日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] 海洋底地球科学

2019年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、座長:喜岡 新野田 篤

09:30 〜 09:45

[SCG56-27] 巨大地震がもたらした超深海海溝底への莫大な有機炭素供給

*Kioka A.1Schwestermann T.1Moernaut J.1Ikehara K.2Kanamatsu T.3McHugh C.M.4dos Santos Ferreira C.5Wiemer G.5Haghipour N.6Kopf A.J.5Eglinton T.I.6Strasser M.1,5 (1.インスブルック大学、2.産業技術総合研究所、3.海洋研究開発機構、4.ニューヨーク市立大学、5.ブレーメン大学、6.スイス連邦工科大学チューリッヒ校)

キーワード:超深海、日本海溝、有機炭素、炭素循環、再堆積、2011年東北太平洋沖地震

これまで、地球の気候変動・生物圏における炭素循環の役割について理解が進んでいるが、有機炭素が超深海に供給されるメカニズムに関する理解は限られ、その厳密な定量化の報告例はない。例えば2011年東北太平洋沖地震では、有機物に富んだ年代の新しい表層の細粒堆積物が、再懸濁・再移動によって水深7 km以深の日本海溝に広く再堆積したことが考えられている。しかし、データ密度や分解能などの理由で、超深海のおける再堆積とその炭素循環への寄与の検証は進んでこなかった。本研究では、日本海溝で2012〜2016年に取得された、超深海では最高分解能を誇る海底地形およびサブボトムプロファイラーデータならびに堆積物コアを用いて、日本海溝軸海溝底におけるターミナル小海盆の詳細なマッピングと、そこに堆積した地震起源のイベント堆積物の体積計算を初めて行った。その結果、2011年の地震によって、合わせて約0.2 km3の前弧斜面起源の表層堆積物が、海溝軸上の多数の小海盆に再堆積したことがわかった。この結果を用いて有機炭素の質量を定量化すると、少なくとも1 Tgの有機炭素が2011年地震で海溝底に供給されたことが明らかになった。これは、たった1回のテクトニックイベントがもたらした有機炭素供給が、ガンジス・ブラマプトラ河川系システムといった高い有機炭素フラックスで知られる他の地球表層プロセスに匹敵することを意味する。大地震が超深海における中・長期的な炭素循環ならびに短期的な底生生物活動に与えるインパクトは、我々の想像以上に大きいのかもしれない。