[SSS13-P24] 近年の液状化被害を踏まえた液状化被害率の検討
キーワード:液状化、強震動、建物被害
1.はじめに
2011年東北地方太平洋沖地震では,東北地方から関東地方にかけての極めて広い地域で液状化が発生し1),2016年熊本地震においても熊本市内や阿蘇市内において多数の液状化被害が確認された2).筆者らは,これまでに,近年の液状化が発生した地震での液状化発生率を検討し,地震動の継続時間の影響で東北地方太平洋沖地震と他の地震での液状化発生率の違いを説明できることを示した3).しかしながら,250mメッシュの微地形区分を基本とした既往の液状化しやすさに基づくグループ分けや,地域性考慮のための地域区分方法では,全国的な液状化ハザードマップの作成は難しく,まだ検討の余地が残っている。本研究では,地形および標高データ等を用いたより詳細な地域区分や微地形区分のグループ分け,および,液状化の面積率等の設定を行い,液状化発生率予測式の高精度化に関する検討を行った.また、建物被害の情報を収集し、液状化被害率の検討を行った.
2. 収集・整備したデータ
本検討のために収集した液状化地点データは,主に筆者らが現地調査および航空写真画像による2011年東北地方太平洋沖地震と2016年熊本地震の液状化地点の読み取り方法を参考に,地震発生直後の国土地理院等の高解像度画像から噴砂地点の再読み取りを行った.そのデータに基づき,これまで作成整備してきた約250mメッシュ単位のデータセットだけでなく,約50m,および約25mメッシュ単位の詳細なデータセットも作成した.さらに以下のデータも合わせて整備した.
① 10mDEMデータに基づく各メッシュサイズ(250m,50m,25m)の平均標高・平均勾配・比高データ.
② 土地利用区分データに基づく各メッシュサイズの地形区分データに基づいて,各データと液状化地点の関係性より,液状化発生率および面積率の検討を行った.
③ 東北地方太平洋沖地震および熊本地震における建物の傾斜・沈下量等の被害情報を収集し、発生率との関係を検討した。
3. 液状化発生率および面積率の検討
液状化発生率については,2011年東北地方太平洋沖地震と2016年熊本地震の液状化発生率のデータを合算し,微地形区分毎に計測震度と最大速度のフラジリティを,最小二乗法および最尤法にて計算した上で,微地形区分をグループ化するために,クラスター解析を行った.その結果,既往研究による液状化の発生しやすさに基づき分類された微地形グループ4),5)とは異なる,新たな4つのグループにまとめることが出来た.
また,各グループについては,各メッシュの平均標高,平均勾配,比高のデータ等との比較により,グループ細分化の可否について検討した.検討の結果,どの微地形区分においても液状化発生率は比高との相関性が極めて高く,前述の4つのグループをさらに細分化できる可能性が高いことが分かった.液状化面積率については,25mメッシュを最小単位として,メッシュ内に1か所でも噴砂があれば,そのメッシュ全体が液状化していると見なすこととした。面積率については,すべての微地形区分において計測震度や最大速度との間に明確な相関性が見られなかったため,微地形区分毎に面積率の平均値を算出した.本研究では,簡便のため,上記に示した液状化発生率と液状化面積率を掛けることで最終的な液状化発生率としてまとめた.また、液状化による建物被害の傾斜と沈下量について、震度や最大速度と液状化発生率との関係を検討した.
4. まとめ(今後の予定)
本研究で検討した液状化発生率計算式(フラジリティー)は,今後,建物被害分布データとの比較等を行い,結果の妥当性を検証する予定である.
<謝辞>
解析の一部については、株式会社構造計画研究所の橋本光史氏、落合努氏にご協力いただいた。建物被害の情報については、潮来市、神栖市、千葉市、我孫子市、稲敷市、香取市、熊本市より提供いただいた。関係各位に謝意を表します。
<参考文献>
1.若松加寿江,先名重樹,小澤京子:2011年東北地方太平洋沖地震による液状化発生の特性、日本地震工学会論文集第17巻、第1号、 pp.43-62(2017.2)
2.若松加寿江,先名重樹,小澤京子:平成28年(2016年)熊本地震による液状化発生の特性、日本地震工学会論文集 第17巻、第4号、 pp.81-100 (2017.8)
3.先名重樹,松岡昌志,若松加寿,翠川三郎:液状化発生率におよぼす強震動の継続時間と地域性の影響、日本地震工学会論文集 第18巻、第2号、pp.82-pp.94(2018.5)
4.松岡昌志,若松加寿江,橋本光史:地形・地盤分類 250m メッシュマップに基づく液状化危険度の推定手法,日本地震工学会論文集,第11巻,第2号,pp.20-pp.39(2011.5).
5.損害保険料率算出機構:微地形区分データを用いた広域の液状化発生予測手法に関する研究,地震保険研究,No15,(2008.6).
2011年東北地方太平洋沖地震では,東北地方から関東地方にかけての極めて広い地域で液状化が発生し1),2016年熊本地震においても熊本市内や阿蘇市内において多数の液状化被害が確認された2).筆者らは,これまでに,近年の液状化が発生した地震での液状化発生率を検討し,地震動の継続時間の影響で東北地方太平洋沖地震と他の地震での液状化発生率の違いを説明できることを示した3).しかしながら,250mメッシュの微地形区分を基本とした既往の液状化しやすさに基づくグループ分けや,地域性考慮のための地域区分方法では,全国的な液状化ハザードマップの作成は難しく,まだ検討の余地が残っている。本研究では,地形および標高データ等を用いたより詳細な地域区分や微地形区分のグループ分け,および,液状化の面積率等の設定を行い,液状化発生率予測式の高精度化に関する検討を行った.また、建物被害の情報を収集し、液状化被害率の検討を行った.
2. 収集・整備したデータ
本検討のために収集した液状化地点データは,主に筆者らが現地調査および航空写真画像による2011年東北地方太平洋沖地震と2016年熊本地震の液状化地点の読み取り方法を参考に,地震発生直後の国土地理院等の高解像度画像から噴砂地点の再読み取りを行った.そのデータに基づき,これまで作成整備してきた約250mメッシュ単位のデータセットだけでなく,約50m,および約25mメッシュ単位の詳細なデータセットも作成した.さらに以下のデータも合わせて整備した.
① 10mDEMデータに基づく各メッシュサイズ(250m,50m,25m)の平均標高・平均勾配・比高データ.
② 土地利用区分データに基づく各メッシュサイズの地形区分データに基づいて,各データと液状化地点の関係性より,液状化発生率および面積率の検討を行った.
③ 東北地方太平洋沖地震および熊本地震における建物の傾斜・沈下量等の被害情報を収集し、発生率との関係を検討した。
3. 液状化発生率および面積率の検討
液状化発生率については,2011年東北地方太平洋沖地震と2016年熊本地震の液状化発生率のデータを合算し,微地形区分毎に計測震度と最大速度のフラジリティを,最小二乗法および最尤法にて計算した上で,微地形区分をグループ化するために,クラスター解析を行った.その結果,既往研究による液状化の発生しやすさに基づき分類された微地形グループ4),5)とは異なる,新たな4つのグループにまとめることが出来た.
また,各グループについては,各メッシュの平均標高,平均勾配,比高のデータ等との比較により,グループ細分化の可否について検討した.検討の結果,どの微地形区分においても液状化発生率は比高との相関性が極めて高く,前述の4つのグループをさらに細分化できる可能性が高いことが分かった.液状化面積率については,25mメッシュを最小単位として,メッシュ内に1か所でも噴砂があれば,そのメッシュ全体が液状化していると見なすこととした。面積率については,すべての微地形区分において計測震度や最大速度との間に明確な相関性が見られなかったため,微地形区分毎に面積率の平均値を算出した.本研究では,簡便のため,上記に示した液状化発生率と液状化面積率を掛けることで最終的な液状化発生率としてまとめた.また、液状化による建物被害の傾斜と沈下量について、震度や最大速度と液状化発生率との関係を検討した.
4. まとめ(今後の予定)
本研究で検討した液状化発生率計算式(フラジリティー)は,今後,建物被害分布データとの比較等を行い,結果の妥当性を検証する予定である.
<謝辞>
解析の一部については、株式会社構造計画研究所の橋本光史氏、落合努氏にご協力いただいた。建物被害の情報については、潮来市、神栖市、千葉市、我孫子市、稲敷市、香取市、熊本市より提供いただいた。関係各位に謝意を表します。
<参考文献>
1.若松加寿江,先名重樹,小澤京子:2011年東北地方太平洋沖地震による液状化発生の特性、日本地震工学会論文集第17巻、第1号、 pp.43-62(2017.2)
2.若松加寿江,先名重樹,小澤京子:平成28年(2016年)熊本地震による液状化発生の特性、日本地震工学会論文集 第17巻、第4号、 pp.81-100 (2017.8)
3.先名重樹,松岡昌志,若松加寿,翠川三郎:液状化発生率におよぼす強震動の継続時間と地域性の影響、日本地震工学会論文集 第18巻、第2号、pp.82-pp.94(2018.5)
4.松岡昌志,若松加寿江,橋本光史:地形・地盤分類 250m メッシュマップに基づく液状化危険度の推定手法,日本地震工学会論文集,第11巻,第2号,pp.20-pp.39(2011.5).
5.損害保険料率算出機構:微地形区分データを用いた広域の液状化発生予測手法に関する研究,地震保険研究,No15,(2008.6).