[SSS16-P09] GNSSデータに基づくΔCFSが最大となる断層面の推定
キーワード:ΔCFS、GNSS、活断層
日本には多数の内陸活断層が存在しているが,その危険性を評価するための指標の一つに静的クーロン破壊応力変化量 (ΔCFS) というものがある.ΔCFSは地震や火山活動を起源とする応力変化から,計算対象となる断層がすべりやすくなったか,すべりにくくなったかを評価するものであり,従来半無限弾性体を仮定したディスロケーションモデルなどにより断層を仮定して計算されていた.しかし上田・高橋 (2005) やNishimura (2018) ではGNSS観測点の変位データから直接ΔCFSを求める手法の有効性が示された.そこで本研究では上記の手法に基づいて,GNSS観測点の水平変位データから得られる各地域の地表応力場の元で任意の断層を想定し,ΔCFSが最大となるレシーバ断層のパラメータを計算するツールを作成した.この手法を用いると,実際に活断層などが存在しない地域でも,地震が発生するとどのようなメカニズムになるのかを推察することができる.本研究では,テストケースとして,まず山形盆地断層帯周辺のGNSSデータから2011年東北沖地震前後の期間について試算を行った.その結果,地震前の応力場から求めたΔCFSが最大を示す断層面が実際の活断層のジオメトリに近くなることがわかった.またこの試算により,観測点の上下変位を用いないことに起因すると考えられる,ΔCFSの傾斜角依存性が生じることがわかった.範囲を広げて東北地方のGEONET観測点の2004年9月〜2007年9月の水平変位を用いて,傾斜角は固定するという制約のもと,各地域において同様の計算を行った.結果を地震本部発表の活断層長期評価と比較したところ,ΔCFSが大きい値を示す地域が長期評価の発生確率の高いSランク断層付近に加えて,データが少なく評価困難なXランク断層付近,活断層の存在が確認されていない場所などで見つかった.その中には奥羽脊梁山地ひずみ集中帯の中にある2008年に発生した岩手・宮城内陸地震の震源断層のパラメータを事前によく表現できていたものもあり,本手法の断層危険性評価に対する有効性とそれを可視化する方法を示すことができた.