[SVC38-P34] 2018年3月の新燃岳噴火に伴う地殻変動
キーワード:新燃岳、GNSSデータ、2016年熊本地震に伴う粘弾性変形、フィリピン海プレートの沈み込みによる弾性変形、マグマだまりの推定
本研究では,火山噴火のメカニズムを明らかにすることを目的に,霧島山中央部に位置する新燃岳を対象とし,2018年3月上旬に起こった一連の火山活動に伴う地殻変動について,2013年1月1日から2018年3月25日の九州地方(主に九州地方で,山口県,愛媛県の一部を含む)に分布するGEONET観測点(150点)で得られたF3解を用いて解析を行い,地下の圧力源(マグマソース)の推定を行った.
ここでは,F3解に対して,GNSS受信機・アンテナ・レドーム交換などによる日毎の観測点座標値のオフセットの除去を行った後,初日(2013年1月1日)を基準とした,東西・南北・上下方向への座標変換を経て,観測点毎の変位の時系列を作成した.続いて,それらの時系列にWdowinski et al.(1997)の方法を適用し,季節変動や日毎の座標値のばらつきが原因で生じた共通誤差成分を取り除いた.また,対象とする火山活動の期間中の地殻変動に影響を及ぼす因子として考えられる,2016年熊本地震による粘弾性緩和について,国土地理院の3枚の矩形断層モデルによる地震時のすべりを与え,Fukahata and Matsu’ura (2005; 2006) のコードを利用して,九州全域に及ぶ地震後5年間の地殻変動を計算し,得られた観測点変位の補正を行った.この解析では,厚さ25 kmの弾性体がMaxwell 粘弾性体の上に横たわる二層の水平成層構造を仮定した.また,粘弾性体の粘性率は2.0×1018 Pasと仮定し,その他の物性パラメータは,Fukahata and Matsu’ura(2005; 2006)で使用された値を用いて計算を行った.その他の因子として,フィリピン海プレートの沈み込みに伴う弾性変形の推定を行い,元のデータを補正した.ここでは,Hirose et al.(2008)のフィリピン海プレートの上面形状に基づき,九州地方下に沈み込むプレートの境界面を170枚の矩形断層で近似し,矩形断層のすべりによるグリーン関数は,Okada(1985)の定式に基づいて計算し,プレート間の固着に伴う弾性変形を推定した.同解析では,観測値として,2013年1月1日から2016年3月31日までのGNSS変位速度データ(水平・上下成分)を用い,観測値と計算値の残差二乗和が最小になるという条件,隣り合う矩形断層で固着率の推定値がなめらかになるような拘束条件をかけた.最後に,新燃岳周辺のGEONET 7観測点で得られた変位データに対し,膨張期(2017年7月1日~2018年2月28日)と収縮期(2018年2月14日~2018年3月25日)に生じた火山変動をよく説明するための圧力源の経度・緯度・深さの推定を行った.ここでは,経度について130.6~131.1°まで,緯度について31.7~32.1°までの範囲をそれぞれ0.001°刻みで,深さについて4~15 kmの範囲を0.1 km刻みで設定し,グリッドサーチを行い,観測値と茂木モデルを用いた地殻変動の計算値との残差が最小となるものを最適解とした.なお,圧力源の体積変化については,膨張期に1.6×107 m3の体積増加,収縮期に0.7×106 m3の体積減少という,気象庁の推定値を採用した.
この結果,膨張期には,最大で14 mmの南東方向への変位が950486観測点で得られ,他の観測点でも新燃岳火口から等方的に伸張するセンスの変位が示され,矩形のダイク貫入より球状の圧力源を仮定したほうが地殻変動をよく再現できると考えられる.一方,収縮期には,最大で8 mmの変位が膨張期と同様に950486観測点で得られた.これら二つの時期で,変位パターンは,概ね互いに逆センスであった.また,膨張源・収縮源の位置は新燃岳火口直下ではなく,火口から6~7 km北西方向に離れた場所に位置することが明らかとなった.これらの結果は,気象庁の結果と概ね調和的であるが,気象庁の結果と比べて膨張期における圧力源の深さが4 kmほど深部に推定された.これについては,今後,詳細な検証が必要となるが,使用した観測点の数や圧力源との位置関係,地形の効果などに依存している可能性があると思われる.今後,地形の効果を考慮した解析や圧力源の推定位置に関する誤差の見積もりなどを含めた議論を行う.
ここでは,F3解に対して,GNSS受信機・アンテナ・レドーム交換などによる日毎の観測点座標値のオフセットの除去を行った後,初日(2013年1月1日)を基準とした,東西・南北・上下方向への座標変換を経て,観測点毎の変位の時系列を作成した.続いて,それらの時系列にWdowinski et al.(1997)の方法を適用し,季節変動や日毎の座標値のばらつきが原因で生じた共通誤差成分を取り除いた.また,対象とする火山活動の期間中の地殻変動に影響を及ぼす因子として考えられる,2016年熊本地震による粘弾性緩和について,国土地理院の3枚の矩形断層モデルによる地震時のすべりを与え,Fukahata and Matsu’ura (2005; 2006) のコードを利用して,九州全域に及ぶ地震後5年間の地殻変動を計算し,得られた観測点変位の補正を行った.この解析では,厚さ25 kmの弾性体がMaxwell 粘弾性体の上に横たわる二層の水平成層構造を仮定した.また,粘弾性体の粘性率は2.0×1018 Pasと仮定し,その他の物性パラメータは,Fukahata and Matsu’ura(2005; 2006)で使用された値を用いて計算を行った.その他の因子として,フィリピン海プレートの沈み込みに伴う弾性変形の推定を行い,元のデータを補正した.ここでは,Hirose et al.(2008)のフィリピン海プレートの上面形状に基づき,九州地方下に沈み込むプレートの境界面を170枚の矩形断層で近似し,矩形断層のすべりによるグリーン関数は,Okada(1985)の定式に基づいて計算し,プレート間の固着に伴う弾性変形を推定した.同解析では,観測値として,2013年1月1日から2016年3月31日までのGNSS変位速度データ(水平・上下成分)を用い,観測値と計算値の残差二乗和が最小になるという条件,隣り合う矩形断層で固着率の推定値がなめらかになるような拘束条件をかけた.最後に,新燃岳周辺のGEONET 7観測点で得られた変位データに対し,膨張期(2017年7月1日~2018年2月28日)と収縮期(2018年2月14日~2018年3月25日)に生じた火山変動をよく説明するための圧力源の経度・緯度・深さの推定を行った.ここでは,経度について130.6~131.1°まで,緯度について31.7~32.1°までの範囲をそれぞれ0.001°刻みで,深さについて4~15 kmの範囲を0.1 km刻みで設定し,グリッドサーチを行い,観測値と茂木モデルを用いた地殻変動の計算値との残差が最小となるものを最適解とした.なお,圧力源の体積変化については,膨張期に1.6×107 m3の体積増加,収縮期に0.7×106 m3の体積減少という,気象庁の推定値を採用した.
この結果,膨張期には,最大で14 mmの南東方向への変位が950486観測点で得られ,他の観測点でも新燃岳火口から等方的に伸張するセンスの変位が示され,矩形のダイク貫入より球状の圧力源を仮定したほうが地殻変動をよく再現できると考えられる.一方,収縮期には,最大で8 mmの変位が膨張期と同様に950486観測点で得られた.これら二つの時期で,変位パターンは,概ね互いに逆センスであった.また,膨張源・収縮源の位置は新燃岳火口直下ではなく,火口から6~7 km北西方向に離れた場所に位置することが明らかとなった.これらの結果は,気象庁の結果と概ね調和的であるが,気象庁の結果と比べて膨張期における圧力源の深さが4 kmほど深部に推定された.これについては,今後,詳細な検証が必要となるが,使用した観測点の数や圧力源との位置関係,地形の効果などに依存している可能性があると思われる.今後,地形の効果を考慮した解析や圧力源の推定位置に関する誤差の見積もりなどを含めた議論を行う.