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[SSS10-04] 2018年北海道胆振東部地震の余震の時系列解析からわかるマントル以浅の層状構造
キーワード:地殻の層状構造、2018年北海道胆振東部地震、余震の時系列解析
1.は じ め に
2018年9月6日3時8分頃,北海道胆振地方東部を震央とするM6.7の平成30年(2018年)北海道胆振東部地震が発生した(気象庁,2018).震央周辺の北海道勇払郡厚真町の北東部を中心とする丘陵地域での斜面災害による死者41名を含む大規模な被害や,震央に近い海岸部で発生した液状化被害が発生した.また,苫東厚真火力発電所では地震動および発生した火災の影響で発電を停止したことが引き金になり北海道内全域の停電に陥った.さらに,札幌市清田区の丘陵地域を開発した住宅地の埋め立て部で大規模な液状化・流動化被害が発生した.
本報告では,平成30年(2018年)北海道胆振東部地震の本震および余震の3次元分布およびその時系列解析によって明らかになった上部マントルおよび地殻の層状構造について報告する.
なお,本地震によって被災された方々にお見舞い申し上げるともに,一刻も早い日常生活への復旧を祈念する.また,本報告中で使用した震源データは,すべて気象庁一元化処理データを使用した.記してお礼申し上げる.
2.2018年北海道胆振東部地震の地震活動と震源分布
2018年北海道胆振東部地震は,2018年9月6日午前3時7分59秒に,東経142.00667°,北緯42.69083°の北海道胆振東部地域の深さ37kmにおいてMj6.7の規模で発生した.この地震による最大震度は7であった.
初動解における推定される断層面は,北北東-南南西方向で東傾斜であるが,大局的な震央分布は南北方向になっている.詳しく見ると,北北東-南南西方向の部分と北北西-南南東方向の部分に伸びる部分とがジグザグ状に分布している.
3.余震分布の時系列的変化と震度ゾーン
2018年北海道胆振東部地震の余震分布を時系列的にみると,地下の地質構造が層状の構造をなしていることが推定される.
余震の発生場所を時間で区切って見てみると,大局的には,地下37kmの本震の発生場所の深度から地表方向に向けて広がっていくことがわかるが,起こる頻度や規模によって4つの震度ゾーンにごとに分けることができる.
すなわち,最初は本震を含む発生頻度の高い深さ約45km~約30kmの深度ゾーン,地震の発生数が少ないが規模の比較的大きい地震の起こる深さ約30km~約20kmの深度ゾーン,直下のゾーンより発生頻度が高い深さ約20km~約10kmの深度ゾーン,発生頻度は高くはないが面の傾斜が緩くなる深さ約10km~約5kmの深度ゾーンの4つの深度ゾーンに分けることができる.
これらの深度ゾーンの中で注目すべきは,約20km~約10kmの深さの深度ゾーンである.このゾーンでは,本震よりやや南の場所から放射状の線状に広がるように震源分布があることである.しかも,余震が起こる時系列でみると,まず,南の上方向に進む一群があり,次いで北方向に斜め上に進む一群があることが識別できる.このような地震の発生の場の時間的変化からは,地震の発生が単純な力学的原因で起こっているのではなく,本州弧で一般的な地震でみられるように,地震の発生に熱流体が関与していると推定される.
4.余震が示す断層面の傾斜と地下地質との関係
本震から1ヶ月半の震源の東西投影断面図では,余震が示す断層面は西傾斜で,約10km以深では,ほぼ70°前後の傾斜で東に傾斜している.これに対してそれ以浅では,傾斜が約45°前後と緩くなる.このような地下では高角度の断層面が地表付近に近づくほど底角度になることは,実験やシミュレーションでは一般的であり,地表付近では,最小圧縮応力σ3が地表に垂直になることで最大圧縮応力軸σ1が必然的に水平になるからである.
今回の地震の場合,地下40km付近では断層の上盤の東側が上昇して傾斜が70°の逆断層面ができ,その断層面はほぼ同じ傾斜で地下10kmまで続いた.それより浅所では地表方向への応力解放により低角度になったと考えられる.あるいは,地下約10kmより深部では,花崗岩あるいは玄武岩質深成岩などの固い岩盤であるが,それより浅所では古第三系や新第三系などの堆積岩であることから,摩擦角の低下によって断層面が次第に低角度になった可能性が考えられる.
また,地震頻度の少ないゾーンを塑性的な下部地殻とすると,その上は中部地殻と上部地殻に,地震の発生地点を含むゾーンは上部マントルの最上部に対応すると考えられる.
引用文献
気象庁(2018)平成30年9月6日03時08分頃の胆振地方中東部の地震について(第4報).https://www.jma.go.jp/jma/press/1809/06h/kaisetsu201809061730_4.pdf.
2018年9月6日3時8分頃,北海道胆振地方東部を震央とするM6.7の平成30年(2018年)北海道胆振東部地震が発生した(気象庁,2018).震央周辺の北海道勇払郡厚真町の北東部を中心とする丘陵地域での斜面災害による死者41名を含む大規模な被害や,震央に近い海岸部で発生した液状化被害が発生した.また,苫東厚真火力発電所では地震動および発生した火災の影響で発電を停止したことが引き金になり北海道内全域の停電に陥った.さらに,札幌市清田区の丘陵地域を開発した住宅地の埋め立て部で大規模な液状化・流動化被害が発生した.
本報告では,平成30年(2018年)北海道胆振東部地震の本震および余震の3次元分布およびその時系列解析によって明らかになった上部マントルおよび地殻の層状構造について報告する.
なお,本地震によって被災された方々にお見舞い申し上げるともに,一刻も早い日常生活への復旧を祈念する.また,本報告中で使用した震源データは,すべて気象庁一元化処理データを使用した.記してお礼申し上げる.
2.2018年北海道胆振東部地震の地震活動と震源分布
2018年北海道胆振東部地震は,2018年9月6日午前3時7分59秒に,東経142.00667°,北緯42.69083°の北海道胆振東部地域の深さ37kmにおいてMj6.7の規模で発生した.この地震による最大震度は7であった.
初動解における推定される断層面は,北北東-南南西方向で東傾斜であるが,大局的な震央分布は南北方向になっている.詳しく見ると,北北東-南南西方向の部分と北北西-南南東方向の部分に伸びる部分とがジグザグ状に分布している.
3.余震分布の時系列的変化と震度ゾーン
2018年北海道胆振東部地震の余震分布を時系列的にみると,地下の地質構造が層状の構造をなしていることが推定される.
余震の発生場所を時間で区切って見てみると,大局的には,地下37kmの本震の発生場所の深度から地表方向に向けて広がっていくことがわかるが,起こる頻度や規模によって4つの震度ゾーンにごとに分けることができる.
すなわち,最初は本震を含む発生頻度の高い深さ約45km~約30kmの深度ゾーン,地震の発生数が少ないが規模の比較的大きい地震の起こる深さ約30km~約20kmの深度ゾーン,直下のゾーンより発生頻度が高い深さ約20km~約10kmの深度ゾーン,発生頻度は高くはないが面の傾斜が緩くなる深さ約10km~約5kmの深度ゾーンの4つの深度ゾーンに分けることができる.
これらの深度ゾーンの中で注目すべきは,約20km~約10kmの深さの深度ゾーンである.このゾーンでは,本震よりやや南の場所から放射状の線状に広がるように震源分布があることである.しかも,余震が起こる時系列でみると,まず,南の上方向に進む一群があり,次いで北方向に斜め上に進む一群があることが識別できる.このような地震の発生の場の時間的変化からは,地震の発生が単純な力学的原因で起こっているのではなく,本州弧で一般的な地震でみられるように,地震の発生に熱流体が関与していると推定される.
4.余震が示す断層面の傾斜と地下地質との関係
本震から1ヶ月半の震源の東西投影断面図では,余震が示す断層面は西傾斜で,約10km以深では,ほぼ70°前後の傾斜で東に傾斜している.これに対してそれ以浅では,傾斜が約45°前後と緩くなる.このような地下では高角度の断層面が地表付近に近づくほど底角度になることは,実験やシミュレーションでは一般的であり,地表付近では,最小圧縮応力σ3が地表に垂直になることで最大圧縮応力軸σ1が必然的に水平になるからである.
今回の地震の場合,地下40km付近では断層の上盤の東側が上昇して傾斜が70°の逆断層面ができ,その断層面はほぼ同じ傾斜で地下10kmまで続いた.それより浅所では地表方向への応力解放により低角度になったと考えられる.あるいは,地下約10kmより深部では,花崗岩あるいは玄武岩質深成岩などの固い岩盤であるが,それより浅所では古第三系や新第三系などの堆積岩であることから,摩擦角の低下によって断層面が次第に低角度になった可能性が考えられる.
また,地震頻度の少ないゾーンを塑性的な下部地殻とすると,その上は中部地殻と上部地殻に,地震の発生地点を含むゾーンは上部マントルの最上部に対応すると考えられる.
引用文献
気象庁(2018)平成30年9月6日03時08分頃の胆振地方中東部の地震について(第4報).https://www.jma.go.jp/jma/press/1809/06h/kaisetsu201809061730_4.pdf.