16:30 〜 16:45
[SVC38-28] クラック固有振動のQ値と形状・流体特性の関係:経験則の導出と火山性LPイベント解析への応用
火山活動の活発化に伴い観測される地震のうち、long-period (LP)イベントは熱水割れ目などの振動体中における流体の固有振動により発生すると考えられている。よってLPイベントの解析による振動体サイズや流体特性の推定は、火山の下にある流体の状態を把握するうえで重要である。このサイズおよび流体特性は振動体としてクラックモデル(Chouet, J. Geophys. Res., 1986) を考え、その固有振動の周波数やQ値を観測されたLPイベントのものと比較することで推定されてきた。このうちクラック固有周波数はMaeda and Kumagai (Geophys. J. Int., 2017) により提案された解析式が存在し、これを用いることでクラックサイズや流体特性のパラメータをすべて推定することが可能になった(Taguchi et al., J. Geophys. Res., 2018) 。しかしQ値にはそのような式は存在せずクラックモデルの数値計算を使った比較を行う必要があるため、特にQ値が大きいLPイベントについてはすべてのクラックモデルのパラメータ推定に時間がかかるという問題点があった。
そこで本研究では数値計算により、クラックモデルのパラメータと固有振動のQ値の関係を系統的に調べた。クラック固有振動のQ値は固体中P波速度(α)とクラック内の流体音速(a)の比(α/a)に比例して大きくなることが知られている(Kumagai and Chouet, J. Geophys. Res., 2000) 。本研究でも同様の結果が得られたことに加え、Q値に対するα/aの比例定数はクラックの短軸方向と長軸方向の長さの比(W/L)の対数に比例して大きくなるという経験則を得た。この経験則が実際の解析に適用できるかを確かめるため、ガレラス山(コロンビア)で1993年1月にマグマ活動に伴い発生したLPイベントを解析した。この期間のLPイベントは火山灰を含む水蒸気(ダスト状ガス)を含むクラック固有振動により発生したと考えられており、Taguchi et al. (2018) は推定したクラック体積(V)とクラック内の水蒸気質量の割合(n)はどちらも減少する傾向があると示している。これと同様のVとnの減少傾向が本研究でも得られ、上記で述べたQ値の経験則はLPイベントの解析に適用可能であることがわかった。さらにこの経験則を用いて、同火山で1993年5月と2006年12月にマグマ活動に伴い発生したLPイベントを解析した。これら2つの期間のLPイベントのQ値は1993年1月のものよりも大きく、従来の数値計算を用いた解析手法ではクラックモデルのパラメータをすべて推定することは困難であった。2つの期間についてもマグマ活動に伴うLPイベントであることからクラック内流体としてダスト状ガスを仮定し、本研究で得られたQ値の経験式を適用した。その結果どちらの期間でもVとnは1993年1月と同様の減少傾向を示すことがわかった。これは同じ火山で活動が活発化してから収まるまで、LPイベント震源のクラックサイズや流体特性は同様の過程を経て変化したことを示唆している。
以上のように、本研究で得られたクラック固有振動のQ値の経験則は観測されたLPイベント震源のクラックサイズと流体特性の推定に適用可能であり、それに基づく火山ごとでの流体の状態把握やその特徴の解明に貢献できると考えられる。
そこで本研究では数値計算により、クラックモデルのパラメータと固有振動のQ値の関係を系統的に調べた。クラック固有振動のQ値は固体中P波速度(α)とクラック内の流体音速(a)の比(α/a)に比例して大きくなることが知られている(Kumagai and Chouet, J. Geophys. Res., 2000) 。本研究でも同様の結果が得られたことに加え、Q値に対するα/aの比例定数はクラックの短軸方向と長軸方向の長さの比(W/L)の対数に比例して大きくなるという経験則を得た。この経験則が実際の解析に適用できるかを確かめるため、ガレラス山(コロンビア)で1993年1月にマグマ活動に伴い発生したLPイベントを解析した。この期間のLPイベントは火山灰を含む水蒸気(ダスト状ガス)を含むクラック固有振動により発生したと考えられており、Taguchi et al. (2018) は推定したクラック体積(V)とクラック内の水蒸気質量の割合(n)はどちらも減少する傾向があると示している。これと同様のVとnの減少傾向が本研究でも得られ、上記で述べたQ値の経験則はLPイベントの解析に適用可能であることがわかった。さらにこの経験則を用いて、同火山で1993年5月と2006年12月にマグマ活動に伴い発生したLPイベントを解析した。これら2つの期間のLPイベントのQ値は1993年1月のものよりも大きく、従来の数値計算を用いた解析手法ではクラックモデルのパラメータをすべて推定することは困難であった。2つの期間についてもマグマ活動に伴うLPイベントであることからクラック内流体としてダスト状ガスを仮定し、本研究で得られたQ値の経験式を適用した。その結果どちらの期間でもVとnは1993年1月と同様の減少傾向を示すことがわかった。これは同じ火山で活動が活発化してから収まるまで、LPイベント震源のクラックサイズや流体特性は同様の過程を経て変化したことを示唆している。
以上のように、本研究で得られたクラック固有振動のQ値の経験則は観測されたLPイベント震源のクラックサイズと流体特性の推定に適用可能であり、それに基づく火山ごとでの流体の状態把握やその特徴の解明に貢献できると考えられる。