[SSS13-P23] 地震被害推定のための地盤モデルの構築
キーワード:地下速度構造、ボーリング、微動アレイ、強震動
1.はじめに
我々は,リアルタイム被害推定用の地盤モデルの構築のため,広帯域の地震動特性を評価できるような,特に浅部と深部地盤の両方に影響のある周期付近(0.5~2.0秒)を説明する上で重要となる,ボーリングデータおよび物性値データ(主に微動観測データ)を収集した上で,浅部・深部を接合した地盤モデルの検討を行ってきている.本研究においては,広域地下構造モデル(約250mメッシュ)の構築,さらに詳細化した詳細地盤モデル(約50mメッシュ)や,モデル化をサポートするための微動観測システムおよび地下構造情報管理システムを構築している.
(1) 地震被害推定のための広域地盤モデルの構築
(2) 地盤の動的特性の把握と微動観測システムの開発
(3) 官民協働による詳細地盤モデルの構築手法の開発
以下,項目毎に簡単に内容を紹介する.
2. 地震被害推定のための広域地盤モデルの構築
広域地盤モデルの作成については,関東および東海地域全域について作成した.浅部地盤モデルは,主に防災科研でこれまでに収集した約44万本のボーリングデータを用いた.モデルの作成については,既往の自治体で作成された地盤モデル等を再整理し,統一的な地質・土質の層序整理作業による浅部地盤モデルの作成・修正を行い,初期浅部地盤モデルを構築した.この浅部地盤モデルと既往の深部地盤モデル(J-SHISモデル)を,PS検層や地質構造によって工学的基盤(Vs=300~700(m/s))を調整して接続し,初期の浅部・深部統合地盤モデルとした.また,地震動評価に必要不可欠なS波速度構造を3次元で検討するために,地震観測記録および常時微動観測データの収集をあらためて実施している.地震観測記録については,K-NET,KiK-net,気象庁,自治体(主に県の震度計データ(SK-NET))の記録を使用した.常時微動観測については,「極小・不規則アレイ」と比較的大きなサイズの「大アレイ」の2種類を実施しており,K-NET,KiK-net,自治体の震度観測地点等(極小・不規則アレイ:約20,000地点,大アレイ:約800地点)でそれぞれ実施した.極小・不規則アレイの解析については,3章の「クラウド型微動観測システム」等を用いて,H/Vスペクトル比および位相速度を求め,分散曲線の深度変換(SPM)および逆解析(Arai and Tokimatsu(2004)等)を行ってS波速度構造を求めた.この結果,初期モデルのS波速度構造をチューニングした結果より、約250mメッシュ単位の地盤構造モデルから計算される各種増幅指標(最大速度増幅率,震度増分,周期毎の応答増幅倍率等)のマップを作成した.既往の地盤モデルと比較すると,広帯域全体の周期特性が改善されており,特に防災の観点で重要な周期1秒付近において結果が大幅に改善されていることが確認出来た.
3. 地盤の動的特性の把握と微動観測システムの開発
微動アレイ観測を大量に実施し,その解析結果までを円滑に管理するためには,観測データの取得から解析,結果の評価に至るまでの行程が少なくかつ簡単であることが必要である.この目的を達成するため,現場でのデータ整理から解析等(位置情報・写真情報・観測データ・時刻歴情報・解析結果等のデータ登録)の一連の工程が簡単に行え,ヒューマンエラーが少なくなる仕組みを開発した.具体的には,地震計からPCやタブレット等の端末にデータを欠損なく, 品質管理された状態で送受信でき,後述するデータベースへ転送する「i微動」を構築した.また,高速に微動データを解析・品質管理する「クラウド解析システム」を構築した. また,クラウド解析では,入力されたデータについて詳細解析およびデータの品質管理を行う.本クラウドシステムを使えば,使わない場合に比べて,観測から解析結果に至までの工程が,10倍程度高速化している.
4. 官民協働による詳細地盤モデルの構築手法の開発
詳細地盤モデルは,自治体の地形・地盤情報(官・民ボーリングデータ・建築確認申請・地形情報・旧版地形図等)を活用した,不整形地盤・人工造成地等を考慮し,液状化や斜面災害の予測が可能なモデルの構築を目指している.現在,足立区や横浜市において,詳細モデルの構築を行っており,動的特性の検討を行っている.特に横浜市においては,大規模人工造成地が幅広く分布しているため,別途抽出方法を検討している.横浜市の人工造成地の検討では,国土地理院5mDEMデータを基に作成した斜度指標を用いて,微細な谷埋め盛土の分布を把握した. 最終的には,水系解析の結果抽出された水系に統計的なバッファを与えてモデル化した.大規模造成地の分布と調和的であり,さらに細かい造成地も抜き出せているように見える.
謝辞
本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました.
我々は,リアルタイム被害推定用の地盤モデルの構築のため,広帯域の地震動特性を評価できるような,特に浅部と深部地盤の両方に影響のある周期付近(0.5~2.0秒)を説明する上で重要となる,ボーリングデータおよび物性値データ(主に微動観測データ)を収集した上で,浅部・深部を接合した地盤モデルの検討を行ってきている.本研究においては,広域地下構造モデル(約250mメッシュ)の構築,さらに詳細化した詳細地盤モデル(約50mメッシュ)や,モデル化をサポートするための微動観測システムおよび地下構造情報管理システムを構築している.
(1) 地震被害推定のための広域地盤モデルの構築
(2) 地盤の動的特性の把握と微動観測システムの開発
(3) 官民協働による詳細地盤モデルの構築手法の開発
以下,項目毎に簡単に内容を紹介する.
2. 地震被害推定のための広域地盤モデルの構築
広域地盤モデルの作成については,関東および東海地域全域について作成した.浅部地盤モデルは,主に防災科研でこれまでに収集した約44万本のボーリングデータを用いた.モデルの作成については,既往の自治体で作成された地盤モデル等を再整理し,統一的な地質・土質の層序整理作業による浅部地盤モデルの作成・修正を行い,初期浅部地盤モデルを構築した.この浅部地盤モデルと既往の深部地盤モデル(J-SHISモデル)を,PS検層や地質構造によって工学的基盤(Vs=300~700(m/s))を調整して接続し,初期の浅部・深部統合地盤モデルとした.また,地震動評価に必要不可欠なS波速度構造を3次元で検討するために,地震観測記録および常時微動観測データの収集をあらためて実施している.地震観測記録については,K-NET,KiK-net,気象庁,自治体(主に県の震度計データ(SK-NET))の記録を使用した.常時微動観測については,「極小・不規則アレイ」と比較的大きなサイズの「大アレイ」の2種類を実施しており,K-NET,KiK-net,自治体の震度観測地点等(極小・不規則アレイ:約20,000地点,大アレイ:約800地点)でそれぞれ実施した.極小・不規則アレイの解析については,3章の「クラウド型微動観測システム」等を用いて,H/Vスペクトル比および位相速度を求め,分散曲線の深度変換(SPM)および逆解析(Arai and Tokimatsu(2004)等)を行ってS波速度構造を求めた.この結果,初期モデルのS波速度構造をチューニングした結果より、約250mメッシュ単位の地盤構造モデルから計算される各種増幅指標(最大速度増幅率,震度増分,周期毎の応答増幅倍率等)のマップを作成した.既往の地盤モデルと比較すると,広帯域全体の周期特性が改善されており,特に防災の観点で重要な周期1秒付近において結果が大幅に改善されていることが確認出来た.
3. 地盤の動的特性の把握と微動観測システムの開発
微動アレイ観測を大量に実施し,その解析結果までを円滑に管理するためには,観測データの取得から解析,結果の評価に至るまでの行程が少なくかつ簡単であることが必要である.この目的を達成するため,現場でのデータ整理から解析等(位置情報・写真情報・観測データ・時刻歴情報・解析結果等のデータ登録)の一連の工程が簡単に行え,ヒューマンエラーが少なくなる仕組みを開発した.具体的には,地震計からPCやタブレット等の端末にデータを欠損なく, 品質管理された状態で送受信でき,後述するデータベースへ転送する「i微動」を構築した.また,高速に微動データを解析・品質管理する「クラウド解析システム」を構築した. また,クラウド解析では,入力されたデータについて詳細解析およびデータの品質管理を行う.本クラウドシステムを使えば,使わない場合に比べて,観測から解析結果に至までの工程が,10倍程度高速化している.
4. 官民協働による詳細地盤モデルの構築手法の開発
詳細地盤モデルは,自治体の地形・地盤情報(官・民ボーリングデータ・建築確認申請・地形情報・旧版地形図等)を活用した,不整形地盤・人工造成地等を考慮し,液状化や斜面災害の予測が可能なモデルの構築を目指している.現在,足立区や横浜市において,詳細モデルの構築を行っており,動的特性の検討を行っている.特に横浜市においては,大規模人工造成地が幅広く分布しているため,別途抽出方法を検討している.横浜市の人工造成地の検討では,国土地理院5mDEMデータを基に作成した斜度指標を用いて,微細な谷埋め盛土の分布を把握した. 最終的には,水系解析の結果抽出された水系に統計的なバッファを与えてモデル化した.大規模造成地の分布と調和的であり,さらに細かい造成地も抜き出せているように見える.
謝辞
本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました.