[SMP32-P05] 領家帯三河地域および讃岐東部地域のミグマタイトのU-Pbジルコン年代
キーワード:U-Pbジルコン年代、ミグマタイト、高温変成作用
高温低圧型の領家変成帯に産するミグマタイトの岩石学・年代学の融合的研究を行うことで、後期白亜紀イグニンブライト・フレアアップ時の、大陸地殻中部の部分溶融継続時間を見積もることができる。本研究では、領家帯に産するミグマタイト中の変成ジルコンの形成年代を変成作用のステージと結びつけて解釈することを目的とし、三河地域および讃岐東部地域の試料についてLA-ICP-MSによるU-Pb年代測定を行った。
領家帯三河地域においては、すでにTakatsuka et al. (2018a) が層状優白質部中のジルコンのU-Pb年代測定を行っている。同部分から得られた変成リムのU-Pb年代は~103 Maから~83 Maにかけてコンコーディア上に連続的に分布する。変成リムはCL像上での不連続なゾーニングおよび年代値や化学組成の違いから2段階に分けることができ、内側のリムは97.0±4.4 Maの昇温変成期、外側のリムは88.5±2.5 Maの降温変成期初期 (部分溶融メルトの固結時期) に形成されたと解釈された (Takatsuka et al., 2018a)。しかしこれらの変成リム年代値は、周囲のミグマタイト中のリューコゾームに比して顕著に厚い優白質部 (~20 cm) を用いて求められたもので、典型的なミグマタイト試料中のジルコンを測定したわけではなく、また試料数が1つで分析点数が少ないという問題点があった。
そこで本研究では、領家帯三河地域に産するミグマタイト4試料中のジルコン粒子に対し、U-Pbジルコン年代測定を行った。ミグマタイトの主要鉱物組合せは石英+斜長石+カリ長石+黒雲母±菫青石+珪線石±ざくろ石である。ジルコンには変成リムが発達し、珪線石および白雲母が包有されていた。年代測定の結果、~98 Maから~81 Maにかけてコンコーディア上に連続的に分布するU-Pb年代を得た。年代値に加えジルコン中の珪線石包有物の有無やジルコンのTh/U比・U濃度を考慮することで、以下の3つの変成ステージを認識できた。(1) 広域変成作用時の部分溶融メルト中でのリムの成長 (91.4±0.8 Ma; MSWD=1.4, Th/U<0.08, n=29)、(2) 変成ピーク後の珪線石脈形成に伴うUに富むジルコン粒子の成長 (87.1±1.7 Ma; MSWD=2.1, Th/U=~0.002-0.01, n=3)、(3) (1) の外側に発達する~81 Ma (80.9±2.9 Maおよび81.5±7.3 Ma; Th/U<0.03) の変成リムの成長。(3) については、得られた分析点数が少ないながら、試料採取地点が81-75 Ma花崗岩類 (Takatsuka et al., 2018b) から約1.7 kmと近く、U-Pbジルコン年代も81-75 Ma花崗岩類に近いことから、同花崗岩類の貫入に伴う接触変成作用時に形成されたリムの可能性がある。
また、従来U-Pbジルコン年代値の報告がない讃岐東部地域 (沓掛ら, 1979) においても、2試料の変成ジルコンのU-Pb年代を決定した。1試料目は、讃岐東部に産する花崗岩類に囲まれた800m程度の変成岩岩体中の泥質片麻岩で、主要鉱物組み合わせは石英+斜長石+カリ長石+黒雲母+ざくろ石である。ジルコンには変成リム (Th/U=~0.02-0.18) が発達し、U-Pbジルコン年代は93.4±0.7 Ma (MSWD=0.85, n=27) を示した。2試料目は、同じく花崗岩に囲まれて約4 km幅で露出する変成岩岩体から得た泥質片麻岩で、片麻状構造は周囲の片麻状花崗岩類と調和的である。主要鉱物組み合わせは石英+斜長石+カリ長石+黒雲母+珪線石である。ジルコンには珪線石を包有する変成リム (Th/U=~0.05-0.08) が発達し、U-Pbジルコン年代は95.4±2.4 Ma (MSWD=0.47, n=6) を示した。これらは、周囲の~93 Maの片麻状花崗岩類のU-Pbジルコン年代 (Iida et al., 2015) と一致しているため、花崗岩類の貫入による接触変成作用時に、珪線石安定領域下で変成リムが成長した可能性が高い。
領家帯三河地域においては、すでにTakatsuka et al. (2018a) が層状優白質部中のジルコンのU-Pb年代測定を行っている。同部分から得られた変成リムのU-Pb年代は~103 Maから~83 Maにかけてコンコーディア上に連続的に分布する。変成リムはCL像上での不連続なゾーニングおよび年代値や化学組成の違いから2段階に分けることができ、内側のリムは97.0±4.4 Maの昇温変成期、外側のリムは88.5±2.5 Maの降温変成期初期 (部分溶融メルトの固結時期) に形成されたと解釈された (Takatsuka et al., 2018a)。しかしこれらの変成リム年代値は、周囲のミグマタイト中のリューコゾームに比して顕著に厚い優白質部 (~20 cm) を用いて求められたもので、典型的なミグマタイト試料中のジルコンを測定したわけではなく、また試料数が1つで分析点数が少ないという問題点があった。
そこで本研究では、領家帯三河地域に産するミグマタイト4試料中のジルコン粒子に対し、U-Pbジルコン年代測定を行った。ミグマタイトの主要鉱物組合せは石英+斜長石+カリ長石+黒雲母±菫青石+珪線石±ざくろ石である。ジルコンには変成リムが発達し、珪線石および白雲母が包有されていた。年代測定の結果、~98 Maから~81 Maにかけてコンコーディア上に連続的に分布するU-Pb年代を得た。年代値に加えジルコン中の珪線石包有物の有無やジルコンのTh/U比・U濃度を考慮することで、以下の3つの変成ステージを認識できた。(1) 広域変成作用時の部分溶融メルト中でのリムの成長 (91.4±0.8 Ma; MSWD=1.4, Th/U<0.08, n=29)、(2) 変成ピーク後の珪線石脈形成に伴うUに富むジルコン粒子の成長 (87.1±1.7 Ma; MSWD=2.1, Th/U=~0.002-0.01, n=3)、(3) (1) の外側に発達する~81 Ma (80.9±2.9 Maおよび81.5±7.3 Ma; Th/U<0.03) の変成リムの成長。(3) については、得られた分析点数が少ないながら、試料採取地点が81-75 Ma花崗岩類 (Takatsuka et al., 2018b) から約1.7 kmと近く、U-Pbジルコン年代も81-75 Ma花崗岩類に近いことから、同花崗岩類の貫入に伴う接触変成作用時に形成されたリムの可能性がある。
また、従来U-Pbジルコン年代値の報告がない讃岐東部地域 (沓掛ら, 1979) においても、2試料の変成ジルコンのU-Pb年代を決定した。1試料目は、讃岐東部に産する花崗岩類に囲まれた800m程度の変成岩岩体中の泥質片麻岩で、主要鉱物組み合わせは石英+斜長石+カリ長石+黒雲母+ざくろ石である。ジルコンには変成リム (Th/U=~0.02-0.18) が発達し、U-Pbジルコン年代は93.4±0.7 Ma (MSWD=0.85, n=27) を示した。2試料目は、同じく花崗岩に囲まれて約4 km幅で露出する変成岩岩体から得た泥質片麻岩で、片麻状構造は周囲の片麻状花崗岩類と調和的である。主要鉱物組み合わせは石英+斜長石+カリ長石+黒雲母+珪線石である。ジルコンには珪線石を包有する変成リム (Th/U=~0.05-0.08) が発達し、U-Pbジルコン年代は95.4±2.4 Ma (MSWD=0.47, n=6) を示した。これらは、周囲の~93 Maの片麻状花崗岩類のU-Pbジルコン年代 (Iida et al., 2015) と一致しているため、花崗岩類の貫入による接触変成作用時に、珪線石安定領域下で変成リムが成長した可能性が高い。