[SSS17-P01] 東北地方 米沢-喜多方地域における地震波反射面の空間分布
キーワード:地震波反射波、地殻流体
火山地域や内陸地震震源断層周辺において、自然地震波形の後続波に含まれるS波反射波に関する研究は日本各地で行われてきた。例えば、Mizoue et al. (1982)は日光・足尾地域においてS波反射点の空間分布を求め、SxP波とSxSの振幅比から推定される反射体の内部構造から反射体は部分溶融体からなる可能性が高いと示した。東北地方ではUmino et al. (2002)や堀・他(2004)などにより、上昇したメルトが冷却する過程で放出された水が、S波反射面を形成すると考えられてきた[Hasegawa et al., 2005]。このとき放出された水は内陸地震発生のメカニズムにも関与している可能性が指摘されており、東北地方の地殻内における流体の一層の挙動の解明が望まれる。
本研究の対象地域としている米沢-喜多方地域では、2011年東北地方太平洋沖地震から7日後に群発地震が発生し、その原因のひとつは流体圧の上昇による強度低下だと指摘されている[e.g., Okada et al., 2015]。震源域には中新世に形成された大峠カルデラ[山本・他., 1994]が存在しており、メルトから排出された流体が存在する可能性は十分考えられる。先行研究である長谷見・他(2016)によって米沢-喜多方地域のS波反射波はすでに発見されており、本研究ではS波反射面の空間分布を求めることを目的とする。この地域では2011年東北地方太平洋沖地震合同余震観測グループによって稠密に臨時観測点が展開されており、本研究ではこれらの臨時観測点およびHi-netによる定常観測点での地震波形データを使用する。また、正確にS波反射面の空間分布を求めるため、臨時観測点データを使用してDouble Difference法で再決定した震源を使用する。
まずS波反射波の走時を目視で読み取る。顕著にS波反射波が確認できた10個の観測点・震源クラスターの組み合わせで、Inamori et al. (1992)のように、地震波形の走時を深さに変換し、南北・東西方向に設定した測線に沿うように地震波形を並べた(以下これを記録断面図と呼ぶ)。記録断面図中、周囲の振幅よりもおよそ1.5倍以上、同じ深さで3つ以上揃った場合は反射波だと考え、その初動を読み取った。この時、測線の交点付近で同じ深さに反射波を検出した場合、同じ反射面から反射したものと解釈した。一つの記録断面図中に複数の反射波が確認できる場合はそれぞれ読み取りを行った。その結果、北東部のクラスターで16個、中央部で14個、南西部で3個の反射面を読み取った。
次に、読み取った走時を使用して鏡像観測点をグリッドサーチで求めた[例えば、 Horiuchi et al., 1988]。具体的には、反射面を一枚の面、波線を直線、速度構造を3.4km/sの一様構造と仮定し、読み取った走時と鏡像観測点への理論走時の残差二乗平方根が、最も小さくなる反射面を求めていく。求めた反射面の方程式から走向、傾斜、および個々の震源に対する反射点位置を求めた。
その結果、反射面は震源域の下で深さ10-20kmに位置し、走向は円や弧を描くように、傾斜は震源域に近いものほど水平に近く遠いものほど垂直に立っているように見えた。これをシームレス地質図[産総研]と比較すると、大峠カルデラ直下にある反射面はカルデラの縁に沿うような走向を、西側にある反射面は会津盆地西縁断層帯や地質構造に沿うような走向に見える。これを地震波速度構造と比較すると、低速度域の上部付近に位置するように見え、Umino et al. (2002)や堀・他(2004)で求めた結果と整合的である。仮にS波反射面を流体により構成されていると考えると、米沢-喜多方地域における群発地震を誘発した流体は、震源域下にあるメルトから排出され既存の地質構造から上昇してきた可能性が考えられる。
本研究の対象地域としている米沢-喜多方地域では、2011年東北地方太平洋沖地震から7日後に群発地震が発生し、その原因のひとつは流体圧の上昇による強度低下だと指摘されている[e.g., Okada et al., 2015]。震源域には中新世に形成された大峠カルデラ[山本・他., 1994]が存在しており、メルトから排出された流体が存在する可能性は十分考えられる。先行研究である長谷見・他(2016)によって米沢-喜多方地域のS波反射波はすでに発見されており、本研究ではS波反射面の空間分布を求めることを目的とする。この地域では2011年東北地方太平洋沖地震合同余震観測グループによって稠密に臨時観測点が展開されており、本研究ではこれらの臨時観測点およびHi-netによる定常観測点での地震波形データを使用する。また、正確にS波反射面の空間分布を求めるため、臨時観測点データを使用してDouble Difference法で再決定した震源を使用する。
まずS波反射波の走時を目視で読み取る。顕著にS波反射波が確認できた10個の観測点・震源クラスターの組み合わせで、Inamori et al. (1992)のように、地震波形の走時を深さに変換し、南北・東西方向に設定した測線に沿うように地震波形を並べた(以下これを記録断面図と呼ぶ)。記録断面図中、周囲の振幅よりもおよそ1.5倍以上、同じ深さで3つ以上揃った場合は反射波だと考え、その初動を読み取った。この時、測線の交点付近で同じ深さに反射波を検出した場合、同じ反射面から反射したものと解釈した。一つの記録断面図中に複数の反射波が確認できる場合はそれぞれ読み取りを行った。その結果、北東部のクラスターで16個、中央部で14個、南西部で3個の反射面を読み取った。
次に、読み取った走時を使用して鏡像観測点をグリッドサーチで求めた[例えば、 Horiuchi et al., 1988]。具体的には、反射面を一枚の面、波線を直線、速度構造を3.4km/sの一様構造と仮定し、読み取った走時と鏡像観測点への理論走時の残差二乗平方根が、最も小さくなる反射面を求めていく。求めた反射面の方程式から走向、傾斜、および個々の震源に対する反射点位置を求めた。
その結果、反射面は震源域の下で深さ10-20kmに位置し、走向は円や弧を描くように、傾斜は震源域に近いものほど水平に近く遠いものほど垂直に立っているように見えた。これをシームレス地質図[産総研]と比較すると、大峠カルデラ直下にある反射面はカルデラの縁に沿うような走向を、西側にある反射面は会津盆地西縁断層帯や地質構造に沿うような走向に見える。これを地震波速度構造と比較すると、低速度域の上部付近に位置するように見え、Umino et al. (2002)や堀・他(2004)で求めた結果と整合的である。仮にS波反射面を流体により構成されていると考えると、米沢-喜多方地域における群発地震を誘発した流体は、震源域下にあるメルトから排出され既存の地質構造から上昇してきた可能性が考えられる。