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[STT43-03] 高温光ファイバーとDASテクノロジーを使った250℃を超える環境下の坑井内での地震観測
キーワード:DAS、hDVS、光ファイバー、高温、地震波モニタリング、地震
DASテクノロジーは、パイプラインのモニタリングや侵入者を感知する目的で、2011年頃から石油・ガス産業に導入されている。近年では “heterodyne Distributed Vibration Sensing”(以下、hDVS)と呼ばれる位相差データを用いる最新の光ファイバーセンシング技術の適用により、Vertical Seismic Profile(以下、VSP)を含むサイスミックデータ取得ができるようになった1)。3DVSPの手法で立体的なイメージングもできる2)。そのhDVS装置を使った自然地震や、津波を目標に据える波の観測ができることを近年のJpGUや地震学会で紹介してきた3)。
2018年後半、日本国内の地熱坑井においてhDVS装置を用いた自然地震観測の実証試験を行った。最大深度約1,600 mの傾斜井に300℃対応の高温光ファイバー検層ケーブルを降ろし、その光ファイバー(シングルモードファイバー)に第三世代のhDVS取得装置をつなげ、5日間にわたる自然地震の収録を行ったものである。約900mの深度で記録した最高温度は250℃を超えた。このような高温環境下では、地震計を含むほぼ全ての電子・電気・磁気センサーは長期間の動作が不可能である。DAS装置を使っても筆者の知る限りでは前例が無く、少なくとも日本初の試みである。
高温光ファイバー検層ケーブルには長さ2m、重量25kgの錘を取り付け、裸坑内で錘がスタックするのを回避するために、ケーシング管内の977mの深さまで降ろし観測を開始した。60秒を1ファイルとする連続観測で、地表から975m区間のデータを5日間にわたって記録した。本稿では、その連続測定データを用い、自然地震波の観測がどの程度行えるか検証した結果を報告する。
観測期間中、6回の自然地震の観測に成功した。その内2回は気象庁の地震情報に掲載された中規模な地震だった。その一例は以下のように記録された。
(2018年11月21日 04時09分49.9秒 緯度30°24.0'N 経度130° 9.0'E 深さ123km M5.2)
hDVSで記録した地震データを図1に示す。
波形から解析したP波の到達時刻は坑井最深部において11月21日4:10:12.2 JST、地表付近において4:10:12.5 JSTである。測定パラメータは、ゲージ長4 m、空間サンプリング1 m、および、サンプリング周期を1 msecとした。ゲージ長を変化させる再処理も行い、よりS/Nの高いデータが得られることを確認した。最適なゲージ長での再処理は、様々なDAS装置の中でhDVSのみが持つユニークな特徴である。
防災科学技術研究所(以下、防災科研)が公開しているHi-netによる連続波形画像との比較も行った。坑井から約4km離れた所にある観測点が最も近く、その連続波形記録を参照したところ、hDVSの測定データとほぼ一致することを確認した。微小な地震に対しては、hDVSの測定データの方がS/Nが高い場合もあった。それらのデータについては、発表の際に紹介する。
本観測結果より、hDVS/DASを用いた測定手法は、非常に高い高温環境下にある地熱井やマントルに達するような非常に深い井戸であっても、光ファイバーの状態が良好であれば、坑井内のモニタリングを行いながら自然地震波の観測システムとしても利用できる可能性が示された。
謝辞:リファレンスとなる地震情報は、気象庁、および防災科研のデータを用いました。これらの機関に対し感謝の意を表します。
引用文献:
1) Kimura, T., Lees, G., and Hartog, A., Optical Fiber Vertical Seismic Profile using DAS Technology, JpGU 2016 (RAEG 2016, STT17-12) Extended Abstract.
2) Kimura, T. et al, Hybrid 3D VSP Using Fiber-Optic Technology and a Conventional Borehole Seismic Array Tool, EAGE Copenhagen 2018 (Th H 10) Extended Abstract.
3) Kimura, T., Kobayashi, Y., Naruse, R., and Xue, Z., Earthquake events monitoring in a well using Optical Fiber and DAS Technology, JpGU 2018 (STT50-04), Kimura, T., Summary of Earthquake Events Recorded in Japan using DAS Technology, and Future Vision, SSJ 2018 (S02-P12).
2018年後半、日本国内の地熱坑井においてhDVS装置を用いた自然地震観測の実証試験を行った。最大深度約1,600 mの傾斜井に300℃対応の高温光ファイバー検層ケーブルを降ろし、その光ファイバー(シングルモードファイバー)に第三世代のhDVS取得装置をつなげ、5日間にわたる自然地震の収録を行ったものである。約900mの深度で記録した最高温度は250℃を超えた。このような高温環境下では、地震計を含むほぼ全ての電子・電気・磁気センサーは長期間の動作が不可能である。DAS装置を使っても筆者の知る限りでは前例が無く、少なくとも日本初の試みである。
高温光ファイバー検層ケーブルには長さ2m、重量25kgの錘を取り付け、裸坑内で錘がスタックするのを回避するために、ケーシング管内の977mの深さまで降ろし観測を開始した。60秒を1ファイルとする連続観測で、地表から975m区間のデータを5日間にわたって記録した。本稿では、その連続測定データを用い、自然地震波の観測がどの程度行えるか検証した結果を報告する。
観測期間中、6回の自然地震の観測に成功した。その内2回は気象庁の地震情報に掲載された中規模な地震だった。その一例は以下のように記録された。
(2018年11月21日 04時09分49.9秒 緯度30°24.0'N 経度130° 9.0'E 深さ123km M5.2)
hDVSで記録した地震データを図1に示す。
波形から解析したP波の到達時刻は坑井最深部において11月21日4:10:12.2 JST、地表付近において4:10:12.5 JSTである。測定パラメータは、ゲージ長4 m、空間サンプリング1 m、および、サンプリング周期を1 msecとした。ゲージ長を変化させる再処理も行い、よりS/Nの高いデータが得られることを確認した。最適なゲージ長での再処理は、様々なDAS装置の中でhDVSのみが持つユニークな特徴である。
防災科学技術研究所(以下、防災科研)が公開しているHi-netによる連続波形画像との比較も行った。坑井から約4km離れた所にある観測点が最も近く、その連続波形記録を参照したところ、hDVSの測定データとほぼ一致することを確認した。微小な地震に対しては、hDVSの測定データの方がS/Nが高い場合もあった。それらのデータについては、発表の際に紹介する。
本観測結果より、hDVS/DASを用いた測定手法は、非常に高い高温環境下にある地熱井やマントルに達するような非常に深い井戸であっても、光ファイバーの状態が良好であれば、坑井内のモニタリングを行いながら自然地震波の観測システムとしても利用できる可能性が示された。
謝辞:リファレンスとなる地震情報は、気象庁、および防災科研のデータを用いました。これらの機関に対し感謝の意を表します。
引用文献:
1) Kimura, T., Lees, G., and Hartog, A., Optical Fiber Vertical Seismic Profile using DAS Technology, JpGU 2016 (RAEG 2016, STT17-12) Extended Abstract.
2) Kimura, T. et al, Hybrid 3D VSP Using Fiber-Optic Technology and a Conventional Borehole Seismic Array Tool, EAGE Copenhagen 2018 (Th H 10) Extended Abstract.
3) Kimura, T., Kobayashi, Y., Naruse, R., and Xue, Z., Earthquake events monitoring in a well using Optical Fiber and DAS Technology, JpGU 2018 (STT50-04), Kimura, T., Summary of Earthquake Events Recorded in Japan using DAS Technology, and Future Vision, SSJ 2018 (S02-P12).