日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC38] 活動的火山

2019年5月27日(月) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC38-P33] 噴火微動の継続時間と噴出量の関係

*森 亜津紗1熊谷 博之1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻)

我々はこれまでに複数の火山の噴火微動と爆発地震について、S波の等方輻射が成立する5 - 10 Hz帯の地震波形データを用いて、震源振幅(As [m2/s])と累積震源振幅(Is [m2])の関係を調べた(Mori and Kumagai, JpGU, 2017, 2018)。Asはエンベロープ波形に対し、最大振幅を含む10秒窓での平均振幅を求め、幾何減衰と非弾性減衰の効果を補正し全観測点で平均した値で、震源での最大振幅の大きさに相当する。一方Isは、エンベロープ波形全体に上記の減衰効果を補正し微動の継続時間で積分した値で、振幅の累積値に相当する。我々はAsIsがべき乗関係にあり、その関係性が噴火微動と爆発地震では異なることを示した。さらに、2011年の霧島のサブプリニー式噴火について、傾斜計データから推定された噴出率と我々が推定したAsの値を比較したところ、Asは噴出率と比例関係にあった。今回我々はさらに、エンベロープ波形の時間変動についても調べた。その結果、噴火微動の継続時間(T [s])と噴火規模の間に規則性があることが分かったので報告する。

本研究ではまず、IsAsの値からエンベロープ幅(p [s])を算出し、pIsの関係を評価した。pIs/Asとして定義され、地震波形の継続時間を表す指標として用いることができる(Kumagai et al., JGR, 2018)。その結果、噴火微動ではpIsの0.4乗に比例することが分かった。また各噴火のエンベロープ波形を比較したところ、振幅が徐々に大きくなった後、振幅がピーク振幅に近い大きさでおおよそ一定になる状態が比較的長時間続き、その後徐々に振幅が小さくなるという特徴がみられた。さらにややばらつきはあるものの、pが最大Asの値とともに増加していく傾向がみられた。また、エンベロープ波形を下底の長さがT、高さがAsとなる台形として近似すると、例外はあるが上底と下底の比がおおよそ一定になっていた。よって、pTに比例すると考えられる。さらにAs噴出率は比例関係にあるので、Isと噴出量(V [m3])もまた比例関係にある。したがって、上記のpIsの関係はTVの0.4乗に比例するということを示している。プリニー式噴火については、世界の様々な火山で発生した幅広い規模の噴火の規模や様式、継続時間などの情報が先行研究によってまとめられている(Mastin et al., JVGR, 2009)。そこで先行研究にまとめられているTVの値と我々の結果を比較したところ、我々が推定したTVの関係は先行研究の値と整合的であった。よってプリニー式噴火では、幅広い規模の噴火において、噴出量が噴火微動の継続時間とともに増加していく傾向にあることが分かった。これらの結果は、噴火微動の継続時間と噴出量の間に規則的な関係が成り立っていることを示している。