[SSS11-P06] 高周波数帯の地震波振幅のばらつきと地殻構造の不均質性 -3次元地震動シミュレーションによる数値実験-
キーワード:高周波数地震動、振幅のばらつき、地殻構造の不均質性、コンラッド面、地震動シミュレーション
はじめに
近地地震の高周波数帯(約1 Hz以上)の直達波には,地殻構造の短波長のランダム不均質性(地震波速度の数%程度の揺らぎ)の影響による振幅のばらつきが見られる(Yoshimoto et al., 2015).この現象の震源付近(震源距離40 km程度以下)における特徴は,均質な背景構造にランダム不均質性を重畳したモデルによって概ね説明できる.しかしながら,解析対象領域が広くなると,単純な背景構造モデルでは,地震波の伝播経路の複雑化を表現できなくなる可能性がある.本研究では,地殻内地震を対象にした地震動シミュレーションに基づいて,解析対象領域が広い場合に,背景構造としての不均質な3次元地殻構造がS波振幅のばらつきに与える影響について調べた.
計算・解析手法
西日本の中国地方で発生する地殻内地震を想定して差分法による地震動シミュレーションを実施した.技術的な詳細はTakemura et al. (2017)と同様であり,計算領域の大きさは256×256×80 km3,格子間隔は0.05 kmとした.計算時間間隔は0.0025 sとした.観測点は間隔5 kmでグリッド状に2601点配置した.背景の3次元地震波速度構造には全国1次地下構造モデル(JIVSM; Koketsu et al., 2012)を使用し,地殻内にTakemura et al. (2017)によるランダム不均質性(指数関数型,揺らぎの大きさ3%,相関距離1 km)を重畳した.対象とした地震は2011年11月25日に島根・広島県境の深さ14 kmで発生した横ずれ型の地震で,震央の位置を固定し,震源の深さを変化させて地震動シミュレーションを実行した.ダブルカップル型の点震源,継続時間0.1秒のcos関数型震源時間関数(Maeda et al. 2017)を使用した.得られた速度波形に0.5-1, 1-2, 2-4 Hzのバンドパスフィルターを適用して最大地動速度振幅(PGV;以下,単に振幅)を求め,その空間変化を詳しく調べた.
結果・議論
横ずれ型の発震機構の震源輻射の影響で,震源付近では大きな振幅が十字型の方位分布で観測された.この十字型の見掛け輻射特性は,震源距離の増大とともに,地殻構造のランダム不均質性の影響で不明瞭になった.このような特徴は,散乱モデルや観測記録からも確認されている(Yoshimoto et al., 2015; Takemura et al., 2016).震源の深さを変化させて地震動シミュレーションを行うと,特定の深さでは見掛け輻射特性が非対称的に崩れることが確認された.震源距離に対して振幅をプロットすると,非対称的な崩れの発現によって,振幅のばらつきが有意に大きくなることが分かった.このような解析結果は,地殻構造のランダム不均質性の影響では説明できない.そこで,地表地形,コンラッド面,モホ面などの設定条件を変えて地震動シミュレーションを実行した.その結果,震源がコンラッド面の上方に近接する場合に,コンラッド面のS波反射の影響によって見掛け輻射特性の非対称的な崩れが発現することが確認された.以上の結果は,震源距離40 km程度以上では,地殻構造の不均質性の一要因として,コンラッド面(地震波速度変化10%程度)がランダム不均質性と同様に,地殻内地震の強震動に大きなばらつきを引き起こす可能性を示している.
近地地震の高周波数帯(約1 Hz以上)の直達波には,地殻構造の短波長のランダム不均質性(地震波速度の数%程度の揺らぎ)の影響による振幅のばらつきが見られる(Yoshimoto et al., 2015).この現象の震源付近(震源距離40 km程度以下)における特徴は,均質な背景構造にランダム不均質性を重畳したモデルによって概ね説明できる.しかしながら,解析対象領域が広くなると,単純な背景構造モデルでは,地震波の伝播経路の複雑化を表現できなくなる可能性がある.本研究では,地殻内地震を対象にした地震動シミュレーションに基づいて,解析対象領域が広い場合に,背景構造としての不均質な3次元地殻構造がS波振幅のばらつきに与える影響について調べた.
計算・解析手法
西日本の中国地方で発生する地殻内地震を想定して差分法による地震動シミュレーションを実施した.技術的な詳細はTakemura et al. (2017)と同様であり,計算領域の大きさは256×256×80 km3,格子間隔は0.05 kmとした.計算時間間隔は0.0025 sとした.観測点は間隔5 kmでグリッド状に2601点配置した.背景の3次元地震波速度構造には全国1次地下構造モデル(JIVSM; Koketsu et al., 2012)を使用し,地殻内にTakemura et al. (2017)によるランダム不均質性(指数関数型,揺らぎの大きさ3%,相関距離1 km)を重畳した.対象とした地震は2011年11月25日に島根・広島県境の深さ14 kmで発生した横ずれ型の地震で,震央の位置を固定し,震源の深さを変化させて地震動シミュレーションを実行した.ダブルカップル型の点震源,継続時間0.1秒のcos関数型震源時間関数(Maeda et al. 2017)を使用した.得られた速度波形に0.5-1, 1-2, 2-4 Hzのバンドパスフィルターを適用して最大地動速度振幅(PGV;以下,単に振幅)を求め,その空間変化を詳しく調べた.
結果・議論
横ずれ型の発震機構の震源輻射の影響で,震源付近では大きな振幅が十字型の方位分布で観測された.この十字型の見掛け輻射特性は,震源距離の増大とともに,地殻構造のランダム不均質性の影響で不明瞭になった.このような特徴は,散乱モデルや観測記録からも確認されている(Yoshimoto et al., 2015; Takemura et al., 2016).震源の深さを変化させて地震動シミュレーションを行うと,特定の深さでは見掛け輻射特性が非対称的に崩れることが確認された.震源距離に対して振幅をプロットすると,非対称的な崩れの発現によって,振幅のばらつきが有意に大きくなることが分かった.このような解析結果は,地殻構造のランダム不均質性の影響では説明できない.そこで,地表地形,コンラッド面,モホ面などの設定条件を変えて地震動シミュレーションを実行した.その結果,震源がコンラッド面の上方に近接する場合に,コンラッド面のS波反射の影響によって見掛け輻射特性の非対称的な崩れが発現することが確認された.以上の結果は,震源距離40 km程度以上では,地殻構造の不均質性の一要因として,コンラッド面(地震波速度変化10%程度)がランダム不均質性と同様に,地殻内地震の強震動に大きなばらつきを引き起こす可能性を示している.