日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 重力・ジオイド

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 303 (3F)

コンビーナ:兒玉 篤郎(国土交通省国土地理院)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所)、座長:名和 一成本多 亮(山梨県富士山科学研究所)

16:15 〜 16:30

[SGD01-10] 精密重力ジオイド構築に向けた航空重力測量の取組み

*兒玉 篤郎1冨山 顕1大森 秀一1吉樂 絵里香1矢萩 智裕1平岡 喜文1河和 宏1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:航空重力測量、重力ジオイド・モデル、標高体系

これまで日本の標高は、東京湾平均海面を基準として決められた日本水準原点から、全国の主要国道沿いに約2km間隔で設置された水準点に対し、国土地理院が水準測量によって標高成果を取り付けることで維持管理されてきた。しかし、水準測量は非常に時間とコストがかかる上、地震やプレート運動等に伴う地殻変動を迅速に標高へ反映することが難しく、迅速な復旧・復興に支障を来たすという課題があった。一方で、国土地理院では、平成25年(2013年)4月の「日本のジオイド2011+2000」の公開に合わせて新たに「GNSSによる標高の測量マニュアル」を施行し、一部の公共測量において測位衛星を利用して標高を決定することを可能とした。しかしながら、これまで国土地理院が構築してきたジオイド・モデルは、既存の標高体系に整合させるため、電子基準点の楕円体高成果と水準測量による標高成果から得られる実測ジオイド高と、精度的には粗いが広域を計算できる重力ジオイド・モデルとを組み合わせたハイブリッドなモデルであった。そのため、地震に伴う地殻変動などにより楕円体高成果と標高成果がそれぞれ別に改定された場合には、その改定量をジオイド・モデルへ反映させる必要があり、結果として水準測量が終わるまでは使えない仕組みとなっている。また、重力ジオイド・モデルの構築に必要な重力データについても、山岳部や沿岸海域における空白域の存在や、衛星重力データの空間分解能が低いこと、国内にある地上重力データは大部分が約30年前に観測されたもので現況から乖離していること、さらにそれらの観測位置の情報は地図等から取得したものが多く精度が低いことなどから品質の面で課題がある。

そこで、これらの課題を解決し、より迅速に精度の高い標高決定を可能にするため、国土地理院では、平成30年(2018年)度から航空重力測量のプロジェクトを開始した。具体的には、2019年度から4年計画で、航空機に搭載した相対重力計を用いて全国の重力データを整備し、そのほかに利用可能な地上重力、衛星重力、海上重力等のデータと組み合わせて新たに3cm精度以下の精密重力ジオイド・モデルを構築する。電子基準点から得られる楕円体高と精密重力ジオイド・モデルを基盤とした新たな標高の仕組みを2024年度までに整備し、誰もが衛星測位で簡単に高精度な標高を利用できる社会を目指す。精密重力ジオイド・モデルは楕円体高成果や標高成果に依存しないため、地殻変動が発生した場合でも衛星測位で迅速に標高算出が可能となる。

本発表では、国土地理院が目指す新たな標高の仕組みと、その実現に向けた航空重力測量の取組み状況について報告する。