[SSS10-P09] 地震活動の時系列解析から推定される日本列島南西部~朝鮮半島南東部の地震活動
キーワード:地震活動の時系列解析、深部熱流体、日本列島南西部
1.はじめに
2016年4月14日22時26分頃,熊本県中央部の深さ11kmを震源とする気象庁マグニチュードMj6.5の地震が発生した.その約1時間半後の15日00時03分頃にMj6.4の地震が,さらにその25時間後の16日01時25分にMj7.3の地震が発生した.これらの一連の地震は平成28年(2016年)熊本地震(気象庁,2016;以下,熊本地震)とよばれ,震央に近い益城町をはじめ,人的被害を含む構造物等の大規模な被害被害が発生した.この地震の発生の半年前から直前まで,沖縄トラフ北西部において,北東南西方向の伸びを示す,後の熊本地震と同規模の余震域をもつ一連の地震が起こっている.その後,半年~1年間の間に,朝鮮半島南東部,鳥取県中部と立て続けに被害地震が発生している.筆者は,これらの地震について,震源の詳細な時空間的解析の結果,およびその西南日本における時空間的位置づけを検討した結果,これらの地震の発生には深部流体が大きく寄与していることが明らかになったので報告する.なお,本報告中で使用した震源データは,すべて,気象庁一元化処理データを使用した.
2.西南日本の大規模浅発地震の時空分布
近年,近畿地方以西の日本列島周辺で発生した,被害をもたらすような大規模浅発地震は,少なくとも2015年11月以降,次のように列挙することができる.すなわち,
① 2015年11月15日 沖縄トラフ北西縁の地震 北緯31.33050°,東経128.71733°,深さ9.4km,M5.9.
前日(11月14日)にM5.1の前震,2016年5月7日にM5.5の最大余震.
② 2016年4月16日 平成28年2016年熊本地震 北緯32.75450° 東経130.76300°, 深さ12.45km,M7.3.
2日前の4月14日にM6.5,1日前の4月15日にM6.4の前震,2016年4月16日にM5.9の最大余震.
③ 2016年9月12日 朝鮮半島南東部の地震(慶州地震)北緯35.79817° 東経129.27167°,深さ36.0km,M5.8.
本震の40分前にM5.2の前震.1年後の2017年11月15日にはM5.2,さらにその3ヶ月後にはM4.8の地震.
④ 2016年10月21日 鳥取県中部の地震 北緯35.38050° 東経133.85617°,深さ10.61km,M6.6.
低周波地震からなる前震群,低周波地震を含む余震群.(10月26日には島根県西部において2個の低周波地震)
⑤ 2017年11月15日 朝鮮半島南東部の地震 北緯36.19584° 東経129.39417°,深さ11.0km,M5.6.
⑥ 2018年02月11日 朝鮮半島南東部の地震 北緯36.09883° 東経129.45700°,深さ4.0km,M4.6.
⑦ 2018年4月9日 島根県西部の地震 北緯35.18467° 東経132.58667°,深さ12.13km,M6.1.
⑧ 2018年6月18日 大阪府北部地震 北緯34.84433° 東経135.62167°,深さ12.98km,M6.1.
である.
3.西南日本における大規模浅発地震の連鎖
以上の地震について,その位置に注目してみると,①~④,⑤~⑧は,それぞれ震央が西から東へと移り変わる一連の位置の変化が認められる.
その中で,① 沖縄トラフ北西縁の地震と② 2016年熊本地震との関係をみると,①の地震群の,発生個数・規模の両方が急激に減衰して空白が生じた直後に,その北東側に② 2016年熊本地震が発生しており,両者には密接な関係があるものということができる.
③ 朝鮮半島南東部の地震は,⑤の地震も含め,深部から浅部へと余震域が移動するとともに,横方向にも位置を変えている(Fig.1).このような震源域の面的な広がりを持たない線状の移動軌跡は,地震の発生に流体が関与している可能性が高いことを示唆している.
④ 鳥取県中部地震では,低周波地震が前震や余震の地震群の多くをなしている.また,③ 朝鮮半島南東部の地震と同様,震源は,深部から浅部へ位置を変えている.このような一連の鳥取県中部地震は,活発な熱流体の活動によってもたらされたと考えられる.このことから,同様な震源の位置変化の特徴を持ち,長いスパンでの一定の範囲内で活動をおこなっている朝鮮半島南東部の地震も,同様な要因でもたらされていると考えることができる.
従って,このような個々に熱流体によってもたらされたと考えられる地震群を含む西から東への震央位置の変化を示す①~④と⑤~⑧の一連の地震群は,西から東への熱エネルギーの移送(Tsunoda et al., 2013)によってもたらされた可能性を示している.
文 献
気象庁, 2016, 平成28年(2016年)熊本地震.災害時自然現象報告書 2016年第1号,230p., 気象庁.
Tsunoda, F., Choi, D.R. and Kawabe, T., 2013. Thermal energy transmigration and fluctuation. NCGT Journal, v.1, p.65-80.
2016年4月14日22時26分頃,熊本県中央部の深さ11kmを震源とする気象庁マグニチュードMj6.5の地震が発生した.その約1時間半後の15日00時03分頃にMj6.4の地震が,さらにその25時間後の16日01時25分にMj7.3の地震が発生した.これらの一連の地震は平成28年(2016年)熊本地震(気象庁,2016;以下,熊本地震)とよばれ,震央に近い益城町をはじめ,人的被害を含む構造物等の大規模な被害被害が発生した.この地震の発生の半年前から直前まで,沖縄トラフ北西部において,北東南西方向の伸びを示す,後の熊本地震と同規模の余震域をもつ一連の地震が起こっている.その後,半年~1年間の間に,朝鮮半島南東部,鳥取県中部と立て続けに被害地震が発生している.筆者は,これらの地震について,震源の詳細な時空間的解析の結果,およびその西南日本における時空間的位置づけを検討した結果,これらの地震の発生には深部流体が大きく寄与していることが明らかになったので報告する.なお,本報告中で使用した震源データは,すべて,気象庁一元化処理データを使用した.
2.西南日本の大規模浅発地震の時空分布
近年,近畿地方以西の日本列島周辺で発生した,被害をもたらすような大規模浅発地震は,少なくとも2015年11月以降,次のように列挙することができる.すなわち,
① 2015年11月15日 沖縄トラフ北西縁の地震 北緯31.33050°,東経128.71733°,深さ9.4km,M5.9.
前日(11月14日)にM5.1の前震,2016年5月7日にM5.5の最大余震.
② 2016年4月16日 平成28年2016年熊本地震 北緯32.75450° 東経130.76300°, 深さ12.45km,M7.3.
2日前の4月14日にM6.5,1日前の4月15日にM6.4の前震,2016年4月16日にM5.9の最大余震.
③ 2016年9月12日 朝鮮半島南東部の地震(慶州地震)北緯35.79817° 東経129.27167°,深さ36.0km,M5.8.
本震の40分前にM5.2の前震.1年後の2017年11月15日にはM5.2,さらにその3ヶ月後にはM4.8の地震.
④ 2016年10月21日 鳥取県中部の地震 北緯35.38050° 東経133.85617°,深さ10.61km,M6.6.
低周波地震からなる前震群,低周波地震を含む余震群.(10月26日には島根県西部において2個の低周波地震)
⑤ 2017年11月15日 朝鮮半島南東部の地震 北緯36.19584° 東経129.39417°,深さ11.0km,M5.6.
⑥ 2018年02月11日 朝鮮半島南東部の地震 北緯36.09883° 東経129.45700°,深さ4.0km,M4.6.
⑦ 2018年4月9日 島根県西部の地震 北緯35.18467° 東経132.58667°,深さ12.13km,M6.1.
⑧ 2018年6月18日 大阪府北部地震 北緯34.84433° 東経135.62167°,深さ12.98km,M6.1.
である.
3.西南日本における大規模浅発地震の連鎖
以上の地震について,その位置に注目してみると,①~④,⑤~⑧は,それぞれ震央が西から東へと移り変わる一連の位置の変化が認められる.
その中で,① 沖縄トラフ北西縁の地震と② 2016年熊本地震との関係をみると,①の地震群の,発生個数・規模の両方が急激に減衰して空白が生じた直後に,その北東側に② 2016年熊本地震が発生しており,両者には密接な関係があるものということができる.
③ 朝鮮半島南東部の地震は,⑤の地震も含め,深部から浅部へと余震域が移動するとともに,横方向にも位置を変えている(Fig.1).このような震源域の面的な広がりを持たない線状の移動軌跡は,地震の発生に流体が関与している可能性が高いことを示唆している.
④ 鳥取県中部地震では,低周波地震が前震や余震の地震群の多くをなしている.また,③ 朝鮮半島南東部の地震と同様,震源は,深部から浅部へ位置を変えている.このような一連の鳥取県中部地震は,活発な熱流体の活動によってもたらされたと考えられる.このことから,同様な震源の位置変化の特徴を持ち,長いスパンでの一定の範囲内で活動をおこなっている朝鮮半島南東部の地震も,同様な要因でもたらされていると考えることができる.
従って,このような個々に熱流体によってもたらされたと考えられる地震群を含む西から東への震央位置の変化を示す①~④と⑤~⑧の一連の地震群は,西から東への熱エネルギーの移送(Tsunoda et al., 2013)によってもたらされた可能性を示している.
文 献
気象庁, 2016, 平成28年(2016年)熊本地震.災害時自然現象報告書 2016年第1号,230p., 気象庁.
Tsunoda, F., Choi, D.R. and Kawabe, T., 2013. Thermal energy transmigration and fluctuation. NCGT Journal, v.1, p.65-80.