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[SSS15-12] 関東地震発生履歴解明のための房総半島離水低地の堆積構造調査
キーワード:相模トラフ、プレート間地震、海岸段丘
相模トラフで発生する沈み込み地震の発生履歴を解明するために、千葉県房総半島南端部に位置する平砂浦海岸の離水低地で掘削調査を行った。関東地方南部に位置する相模トラフでは、1703年元禄関東地震(M8.2)に代表される沈み込み地震が繰り返し発生してきたことが知られている。房総半島に分布する離水海岸段丘(沼段丘)を対象としたこれまでの調査で、元禄関東地震と同規模の地震は2,000年を超える間隔で発生してきたと考えられてきた。しかし近年行われた段丘の形成年代調査によると、その発生間隔は最短で500年から800年程度である可能性が指摘され、より詳細な推定が必要となっていた。本研究が対象とした平砂浦海岸は、従来地表面に段丘のような地形がみられないことからあまり調査が行われてこなかった。しかし、周辺の段丘分布の調査から平砂浦海岸の平均隆起速度は同沿岸地域で最大規模であることが指摘され、地下の堆積構造には離水記録が残されている可能性があった。これを受けて、今回我々はジオスライサーを用いた詳細な堆積構造の調査を初めて行った。海岸線と垂直な測線上の8地点で深さ約2mの掘削調査を行い、その堆積構造を調べた。本調査の結果、調査地域の地表面下0.5–1.0m以深に、貝殻を含む海成の堆積砂層が認められた。また、周辺の段丘分布から予想される旧汀線アングルの標高を境として、堆積構造に変化がみられた。このことから、平砂浦海岸の堆積構造には、従来調査されていなかった地殻隆起の痕跡が記録されていることが考えられる。平砂浦での堆積構造調査は、相模トラフの沈み込み地震のメカニズム、および将来の発生予測を考えるうえでの重要な情報をもたらすことが期待される。