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[SMP32-05] 鹿塩マイロナイトの温度圧力条件: 三波川変成帯と領家変成帯の接合に関する制約
キーワード:Mylonite、EBSD、Ryoke metamorphic belt、Sambagawa metamorphic belt
三波川変成帯と領家変成帯は,古典的に対の変成帯と呼ばれ,沈み込み帯における火成活動と低温高圧変成作用に密接に関連している (e.g., Brown, 2010).西南日本で領家変成帯は三波川変成帯に直接接していないが,中部地方の長野県大鹿村地域は両変成帯の接合関係が観察できる数少ない地域である.そのため,MTLの活動に関連した変成・変形作用を議論するのに最適な場所である.本研究では三波川変成岩・領家変成岩の詳細な変形・変成作用の解析を行い,低温高圧変成帯の上昇に関するテクトニクスや延性―塑性領域での構造発達史の制約を目指す.
本地域では,これまでMTLにそって中温型マイロナイト(いわゆる鹿塩マイロナイト)が広く分布することはよく知られている(Takagi, 1986). 我々は新たにZ集中を示す再結晶石英で特徴付けられる低温型マイロナイトを発見した.その低温型マイロナイトは領家変成岩・三波川変成岩由来であり,MTLから500m以内の上盤・下盤側双方に分布する.左横ずれセンスを示し,NNE-SSWの緩いプランジを持つ鉱物伸長線構造がマイロナイト面によく発達している.低温型マイロナイト帯では,ざくろ石ポーフィロクラストはコアからリムにかけて明瞭なグロッシュラー成分の組成累帯構造を示す.またマイロナイト面構造は白雲母 (Si in apfu = 3.38-3.49)と緑泥石 (XMg = 0.39-0.41)からなる.これらの再結晶鉱物を用いた地質温度圧力計を利用すると,領家変成岩起源の低温型マイロナイトの形成条件は420-450 ℃/0.5-0.6 GPaの温度圧力条件を示す.一部の変成岩起源マイロナイトは540 ℃/0.9 GPaの温度圧力条件を示すものもあった.これらの変成条件は三波川変成帯の温度圧力条件 (Enami et al. 1994)に一致しており,マイロナイト化のステージで領家変成岩と三波川変成岩がすでに接合していたことを示唆している.
さらに領家変成岩起源の鹿塩マイロナイト中のzircon U-Pb年代をLA-ICPMSによって分析した.分析試料の主要な年代スペクトルは 69.0 +/- 0.6 Ma (n=10) を示し,源岩の領家花崗岩またはトーナル岩の固結年代であると推定される.この源岩固結年代は,これまで報告されたいずれのマイロナイト化年代 (鹿塩時階: >83Ma, Kubota and Takeshita, 2008; 95~85 Ma, Takagi, 1997)よりもずっと若いことが明らかになった. また非持トーナル岩の平均冷却速度(28℃ /Ma; Shibata and Takagi, 1988) を利用すると,中温型マイロナイトは 62 Ma前後に形成し,~58 Maに二回目の低温型マイロナイトを経験したことになる.これらの年代データ・変成・変形作用をまとめると,58 Ma前後の低温型マイロナイト形成時にはすでに三波川変成岩と領家変成岩が接合していたことになる.その後55Ma前後のプレート運動方向の変化によって両変成帯が上昇したと示唆される (Seton et al. 2015).
参考文献:M. Brown, Gondwana Research, 18 (2010) 46-59. H. Takagi, J. Struct. Gel. 8 (1986) 3-14. M. Enami, S.R. Wallis, Y. Banno, 116 (1994), 182-198. Y. Kubota, T. Takeshita, Island Arc, 17, (2008) 129-151. H. Takagi, Chikyu, 19 (1997) 111-116. K. Shibata, H. Takagi, J. Geol. Soc. Jpn., 94 (1988) 35-50. M. Seton, N. Flament, J. Whittaker, R.D. Muller, M. Gurnis, D.J. Bower, Geol. Rea. Let. 42 (2015) 1732-1740.
本地域では,これまでMTLにそって中温型マイロナイト(いわゆる鹿塩マイロナイト)が広く分布することはよく知られている(Takagi, 1986). 我々は新たにZ集中を示す再結晶石英で特徴付けられる低温型マイロナイトを発見した.その低温型マイロナイトは領家変成岩・三波川変成岩由来であり,MTLから500m以内の上盤・下盤側双方に分布する.左横ずれセンスを示し,NNE-SSWの緩いプランジを持つ鉱物伸長線構造がマイロナイト面によく発達している.低温型マイロナイト帯では,ざくろ石ポーフィロクラストはコアからリムにかけて明瞭なグロッシュラー成分の組成累帯構造を示す.またマイロナイト面構造は白雲母 (Si in apfu = 3.38-3.49)と緑泥石 (XMg = 0.39-0.41)からなる.これらの再結晶鉱物を用いた地質温度圧力計を利用すると,領家変成岩起源の低温型マイロナイトの形成条件は420-450 ℃/0.5-0.6 GPaの温度圧力条件を示す.一部の変成岩起源マイロナイトは540 ℃/0.9 GPaの温度圧力条件を示すものもあった.これらの変成条件は三波川変成帯の温度圧力条件 (Enami et al. 1994)に一致しており,マイロナイト化のステージで領家変成岩と三波川変成岩がすでに接合していたことを示唆している.
さらに領家変成岩起源の鹿塩マイロナイト中のzircon U-Pb年代をLA-ICPMSによって分析した.分析試料の主要な年代スペクトルは 69.0 +/- 0.6 Ma (n=10) を示し,源岩の領家花崗岩またはトーナル岩の固結年代であると推定される.この源岩固結年代は,これまで報告されたいずれのマイロナイト化年代 (鹿塩時階: >83Ma, Kubota and Takeshita, 2008; 95~85 Ma, Takagi, 1997)よりもずっと若いことが明らかになった. また非持トーナル岩の平均冷却速度(28℃ /Ma; Shibata and Takagi, 1988) を利用すると,中温型マイロナイトは 62 Ma前後に形成し,~58 Maに二回目の低温型マイロナイトを経験したことになる.これらの年代データ・変成・変形作用をまとめると,58 Ma前後の低温型マイロナイト形成時にはすでに三波川変成岩と領家変成岩が接合していたことになる.その後55Ma前後のプレート運動方向の変化によって両変成帯が上昇したと示唆される (Seton et al. 2015).
参考文献:M. Brown, Gondwana Research, 18 (2010) 46-59. H. Takagi, J. Struct. Gel. 8 (1986) 3-14. M. Enami, S.R. Wallis, Y. Banno, 116 (1994), 182-198. Y. Kubota, T. Takeshita, Island Arc, 17, (2008) 129-151. H. Takagi, Chikyu, 19 (1997) 111-116. K. Shibata, H. Takagi, J. Geol. Soc. Jpn., 94 (1988) 35-50. M. Seton, N. Flament, J. Whittaker, R.D. Muller, M. Gurnis, D.J. Bower, Geol. Rea. Let. 42 (2015) 1732-1740.