[PPS07-P08] 流体包有物の同位体分析のための凍結SIMS法の開発
キーワード:流体包有物、凍結SIMS、酸素同位体
イントロダクション: 隕石中のハライト結晶に含まれる流体包有物は、地球外の水の直接的な情報を保持している[1]。凍結ステージを有したSIMSにより、隕石中の流体包有物についてその場局所同位体分析が行われた [2]。しかし、イオンビームで結晶中の流体包有物を露出させるためにできる深いスパッタクレータにより、分析精度がδ18O の値で±14 ‰ (1σ) に制限されていた。分析精度を向上のために、凍結した流体包有物を窒素ガス雰囲気下で研磨し、試料表面に露出させる方法を試みている [3, 4]。凍結研磨した流体包有物をSIMS分析するためには、表面を金などの導電膜で覆う必要があるが、蒸着装置に導入する前に霜が試料表面に付着するために、良好な導電膜の生成が困難であった。そのときの試料温度は-100 ℃であり、一方、グローブボックス内の露点 (-60 ℃) は試料温度より高温であったため、本研究では試料温度を変更した。
凍結試料調整法の改良: 凍結SIMSのための凍結試料調整システムは、グローブボックス中に設置された凍結研磨装置と金蒸着装置からなる。凍結研磨装置の温度は-35 ℃に設定し、試料表面での霜の付着は見られなかった。金蒸着装置内の真空では氷の昇華温度が-50 ℃程度であるため、研磨した試料を新たに設計した井戸型の極低温蒸着台に設置し、液体窒素で-196 ℃まで冷却した。蒸着台は、試料の表面に霜がつかないよう液体窒素から生成した窒素ガスで満たされている。試料温度は、4分間の蒸着中に液体窒素温度 から-130 ℃程度まで上昇すると推定される。
研磨・金蒸着したエポキシ樹脂上のH2O氷を凍結ホルダーにセットし、凍結輸送システムにより-190 ℃に冷却されたSIMS (Cameca ims-1270) の凍結ステージに導入した。ルーツポンプを用いて凍結ステージへ液体窒素を供給することにより、ステージの振動を低減した。酸素同位体の分析条件は[2]と同様である。
SIMS分析によってH2O氷から酸素同位体の質量スペクトルを得た。16O-ピークの強度は2.8 × 105 cpsであり、ピークの両側に左右対称な3 cps程度のテールがみられた。16OH-の強度は16O-の強度と同等であり、17O-に対する16OH-の妨害の寄与は約10 ‰であった。高精度なH2O氷の酸素同位体分析のためには、テール補正法[2]、もしくは16OH-および17, 18OH-ピークを用いた酸素同位体分析が効果的であると考えられる。
References: [1] Zolensky M. et al. (1999) Science, 285, 1377-1379. [2] Yurimoto H. et al. (2014) Geochem. J, 48, 549-56. [3] A. Ishibashi (2014) Master thesis [4] J. Song (2017) Master thesis.
凍結試料調整法の改良: 凍結SIMSのための凍結試料調整システムは、グローブボックス中に設置された凍結研磨装置と金蒸着装置からなる。凍結研磨装置の温度は-35 ℃に設定し、試料表面での霜の付着は見られなかった。金蒸着装置内の真空では氷の昇華温度が-50 ℃程度であるため、研磨した試料を新たに設計した井戸型の極低温蒸着台に設置し、液体窒素で-196 ℃まで冷却した。蒸着台は、試料の表面に霜がつかないよう液体窒素から生成した窒素ガスで満たされている。試料温度は、4分間の蒸着中に液体窒素温度 から-130 ℃程度まで上昇すると推定される。
研磨・金蒸着したエポキシ樹脂上のH2O氷を凍結ホルダーにセットし、凍結輸送システムにより-190 ℃に冷却されたSIMS (Cameca ims-1270) の凍結ステージに導入した。ルーツポンプを用いて凍結ステージへ液体窒素を供給することにより、ステージの振動を低減した。酸素同位体の分析条件は[2]と同様である。
SIMS分析によってH2O氷から酸素同位体の質量スペクトルを得た。16O-ピークの強度は2.8 × 105 cpsであり、ピークの両側に左右対称な3 cps程度のテールがみられた。16OH-の強度は16O-の強度と同等であり、17O-に対する16OH-の妨害の寄与は約10 ‰であった。高精度なH2O氷の酸素同位体分析のためには、テール補正法[2]、もしくは16OH-および17, 18OH-ピークを用いた酸素同位体分析が効果的であると考えられる。
References: [1] Zolensky M. et al. (1999) Science, 285, 1377-1379. [2] Yurimoto H. et al. (2014) Geochem. J, 48, 549-56. [3] A. Ishibashi (2014) Master thesis [4] J. Song (2017) Master thesis.