11:30 〜 11:45
[SSS15-13] ボーリングコア解析と物理的断層モデルに基づく富士川河口断層帯入山瀬断層の位置と活動性推定
キーワード:富士川河口断層帯、駿河トラフ、東海地震、活断層、ボーリング調査
富士川河口断層帯は駿河トラフの北縁に位置し、南海トラフ巨大地震と連動して周辺地域に大きな被害をもたらす可能性が指摘されている。入山瀬断層は富士川河口断層帯の中で最も活動性の高い断層の一つと考えられている。しかし、富士川扇状地では明瞭な変動地形が見られないため、入山瀬断層の活動性を評価するには困難が多く、今でもその実態は明らかとはいえない。宍倉ほか (2018) による富士川河口付近で掘削された3つのボーリングコアの分析を行った。KNBコアは富士川河口の西側で産総研 (2016) の推定した入山瀬断層の上盤側、SKBコアは富士川河口の西側で入山瀬断層の下盤側、FGBコアは富士川河口の東側で入山瀬断層の下盤側に位置する。分析の結果より、入山瀬断層の平均変位速度は約1~3m/千年と従来よりも低く推定され、さらに隆起側であるKNBコアで陸成堆積物が地下に埋没していることから、長期的には入山瀬断層の両側とも沈降している可能性が指摘された。また、縄文海進最盛期の層準の深度に基づくと、この長期的沈降傾向は概ね約3m/千年程度と見積もられる。
本発表では、KNB・SKB・FGBコアの分析をさらに進め、新たに判明した放射性炭素年代及び珪藻分析結果を示す。また、これらの結果に基づいた物理モデルの構築を行った。
本研究で得られたSKBコアの珪藻分析結果では、深度約56m以浅では珪藻化石は認められず、深度55m付近から淡水性の珪藻化石が確認された。従って深度約56m以浅の層準は陸成と考えられるため、この結果は宍倉ほか (2018) で指摘された富士川河口地域の長期的沈降傾向を支持する。また、断層を挟んだ2つのコア (SKBとKNB) の珪藻分析結果を対比すると、入山瀬断層の平均変位速度は、約2m/千年程度と推定される。これらの結果に基づいて本研究では、富士火山モデル及び断層モデルを構築し富士川河口地域の沈降傾向の説明を試みた。富士火山モデルでは、富士火山形成に伴うアイソスタシー効果による富士川河口地域の沈降量を計算した。過去1.7万年間での富士火山体積の増加41.37km3 (宮地, 2007) による富士川河口地域の沈降量は約0.7mであり、ボーリングコアから見積もられる沈降量は説明できない。断層モデルでは、 Okada(1992) に基づき半無限弾性体中に有限の大きさを持つ矩形断層により入山瀬断層の平均変位速度を見積もった。また断層モデルでは、KNBコア地点での沈降傾向とKNB・SKBコアの層序のずれの両方を説明するために、KNBコアとSKBコアの間を通る断層(Fault A)とKNBコアの西側を通る断層 (Fault B) の二枚を仮定した。その結果、Fault Aの上盤側において、Fault Aによる隆起を打ち消して沈降させるためにFault Bの平均変位速度はFault Aより十分に大きい必要があることがわかった。
なお、本研究は文部科学省 (JAMSTEC委託) による南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトの一環として実施した。
本発表では、KNB・SKB・FGBコアの分析をさらに進め、新たに判明した放射性炭素年代及び珪藻分析結果を示す。また、これらの結果に基づいた物理モデルの構築を行った。
本研究で得られたSKBコアの珪藻分析結果では、深度約56m以浅では珪藻化石は認められず、深度55m付近から淡水性の珪藻化石が確認された。従って深度約56m以浅の層準は陸成と考えられるため、この結果は宍倉ほか (2018) で指摘された富士川河口地域の長期的沈降傾向を支持する。また、断層を挟んだ2つのコア (SKBとKNB) の珪藻分析結果を対比すると、入山瀬断層の平均変位速度は、約2m/千年程度と推定される。これらの結果に基づいて本研究では、富士火山モデル及び断層モデルを構築し富士川河口地域の沈降傾向の説明を試みた。富士火山モデルでは、富士火山形成に伴うアイソスタシー効果による富士川河口地域の沈降量を計算した。過去1.7万年間での富士火山体積の増加41.37km3 (宮地, 2007) による富士川河口地域の沈降量は約0.7mであり、ボーリングコアから見積もられる沈降量は説明できない。断層モデルでは、 Okada(1992) に基づき半無限弾性体中に有限の大きさを持つ矩形断層により入山瀬断層の平均変位速度を見積もった。また断層モデルでは、KNBコア地点での沈降傾向とKNB・SKBコアの層序のずれの両方を説明するために、KNBコアとSKBコアの間を通る断層(Fault A)とKNBコアの西側を通る断層 (Fault B) の二枚を仮定した。その結果、Fault Aの上盤側において、Fault Aによる隆起を打ち消して沈降させるためにFault Bの平均変位速度はFault Aより十分に大きい必要があることがわかった。
なお、本研究は文部科学省 (JAMSTEC委託) による南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトの一環として実施した。