[SCG59-P04] 最短経路法を用いた波線追跡法適用による津波伝播の計算
キーワード:津波、最短経路法
津波伝搬について表面波の波線追跡法を適用した研究(Satake,1988)はすでに存在しているが、ここでは最短経路法を元にした波線追跡法を適用した。通常の波線追跡法では、震源から出発する波線が速度分布(海洋底の深さ分布)に敏感に反応して目標の到達点に波線を導くことが困難な場合や、求められた波線がlocal minimumに陥っている場合がある。最短経路法を用いた波線追跡法にはそのような心配はない。太平洋地域と日本海地域についてそれぞれ最短経路法を適用した計算を実行してみた。地形データは1分サンプリングのETOPO1を元に、太平洋地域は1度間隔で±5度の近傍データで平均化したものを、日本海地域は0.1度間隔で±0.5度の近傍データで平均化したものを使用した。今回の最短経路法では領域を矩形のセルに分割しセル境界上に均等にノードを分布させセル内でノードを結ぶ直線を想定し伝播時間が最短になる経路を求める。はじめはセルを地形データが作る矩形に一致させ、境界上のノード数は5とし、そこからセルの数とノードの数をそれぞれ2倍に増やしていき、増やした時の平均的な伝播時間と元のそれとの差が60秒以内になったところで元の時点で収束したと判定することにした。平均的な伝播時間は太平洋地域では地形データをサンプルした1度間隔の地点、日本海地域では同じく0.1度間隔の地点での伝播時間すべてを平均して求めた。震源は太平洋地域ではチリ沖、日本海地域では1983年日本海中部地震付近を想定した。収束したセルとノードの数はそれぞれ(1,10)、(1,5)となり、所要計算時間はそれぞれ約3.14秒、0.60秒となった。以上のように最短経路法を適用することにより非常に短い計算時間で対象領域全地点での津波到着時間を見積もることができることが示された。なお、太平洋地域の場合、深さ1,000mより浅い地点は計算の対象外とした。