16:30 〜 16:45
[PPS03-17] はやぶさ2帰還リュウグウ試料のキュレーションに関する準備状況
キーワード:はやぶさ2、C型小惑星、リュウグウ、試料キュレーション、炭素質コンドライト、地球近傍小惑星
小惑星探査機はやぶさ2は2014年12月に打ち上げられ、2018年6月にC型小惑星リュウグウに到着した[1]。現在、一連のリモートセンシング機器による観測を行っており、今年の初めには小惑星上へタッチダウンによる試料採集を実施する予定である[1, 2]。探査機は2019年の終りには小惑星を出発し、2020年終わりに地球にリュウグウ表層試料を収めた再突入カプセルを帰還させる予定である[1, 2]。
これらの探査機運用と並行して、JAXAでは小惑星から帰還する試料のキュレーションの準備を進めている。2017年9月にはやぶさ2帰還試料を取り扱う為のクラス1000のクリーンルームが完成し、試料を扱う為のクリーンチェンバー(CC)が昨年10月に整備された。このクリーンチェンバーは5室(CC3-1, CC3-2, CC3-3, CC4-1, CC4-2)から構成されている。
小惑星リュウグウは水質変成を受けた炭素質コンドライトの母天体と思われる為[3]、水・有機物などの揮発性物質分析が帰還試料にとって非常の重要な科学目標である[4]。揮発性物質を含む小惑星試料を地球の揮発性物質で汚染させない為に、はやぶさ2の試料コンテナには新たに開発した金属シール機構が備えられている[5, 6]。はやぶさ初号機ではバイトン2重Oリングによるシールであった為、地球大気の汚染を防ぐことが出来なかったが[7]、はやぶさ2の金属シール機構は1Pa以下の真空を100時間に渡って保持することが可能である[5, 6]。
探査機が帰還した再突入カプセルを回収した後、再突入カプセルは近くのクイックルック施設(QLF)に搬送される。カプセルの安全化処理の後、試料コンテナが取り出され、クリーニングを行い、コンテナ内部のガス状揮発性物質を回収する為のガス採集ラインに接続される。ガス状物質の回収の後、コンテナは窒素雰囲気で密封された状態でQLFからJAXAキュレーション施設へ運ばれる。コンテナのうち、CCへ搬入できない部品をクリーンルームで取り除く。最後にコンテナはコンテナ開封機構に設置され、CC3-1に導入される。
コンテナはCC3-1内の真空環境で開封され、リュウグウ試料を収めた試料キャッチャーが取り出される。取り出された試料キャッチャーはCC3-2に搬送される。試料キャッチャーは3室に分かれており、3ヵ所の異なる地点からの採集試料が各々納められており[5, 6]、その内最初のタッチダウン地点の試料が納められた室の蓋を開けて、少量の試料を取り出す。この採集された少量試料は将来の分析の為にCC3-2内で真空にて保管される。キャッチャーは真空環境にてCC3-2からCC3-3に搬送され、CC3-3を窒素環境に置き換える。そしてキャッチャーはCC4-1、CC4-2に搬送され、キャッチャーの3室からそれぞれ試料の取り出しが行われる。Phase-1と呼ばれる初期記載作業に於いて、取り出された試料の秤量、顕微鏡観察、CC3-3とCC4-2に設置された赤外分光装置による分析が行われる。
上記システムにおける試料ハンドリングの機能試験、試料受け入れ・ハンドリングのリハーサルは2019年4月から開始する予定である。2020年初頭にはそれらの機能試験・リハーサルを反映した調整・整備を行い、2020年終わりの試料帰還に備える予定である。
参考文献: [1] Watanabe S. et al. (2018). AGU 2018 fall meet., present. #P21A-02. [2] Watanabe S. et al. (2017) Space Sci. Rev. 208, 3–16. [3] Vilas et al. (2008) Astron. J. 135, 1101–1105. [4] Tachibana S. et al. (2014) Geochem. J., 48, 571-587. [5] Sawada T. et al. (2017) Space Sci. Rev. 208, 81-106. [6] Okazaki R. et al. (2017) Space Sci. Rev. 208, 107-124. [7] Okazaki R. et al. (2011) LPS XLII, abstract #1653.
これらの探査機運用と並行して、JAXAでは小惑星から帰還する試料のキュレーションの準備を進めている。2017年9月にはやぶさ2帰還試料を取り扱う為のクラス1000のクリーンルームが完成し、試料を扱う為のクリーンチェンバー(CC)が昨年10月に整備された。このクリーンチェンバーは5室(CC3-1, CC3-2, CC3-3, CC4-1, CC4-2)から構成されている。
小惑星リュウグウは水質変成を受けた炭素質コンドライトの母天体と思われる為[3]、水・有機物などの揮発性物質分析が帰還試料にとって非常の重要な科学目標である[4]。揮発性物質を含む小惑星試料を地球の揮発性物質で汚染させない為に、はやぶさ2の試料コンテナには新たに開発した金属シール機構が備えられている[5, 6]。はやぶさ初号機ではバイトン2重Oリングによるシールであった為、地球大気の汚染を防ぐことが出来なかったが[7]、はやぶさ2の金属シール機構は1Pa以下の真空を100時間に渡って保持することが可能である[5, 6]。
探査機が帰還した再突入カプセルを回収した後、再突入カプセルは近くのクイックルック施設(QLF)に搬送される。カプセルの安全化処理の後、試料コンテナが取り出され、クリーニングを行い、コンテナ内部のガス状揮発性物質を回収する為のガス採集ラインに接続される。ガス状物質の回収の後、コンテナは窒素雰囲気で密封された状態でQLFからJAXAキュレーション施設へ運ばれる。コンテナのうち、CCへ搬入できない部品をクリーンルームで取り除く。最後にコンテナはコンテナ開封機構に設置され、CC3-1に導入される。
コンテナはCC3-1内の真空環境で開封され、リュウグウ試料を収めた試料キャッチャーが取り出される。取り出された試料キャッチャーはCC3-2に搬送される。試料キャッチャーは3室に分かれており、3ヵ所の異なる地点からの採集試料が各々納められており[5, 6]、その内最初のタッチダウン地点の試料が納められた室の蓋を開けて、少量の試料を取り出す。この採集された少量試料は将来の分析の為にCC3-2内で真空にて保管される。キャッチャーは真空環境にてCC3-2からCC3-3に搬送され、CC3-3を窒素環境に置き換える。そしてキャッチャーはCC4-1、CC4-2に搬送され、キャッチャーの3室からそれぞれ試料の取り出しが行われる。Phase-1と呼ばれる初期記載作業に於いて、取り出された試料の秤量、顕微鏡観察、CC3-3とCC4-2に設置された赤外分光装置による分析が行われる。
上記システムにおける試料ハンドリングの機能試験、試料受け入れ・ハンドリングのリハーサルは2019年4月から開始する予定である。2020年初頭にはそれらの機能試験・リハーサルを反映した調整・整備を行い、2020年終わりの試料帰還に備える予定である。
参考文献: [1] Watanabe S. et al. (2018). AGU 2018 fall meet., present. #P21A-02. [2] Watanabe S. et al. (2017) Space Sci. Rev. 208, 3–16. [3] Vilas et al. (2008) Astron. J. 135, 1101–1105. [4] Tachibana S. et al. (2014) Geochem. J., 48, 571-587. [5] Sawada T. et al. (2017) Space Sci. Rev. 208, 81-106. [6] Okazaki R. et al. (2017) Space Sci. Rev. 208, 107-124. [7] Okazaki R. et al. (2011) LPS XLII, abstract #1653.