマクレーター内部の斜面で地すべりが起きている事が認められる.しかしながら,他の小惑星クレーターと同程度の深さ/直径比率と,ウラシマクレーターの2重凹みは,クレーター形成当時の地形が保存されている事を強く示唆する.従って,リュウグウ上のクレーター地形は20度以下の緩斜面の円錐形として形成され,安息角よりも緩やかだったために地形緩和による大きな変形が起きなかったと考えられる.
クレーターの東西断面は東側斜面と西側斜面に顕著な違いを示している.いずれのクレーターも西側斜面が粗く,東側斜面が滑らかである.東西の相違はクレーターリムの形状に最も顕著に認められる.西側のリムは細く急であるが,東側のリムは幅が広く緩やかである.東西の形状の非対称は,クレーターからの低速度放出物がリュウグウに再集積する際に,西側の斜面に選択的に降り積持ったためと考えられる.低速度放出物は大きな破片が卓越するため,西側斜面が東側斜面よりも粗くなっていると推定される.同じ原因で東側リムが幅広になったと解釈する事が可能であるが,リムの東西非対称については放出物にはたらくコリオリ力の影響も考えられる.東向きに飛び出した放出物は,北半球では南向きに,南半球では北向きに進路を変えて,赤道付近に集まった可能性もある.
赤道バルジの南北地形断面形状はほぼ対照的である.しかし,クレーターと同じように,斜面の粗さ,滑らかさには南北非対称がある.かつ,非対称の表れ方は経度によって異り,北側が滑らかで,南側が粗い地域もあれば,逆に北側が粗く南側が滑らかな地域もある.中間熱赤外カメラからは赤道バルジの熱的特性に関して顕著な地域差は確認できておらず,南北非対称の原因が粒度や空隙率の地域差によるとは想定し難い.この南北非対称についてはさらに考察を要する.
ウラシマクレーターの中心を横切る測線は合計4回取得されており,いずれも東西断面の地形は非常に良く一致している.コロボック,ブラボークレーターについても同様に再現性が高く,レーザー高度計の測定精度の実力値は2〜3 mと評価される.クレーターの深さと直径の比率はウラシマが0.2,コロボックが0.14,ブラボーが0.155であり,様々なサイズの小惑星と同程度の比率を示す.一方で,同じラブルパイル天体でありサイズも似かよっている小惑星イトカワ,ベンヌの浅いクレーターとは明らかな違いがある.
クレーターの形状はボウル型というよりは円錐型に近い.ウラシマクレーターには中央に小さい窪みがあり,2段の凹地になっている.コロボックとブラボークレーターは中心部が平らになっている.また,クレーター斜面の傾度は岩塊を除けば一定で,ウラシマが16-20度,コロボックが7-15度,ブラボーが16-18度である.この傾斜は30-35度という一般的な安息角に比べて小さい.コロボックとブラボークレーターの平らな中央部と,緩やかな傾斜は一見,クレーターに地形緩和が進んでいる事を示唆しているように思われる.実際に,光学カメラ画像にはウラシマクレーター内部の斜面で地すべりが起きている事が認められる.しかしながら,他の小惑星クレーターと同程度の深さ/直径比率と,ウラシマクレーターの2重凹みは,クレーター形成当時の地形が保存されている事を強く示唆する.従って,リュウグウ上のクレーター地形は20度以下の緩斜面の円錐形として形成され,安息角よりも緩やかだったために地形緩和による大きな変形が起きなかったと考えられる.
クレーターの東西断面は東側斜面と西側斜面に顕著な違いを示している.いずれのクレーターも西側斜面が粗く,東側斜面が滑らかである.東西の相違はクレーターリムの形状に最も顕著に認められる.西側のリムは細く急であるが,東側のリムは幅が広く緩やかである.東西の形状の非対称は,クレーターからの低速度放出物がリュウグウに再集積する際に,西側の斜面に選択的に降り積持ったためと考えられる.低速度放出物は大きな破片が卓越するため,西側斜面が東側斜面よりも粗くなっていると推定される.同じ原因で東側リムが幅広になったと解釈する事が可能であるが,リムの東西非対称については放出物にはたらくコリオリ力の影響も考えられる.東向きに飛び出した放出物は,北半球では南向きに,南半球では北向きに進路を変えて,赤道付近に集まった可能性もある.
赤道バルジの南北地形断面形状はほぼ対照的である.しかし,クレーターと同じように,斜面の粗さ,滑らかさには南北非対称がある.かつ,非対称の表れ方は経度によって異り,北側が滑らかで,南側が粗い地域もあれば,逆に北側が粗く南側が滑らかな地域もある.中間熱赤外カメラからは赤道バルジの熱的特性に関して顕著な地域差は確認できておらず,南北非対称の原因が粒度や空隙率の地域差によるとは想定し難い.この南北非対称についてはさらに考察を要する.