[SSS15-P05] 茨城県東南部,霞ケ浦湖底堆積物における過去約700年間の津波記録―予報―
キーワード:津波、地震、湖沼、堆積物、粒度
茨城県東南部に位置する霞ケ浦は,利根川筋を通じて太平洋と連絡している.今回試料を採取した霞ケ浦中央部は,利根川河口から最大約50kmの距離がある.また,2011年3月の東北地方太平洋沖地震の際に観察された津波高は,利根川河口で+2.5m,河口から約18kmの河口堰で最大Y.P.+2.4m(T.P.+1.6m)が観測された(独立行政法人水資源機構 利根川下流総合管理所・利根川河口堰管理所ホームページより).このような情報を背景に霞ケ浦湖底堆積物の検討を行った.2018年8月21日,霞ケ浦の湖心域水深約6mにおいて押し込み式柱状採泥器を用いて77cm長の試料を採取した.採取試料についてCTスキャナを用いてCT画像を撮影し,厚さ1cm毎に粒度分析用試料を採取した.試料断面肉眼観察の結果,深度42cmに浅間Aテフラ,深度50cmに富士宝永テフラが,深度70~73cmにヤマトシジミ殻数個が確認できた.CT画像観察と粒度分析の結果,通常の堆積物は体積重み付き平均粒径で10マイクロメーター以下であるのに対して,10マイクロメーターを上回り,CT画像で上下の層準より相対的にX線の透過が劣るという特徴のある10層準以上のイベント層が確認できた.それらの層準は,砂粒子を実体顕微鏡で観察した結果,石英・長石・輝石などの鉱物粒子や軽石・スコリア粒子などのほか,微量の植物片や貝殻片が確認できるばあいがある.堆積物の乾燥重量とテフラの降下年代を基に重量堆積速度を求め,それぞれのイベント堆積物の堆積年代を推定したところ,歴史的な大きな津波の年代と近似することが明らかになった.先に述べたように,霞ケ浦は太平洋から50㎞以上離れており,利根川筋を通じで遡上した津波高は早急に減衰することが考えられるが,今回の調査の結果,いくつかの大きな津波は,利根川流域の底質を巻き込みながら,霞ケ浦にまで到達した可能性が高いことが示された.その主なものは,1933年昭和三陸津波,1909年千葉房総沖地震津波,1896年明治三陸地震津波,1877年および1837年チリ地震津波,1703年元禄地震津波,1677年延宝房総沖地震津波,1605年慶長地震津波または1611年慶長三陸津波,1586年天正13年津波,1498年明応地震津波または1454年享禄地震津波,1361年正平16年地震津波などの可能性がある.