12:00 〜 12:15
[PPS07-18] 部分溶融プロセスを示すcompact type A CAIsの岩石組織学的研究
キーワード:Compact Type A CAIs、部分溶融、岩石組織学
隕石に含まれる難揮発性包有物 (Ca-Al-rich inclusions (CAIs))は太陽系最古の物質であり (Connelly et al., 2012)、粗粒CAIsは岩石学的特徴によりtype A, type B,およびtype Cに分類される (e.g., Grossman 1975)。CAIsの中でもCompact Type A CAIs (CTAs)は太陽系最初期に形成され、少なくとも一度は部分溶融を経験していると考えられている (e.g., Simon et al., 1999)。部分溶融の指標は、CAIs全体の形成を議論するために必要である。Yurimoto et al. (1998) では、Compact Type A CAIs中の構成鉱物間の酸素同位体組成不均一と化学組成ゾーニングから部分溶融を説明した。しかしながら、部分溶融に伴う結晶成長の観点からCTAs全体の形成過程を議論している研究は限られている (Ito et al., 2004, Park et al., 2012, Kawasaki et al., 2017) 。
一般的に、CTAs中のスピネルはメリライトまたはファサイト中に普遍的に囲まれており、CAIメルトから最初に結晶化した鉱物であると推定されている(Stolper, 1982)。すなわち、CTAs中のスピネルは、部分溶融プロセスのような熱履歴の貴重な情報を保存していることが期待される。したがって、本研究では、CTAs中のスピネルの岩石学的および鉱物学的特徴に注目した。研究対象のCTA(KU-N)は、North West Africa 7865 reduced CV3炭素質コンドライト薄片に含まれてる。Yoneyama et al.(2016)は同様のCTAを研究し、複数回の部分溶融を経験したと結論づけた。部分溶融に伴う結晶成長を評価する為に、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡 (SEM)及び電子線後方散乱回折分析法(EBSD)を用いて部分溶融(局所組成ゾーニング、粒子形状および結晶方位の関係)に起因する微細組織に焦点を当てたCTA(KU-N-02)の岩石学的及び鉱物学的研究を行った。
KU-N-02 CTAでは、スピネル結晶はメリライトまたはファサイトに囲まれている。前者(最大約50µmまでの大きさ)は全体的に自形であるが縁は丸みを帯びており、後者(約10~100µmの大きさ)は鋭い縁を有する自形結晶でる。両方の種類のスピネル粒子の表面上に、数µmのサイズの小さなペロブスカイト粒子が偏在して存在する。
KU-N-02 CAIs内部において、スピネルを含む単結晶のメリライトが特徴的な組成ゾーニングを示した。単結晶メリライトは全体的に、コアがAlに富みリムがMgに富むノーマルゾーニングを示す。しかし、メリライト単結晶中のスピネル表面近傍の幅約10 µmの領域が、周りよりも比較的にMg-richな組成を 示した。また、EBSD測定により組成の異なるメリライトの結晶方位は一致していた。すなわち、スピネル近傍のMgに富むメリライトは、その周りのAlに富むメリライト結晶が結晶化した後に結晶化したと考えられる。単純な冷却によってこのような組織の形成を説明するのは難しい。
これらの結果より、この組織はスピネルとメリライトの境界領域が何らかの加熱過程により高温で共融し、さらにその後急冷中にMg/Al含有量がメリライトとスピネルに再分配されたことを示唆している。つまり、この部分溶融はおそらくメリライトに囲まれたスピネルの特徴的な形状およびメリライトの局所組成ゾーニングをもたらした。
本発表では、これらのスピネル-メリライト-ファッサイト-ペロブスカイト結晶の形状・方位関係・化学組成の関係に注目し、部分溶融に伴う結晶成長を評価することでKU-N CTAsの形成過程を議論する。
一般的に、CTAs中のスピネルはメリライトまたはファサイト中に普遍的に囲まれており、CAIメルトから最初に結晶化した鉱物であると推定されている(Stolper, 1982)。すなわち、CTAs中のスピネルは、部分溶融プロセスのような熱履歴の貴重な情報を保存していることが期待される。したがって、本研究では、CTAs中のスピネルの岩石学的および鉱物学的特徴に注目した。研究対象のCTA(KU-N)は、North West Africa 7865 reduced CV3炭素質コンドライト薄片に含まれてる。Yoneyama et al.(2016)は同様のCTAを研究し、複数回の部分溶融を経験したと結論づけた。部分溶融に伴う結晶成長を評価する為に、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡 (SEM)及び電子線後方散乱回折分析法(EBSD)を用いて部分溶融(局所組成ゾーニング、粒子形状および結晶方位の関係)に起因する微細組織に焦点を当てたCTA(KU-N-02)の岩石学的及び鉱物学的研究を行った。
KU-N-02 CTAでは、スピネル結晶はメリライトまたはファサイトに囲まれている。前者(最大約50µmまでの大きさ)は全体的に自形であるが縁は丸みを帯びており、後者(約10~100µmの大きさ)は鋭い縁を有する自形結晶でる。両方の種類のスピネル粒子の表面上に、数µmのサイズの小さなペロブスカイト粒子が偏在して存在する。
KU-N-02 CAIs内部において、スピネルを含む単結晶のメリライトが特徴的な組成ゾーニングを示した。単結晶メリライトは全体的に、コアがAlに富みリムがMgに富むノーマルゾーニングを示す。しかし、メリライト単結晶中のスピネル表面近傍の幅約10 µmの領域が、周りよりも比較的にMg-richな組成を 示した。また、EBSD測定により組成の異なるメリライトの結晶方位は一致していた。すなわち、スピネル近傍のMgに富むメリライトは、その周りのAlに富むメリライト結晶が結晶化した後に結晶化したと考えられる。単純な冷却によってこのような組織の形成を説明するのは難しい。
これらの結果より、この組織はスピネルとメリライトの境界領域が何らかの加熱過程により高温で共融し、さらにその後急冷中にMg/Al含有量がメリライトとスピネルに再分配されたことを示唆している。つまり、この部分溶融はおそらくメリライトに囲まれたスピネルの特徴的な形状およびメリライトの局所組成ゾーニングをもたらした。
本発表では、これらのスピネル-メリライト-ファッサイト-ペロブスカイト結晶の形状・方位関係・化学組成の関係に注目し、部分溶融に伴う結晶成長を評価することでKU-N CTAsの形成過程を議論する。